このままではいけない? 何か手を打つ必要がある? まったくの同感だ。あまり賛成はできないが、大会方式を変えてみるのもいいだろう。このやり方ならば、1ステージ制では到底優勝など望めないチームにも可能性は出てくる。
だが、考えるべきは、もっと本質的な部分ではないのか?
そもそも、創成期のJリーグはなぜ爆発的な人気を博したのか。Vゴール・システムが劇的だったから? 2ステージ制がうまく機能していたから? それも無関係ではなかっただろう。だが、何よりも大きかったのは、当時のJリーグには世界のスーパースターと日本のスターが大挙して存在していたから、ではなかったのか。
Jリーグによれば、2ステージ制は「減収を防ぐ劇薬」なのだという。そうなればいい、とは思う。たとえば、いまや練習場にまで人が溢れるようになったセレッソの人気が、来年も、再来年も継続されていくことを祈りたい、とも思う。新たなスターが欧州に引き抜かれていったとしても。
無意味である、とまでは言わない。けれども、2ステージ制は断じて劇薬などではない。たかが大会方式の変更に、そこまでの効力を期待してはいけない。
思うに、これまでにJリーグが服用した最大の“劇薬”は、チーム名から企業名を外すという決断ではなかったか。そうすることで、Jリーグは日本人に“地域密着”というスポーツの新しい哲学を提示することができた。
この決断がなければJリーグのいまがなかったのは間違いない。だが、なぜこの決断がなされたかと言えば、あくまでもJリーグの発展のためだったはず。そして、この発想は日本人に“地域密着”という発想がなかったころに生まれたものだった。
ここ数週間、東京のスポーツ紙は週に一度以上の頻度で楽天イーグルスを1面に持ってきている。地元の盛り上がりは大変なものらしい。チーム名に企業名を冠しているこのチームは、ゆえに東北へ溶け込むことに失敗しただろうか。
大会方式がどうであろうが、スターのいるところにファンと注目は集まる。Jの人気が微減気味に感じられるのは、世界のスターも日本のヒーローもいないから、に他ならない。そして、この問題を解決する上で、大会方式の変更は何の役にも立たない。
状況を打開する上に劇薬を処方する覚悟があるというのであれば、今後のJリーグがなすべきは、出自の根幹となった哲学にも再考の目を向けることである。J同様に地上波放送のほとんどない楽天イーグルスは、なぜ年俸が億を超える選手を5人も抱えていられるのか。まずはそのことを考えてみるべきではないのか。
選手が、短い選手生命を捧げて悔いなしと思える環境が、いまの日本にはない。そこが、最大の問題なのだ。
<この原稿は13年9月26日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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