二宮: 今回はこの「那由多(なゆた)の刻(とき)」を飲みながら、いろいろと話を伺いたいと思います。
田口: あれ、なんだか瓶のデザインも、お酒の色もブランデーみたいですね。

二宮: おっしゃるとおり、ブランデーのように味わい深いんですよ。まずはSoba&sodaから。
田口: すごくいい香りがしますね。コクがあるのに、後味がすっきりしている。焼酎のソーダ割りは初めて飲みましたが、のどこしがさわやかですね。焼酎の印象がガラリと変わりました。

二宮: 前々回、前千葉ロッテ監督の西村徳文さんにも、このコーナーに出ていただいたんです。西村さんもお酒が大好きな方で、その時に飲んだ「そば雲海 黒麹」を気に入られて、何杯もおかわりしていましたよ。
田口: 僕も一度、西村さんと飲んだことがあるんです。お互いにまだ現役時代の時に、みんなで焼き肉を食べに行ったのですが、西村さんは肉にはほとんど箸をつけずに、お酒ばかりグイグイ飲んでいました。僕が「そんなに飲んだら、お腹いっぱいになって、肉が入らないんじゃないですか?」と聞いたら、「これ(お酒)が晩飯みたいなもんやからな」って(笑)。

二宮: アハハハ。確かに対談した時も、食事にはほとんど手をつけずに、焼酎ばかり飲んでいらっしゃいましたね。
田口: その光景が目に浮かびますよ(笑)。

二宮: メジャーリーグの選手も相当、お酒は飲むんでしょうね。
田口: そうですね。移動の機内で飲む選手は結構いましたね。面白いのが、強いチームほど飲み方に品があるんです。僕が在籍したチームでいえば、セントルイス・カージナルス、フィラデルフィア・フィリーズ、シカゴ・カブスの順番ですかね(笑)。

二宮: カブスは伝統のあるチームなのに、意外ですね。
田口: 勝てない時期が長かったですからね。規律が一番しっかりしていたのは、カージナルスでした。受け継がれてきた伝統が選手にきちんと植えつけられているからだと思います。

 返球に表れる日米の違い

二宮: さて、今年のプロ野球では統一球問題が大きな話題となりました。田口さんは、どう思われていましたか?
田口: いろいろな意見があると思いますが、まず僕は、統一球を導入して、同じ条件にしたということに関しては、加藤良三コミッショナーの大きな功績だったと思うんです。

二宮: 以前は、球団によって違うメーカーのボールでしたからね。田口さんがメジャーに行く前は、オリックスはどこのメーカーのボールを使用していたんですか?
田口: ミズノでした。当時、パ・リーグはほとんどミズノだったと記憶しています。

二宮: よく飛ぶ印象はありましたか?
田口: 確かに今の統一球よりも飛んでいましたね。

二宮: メジャーでの使用球はローリング社ですが、実際、日本のボールよりも、飛ばなかった?
田口: 全く飛びませんでしたね。というよりも、まずボール自体が日本のように精巧なつくりをしていないんです。縫い目も微妙にバラバラですし、硬さや触った感じなんかも、ボールによって違うんです。それでも、メジャーではみんなそんなことを気にしていない。僕もそのうちに「あ、こんなもんなんだ」と思うようになりましたね。

二宮: 日本人ピッチャーの多くがメジャーのボールに苦しんでいます。それだけ1球1球違うと、外野手も返球の時にブレたりしませんでしたか?
田口: そうなんです。結構、難しいんですよ。ちゃんと縫い目に指をかけて投げないと、真っ直ぐにいかない。

二宮: 田口さんはもちろん、イチローにしても青木宣親にしても、よくあのボールでコントロールがつけられるなと。
田口: 日本人の外野手は、コントロールがいいですよね。外国人選手とは比べものにならないくらい送球の精度が高い。

二宮: 外国人はアバウトな選手が多いですよね。肩が強いから、球自体は勢いがあるんですけど、どこに行くかわからないような選手もいる。なぜ、日本人はコントロールのいい選手が多いのでしょうか?
田口: 日本で育ったからですね。イチロー選手も青木選手も、基礎がきちんとありますからね。

二宮: 基礎的な部分は、日本の方が子どもの頃からしっかり教えていると?
田口: はい、そういうことだと思います。特にキャッチボールは大事です。

 目を“切れない”打球

二宮: メジャーでプレーする外野手の特徴を挙げるとすれば?
田口: 向こうに行ってわかったのは、メジャーの外野手は打球から目を切らないんです。いや「切れない」と言ったほうがいいかもしれませんね。

二宮: 日本ではバッターが打った瞬間に打球の強さや方向を読んで、一度目を切って走ってから素早く落下点に入るのがいい外野手とされています。
田口: そうなんです。ところが、メジャーではそれができないんです。なぜかというと、先ほども言ったように、ボールのかたちがきれいに整えられていないので、打球が途中で変な方向に曲がるんですよ。しかも、パワーのあるバッターが豪快にスイングしますから、ボールがバットに当たった瞬間に、グチャッと変型する。

二宮: 確かにあとで写真を見ると、打った瞬間、ボールが三日月みたいに潰れていますよね。
田口: その潰すパワーが加わるため、余計に打球が曲がるんです。

二宮: 田口さんもメジャーでプレーしていた時は、目を切らなかった?
田口: あまり切りたくなかったですね。普通、日本だとセンターを中心に打球は左右に切れていくんですけど、向こうでは右中間、左中間に飛んできたボールが、切れていくと思ったら、急に反対方向に曲がったりしますからね。最後までどっちに曲がるかわからないんです。

二宮: まるで魔球ですね(笑)。
田口: 難しかったですね。目を切ったらとんでもないことになるなと思いながら守っていました。

 ドーム球場の弊害

二宮: 思えば、メジャーで成功を収めた日本人の外野手は、田口さん、イチロー(ニューヨーク・ヤンキース)、短期間ですが日本人で初めてワールドシリーズに出場した新庄剛志とメジャーに行くまでは本拠地がドームではなかった選手なんです。メジャーは屋外球場がほとんどですから、こうしたことも影響しているのでしょうか?
田口: それはあるかもしれませんね。ドームは人工芝ですから、ヒザや腰に大きな負担がかかるんです。僕はメジャーに行く前のオリックス時代、本拠地は天然芝のグリーンスタジアム神戸でしたから負担は少なかった。ところが、ビジターの試合で人工芝の西武球場や藤井寺球場に行くと、もう3日でヒザや腰が痛くなって、体が重く感じるようになるんですよ。

二宮: 田口さんやイチローは、天然芝のグリーンスタジアムでやっていたから、メジャーの球場でも違和感がなかったと?
田口: そう思います。もし、人工芝の球場が本拠地だったら、メジャーに行く前に、体がボロボロになっていたかもしれませんし、芝に対する知識も少なかったと思います。

二宮: 野茂英雄がメジャーで活躍している時、私が「メジャーの外野手は、日本の外野手と違って果敢に飛びこんで巧い」と言ったら、「二宮さん、それは違いますよ。秋山幸二さん(当時西武)の方が断然、巧いですよ。ただ、日本は人工芝だから飛び込めないだけなんです。メジャーは天然芝だから、思い切り飛びこめる。球場が選手を育てているんです」と話してくれたことがありました。
田口: 天然芝は、気持ちよく飛び込めますからね。それに、メジャーの選手も結構、いろいろと考えている。例えばフェンスにぶつかることも考えて、ヒザにニーパッドを入れているんです。それを入れるだけで、衝撃の強さがまったく違ってきますし、スライディングもしやすくなるんです。日米問わず、巧い人は巧いですね。

二宮: 日本ではニーパッドはつけていないんですか?
田口: あまり聞きませんね。日本は人工芝が多いから、よりニーズがあると思うんですけどね。実は、僕もメジャーに行くまで知らなかったんです。トレーナー室に置いてあったのを見て、「ちょっと、オレにもちょうだい」って言ってもらったんです。もし、試してみて動きに違和感があったらやめようと思ったのですが、つけてみたらスムーズに動ける。「これはいい」と思ってつけ始めてからは、実際にフェンスに勢いよくゴーンって当たっても、大丈夫でしたね。

 上原浩治、活躍のワケ

二宮: いよいよメジャーも、ポストシーズンゲームに入りました。今季は、上原浩治(ボストン・レッドソックス)の活躍が印象的でした。
田口: 彼は今年、充実したシーズンを送っていますよね。ポストシーズンでも好投が続いています。

二宮: 2011年のタンパベイ・レイズとのディビジョンシリーズでは、ポストシーズン史上初の3戦連続被本塁打という記録をつくった苦い記憶があります。
田口: あの時はかわいそうなくらいボコボコに打たれましたからね。その後、チームはワールドシリーズに進出しましたが、上原はロースターから外されて、最高の舞台でマウンドを踏むことができなかった。今回は、その時の悔しさをバネにしていますね。

二宮: 昨年はケガに見舞われましたが、今年は1年間、フルに活躍しました。4勝1敗21セーブ、防御率1.09。9月17日のボルティモア・オリオールズ戦で今季初黒星を喫するまで、27試合連続無失点、打者連続アウト記録は球団新記録となる37人を数えました。こうした活躍の要因はどこにあったのでしょう?
田口: ジョン・ファレル監督がレッドソックスに来たことが大きいでしょうね。彼はピッチングコーチとしても非常に評価が高い人でしたから。上原が登板過多になれば我慢して休ませたりと、頼りにはしてるけれど、ケガをさせないように起用したのだと思います。ファレル監督にとっては一番信頼できる投手ですから、ケガだけはしてほしくないと思っていたことでしょう。

 上原には必要だった“黒星”

二宮: もともと上原はコントロールのいいピッチャーですが、今季は特に低めにビシッと決まりますね。特に目を引いたのが、ギュンと斜めに曲がり落ちる変化球。おそらくスプリットだと思いますが、スライダーのようにも見えます。
田口: 上原は基本的には真っ直ぐとスプリットだけで勝負しているので、曲がるとしたらスプリットでしょう。指のかかり具合によって、曲がりが変化しているのかもしれませんね。

二宮 昔の野茂英雄もそうでしたが、よく2種類だけで勝負できるなぁと。あまり余計なボールを投げない方がいいんでしょうか?
田口: そうだと思いますね。上原は一応、スライダーも持っていますが、ほとんど投げませんからね。今ではもう、スライダーは特殊なボールではない。軌道がある程度読まれると、まっすぐより遅いですから、すごく打ちやすいボールになるんです。

二宮: 正直、ここまで活躍すると思っていましたか?
田口: 最初は中継ぎからでしたよね。それからセットアッパーをやって、抑えになった。そうやって段階を踏んだのが良かったんじゃないかなと思います。最初からいきなり抑えを任されていたら、そんなことはないでしょうけど、プレッシャーに押されて潰れていたかもしれません。何せボストンですから、プレッシャーはヤンキースでプレーするのと同じくらいかかるのではないでしょうか。

二宮: 普通、抑えは最後の1イニングのみという起用がほとんどですよね。ところが、彼の場合は8回途中から登板することも珍しくありません。
田口: それだけ監督からの信頼が厚いんでしょうね。

二宮: しかし、あれだけ投げて、ポストシーズンゲームに影響しないでしょうか?
田口: うーん、どうでしょうか。でも、精神的にはいい状態だと思いますよ。というのも、一度、シーズン終盤に黒星がつきましたよね。抑えというポジションは、すぐに気持ちの切り替えが必要です。だから、ある程度、負け慣れていないとダメだと思うんですね。上原があのまま抑え続けて、それこそポストシーズンでいきなり負けてしまうと、ガタガタッと崩れていた可能性もある。そういう意味では、かえってあの負けは良かったのかなと。

二宮: 免疫をつけることができたと?
田口: そういうことです。確かに記録という点では残念でしたが、ポストシーズンのことを考えれば、あの敗戦は上原にはいい風が吹いている証拠だと思いましたね。

(後編につづく)

田口壮(たぐち・そう)
1969年7月2日、兵庫県生まれ。西宮北高を経て関西学院大へ。関西学生リーグでは通算123安打のリーグ記録を樹立し、92年にドラフト1位で内野手 としてオリックスへ入団。3年目から外野手に転向し、95年のリーグ優勝、96年の日本一に貢献。00年のシドニー五輪では日本代表として出場する。01年オフにFA宣言してメジャーリーグに挑戦。カージナルスで徐々に実力を認められ、チームに定着。06年にはポストシーズンでも活躍し、ワールドシリーズ制覇を経験する。08年に移籍したフィリーズでは自身2度目の世界一に輝く。その後、カブスを経て10年に古巣オリックスへ復帰。11年オフに戦力外通告を受け、現役続行を目指していたが、昨年9月に引退を表明した。日米通算1894試合、1601安打、89本塁打、592打点、126盗塁、打率.277。日本ではベストナイン1回、ゴールデングラブ賞5回。

★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

長期に渡り、樫樽の中で貯蔵熟成した長期貯蔵の本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」。豊かな香りとまろやかなコクの深い味わいが特徴。国際的な品評会「モンドセレクション」2013年最高金賞(GRAND GOLD QUALITY AWARD)受賞。

提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
焼肉の清香園 渋谷店
東京都渋谷区宇田川町37−14 篠原ビル1F
TEL:03-3466-1369
営業時間:
昼(月〜金) 12:00〜14:00(L.O.13:30)
夜(月〜土) 18:00〜26:00(L.O.25:30)
夜(祝日)  18:00〜23:00(L.O.22:30)
日定休(月末の日曜、貸切の場合は営業)
>>店舗の詳細はこちら(HOT PEPPERのサイトへ)
>>店舗Facebookはこちら

☆プレゼント☆
 田口壮さんの直筆サインボールを長期貯蔵本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」(720ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「田口壮さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は11月13日(水)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回の田口壮さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・斎藤寿子/写真・鈴木友多)
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