バルサに対抗 ドルトの獰猛カウンター
ここ数年、世界のサッカーの中心にあったのはバルセロナだった。「ポゼッション」という概念がかくも広大に、またかくも急速に広まったのは、グアルディオラに率いられたチームの展開するサッカーが、素晴らしく革新的で魅力的だったからに他ならない。日本においても、トップクラスのチームのみならず、名もないアマチュアのクラブでさえ目指すサッカーの方向性を聞かれれば「ポゼッション」と返すようになった。ちょっと重圧を受けただけで安全第一のサッカーをやってしまうチームでさえも、理想はあくまでもバルサだった。
だが、半ば信仰の域に達しつつあるポゼッション重視のサッカーに対し、ここにきて新たな対抗軸が台頭しつつある。昨季のCL決勝でバイエルンと死闘を演じたドルトムントである。
全盛期のバルサの場合、調子、あるいは相手との力の差を測るバロメーターはあくまでもポゼッションだった。60%台ならば普通、接戦。70%台なら好調、攻勢。80%台ともなれば絶好調&ワンサイド。
だが、ドイツで“ゲーゲン・プレッシング”(日本語に直せば“迎撃プレス”とでもいったところか)なる新たな造語まで生み出したドルトムントの場合、ポゼッションの高低はあまり意味を持たない。自分たちがボールを保持していれば相手に攻められることはない、と考えるのがバルサ流スタイルの原点だとすれば、敵陣でボールを奪うことこそゴールへの近道、とするのがドルトムントだからである。
1日に行われたマルセイユとのCLでも、彼らの持ち味は存分に発揮された。敵陣ではなく、自陣でボールを奪った彼らがカウンターから先制点をたたき込んだ時、マルセイユのゴール前になだれ込んでいた黄と黒のユニホームは6人、守るマルセイユの選手は3人だった。どちらかがリードを奪って迎えた試合終了直前ならばいざ知らず、0―0の、それも前半半ばの状況で、これほど破壊的かつ獰猛なカウンターを見た記憶がわたしにはない。あえて言うならば“虎の牙”。そう名付けたくなるような、超絶カウンターだった。
結局、試合は3―0でドルトムントが勝利を収めたのだが、試合後に発表されたボールポゼッションでは、ほとんど何もさせてもらえなかったマルセイユの方がポゼッションで優っていた。こんなにもポゼッションと試合内容が一致しない試合を見た記憶もちょっとない。
アーセナル、ナポリと同じグループに入っただけに、ドルトムントが次のラウンドに進むのは簡単なことではない。だがポゼッションにはとらわれず、しかしながらアンチ・フットボールではない彼らには、ぜひグループを突破し、バルサと対決することを期待したい。ペップ率いるバイエルン戦と合わせ、概念と概念が激突する歴史的な一戦となる。
<この原稿は13年10月3日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
だが、半ば信仰の域に達しつつあるポゼッション重視のサッカーに対し、ここにきて新たな対抗軸が台頭しつつある。昨季のCL決勝でバイエルンと死闘を演じたドルトムントである。
全盛期のバルサの場合、調子、あるいは相手との力の差を測るバロメーターはあくまでもポゼッションだった。60%台ならば普通、接戦。70%台なら好調、攻勢。80%台ともなれば絶好調&ワンサイド。
だが、ドイツで“ゲーゲン・プレッシング”(日本語に直せば“迎撃プレス”とでもいったところか)なる新たな造語まで生み出したドルトムントの場合、ポゼッションの高低はあまり意味を持たない。自分たちがボールを保持していれば相手に攻められることはない、と考えるのがバルサ流スタイルの原点だとすれば、敵陣でボールを奪うことこそゴールへの近道、とするのがドルトムントだからである。
1日に行われたマルセイユとのCLでも、彼らの持ち味は存分に発揮された。敵陣ではなく、自陣でボールを奪った彼らがカウンターから先制点をたたき込んだ時、マルセイユのゴール前になだれ込んでいた黄と黒のユニホームは6人、守るマルセイユの選手は3人だった。どちらかがリードを奪って迎えた試合終了直前ならばいざ知らず、0―0の、それも前半半ばの状況で、これほど破壊的かつ獰猛なカウンターを見た記憶がわたしにはない。あえて言うならば“虎の牙”。そう名付けたくなるような、超絶カウンターだった。
結局、試合は3―0でドルトムントが勝利を収めたのだが、試合後に発表されたボールポゼッションでは、ほとんど何もさせてもらえなかったマルセイユの方がポゼッションで優っていた。こんなにもポゼッションと試合内容が一致しない試合を見た記憶もちょっとない。
アーセナル、ナポリと同じグループに入っただけに、ドルトムントが次のラウンドに進むのは簡単なことではない。だがポゼッションにはとらわれず、しかしながらアンチ・フットボールではない彼らには、ぜひグループを突破し、バルサと対決することを期待したい。ペップ率いるバイエルン戦と合わせ、概念と概念が激突する歴史的な一戦となる。
<この原稿は13年10月3日付『スポーツニッポン』に掲載されています>