世界に衝撃“バルサ型”U17日本の行方

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 ここに来て急速に変質しつつあるが、近年のバルセロナほど、共通した哲学に貫かれたチームはなかった。ボールポゼッションを、状況によってはリスクと考える人間が多い中、彼らはあくまでも勝利への最短距離であるとした。すべての選手が、信じられないほどの精度で同じ方向を目指した――それが成功した最大の要因だった。
 だが、弊害がなかったわけではない。外様として加わった選手はともかく、バルサしか知らずに育った選手の多くは、外に出ると驚くほどにもろかった。アルゼンチン代表のメッシが、バルサのメッシほどに輝くことができないのは、その最たる例だと言っていい。

 UAEで行われているU−17W杯で、吉武監督に率いられた日本代表が旋風を、いや、衝撃を起こしている。初戦で欧州王者のロシアに快勝し、第2戦では南米2位のベネズエラを粉砕した。とかく日本のメディアは外国人の外交辞令を鵜呑みにしがちだが、今回寄せられている賛辞は本物である。

「こんなにも手も足も出ない試合はかつてなかった」
 ベネズエラの日刊紙「ナシオナル」にはドゥダル監督のそんなコメントが掲載されていた。ちなみに記事のタイトルは「GKベラスケスがベネズエラを最悪の事態から救う」。GKの奮闘がなければ、失点は3どころでは済まなかった、という内容だった。南米予選でブラジル、アルゼンチンと戦ってきた国の監督やメディアが、完全に脱帽の体だったのである。

 ペップのバルサと対戦した強豪たちのように。

 吉武監督にとって、ポゼッションは流行ではない。弱い相手の時はこだわるが、格上が相手のときはかなぐり捨てる、というものでもない。これが一番有効な手段だから、これが最良の武器だからという信念に基づいたポゼッションなのである。

 U−17での勝利は、必ずしも大人になってからの勝利を約束するものではない。ただ、世界で勝つということに対して極端に憶病で控えめな日本人の気質を考えると、ここで自信をつけておくことは間違いなく大きなプラスになる。吉武監督と選手たちには、より一層の躍進を期待したい。

 問題は、その後である。
 いくら若い世代の指導者が素晴らしいチームを育てても、それを受け入れる上のチームがまったく違うサッカーをやっているようでは、まるで意味がない。そして、バルサがそうであるように、吉武監督のチームもまた、全員が同じ方向を向いているがゆえの好チームなのである。

 世界に衝撃を与えつつある17歳を世界に衝撃を与える大人にするためには、同じやり方を上でも踏襲するしかない。できるのか。そもそも、やっていいことなのか。日本サッカー界に、極めて興味深い命題が突きつけられようとしている。

<この原稿は13年10月24日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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