11日から、石川ミリオンスターズでは合同自主トレーニングが始まりました。2014シーズンの開幕に向けて、いよいよスタートです。昨季は2年ぶりのリーグ優勝、そして日本一を達成しましたが、決してすべてが良かったとは言えません。特に失策数がリーグ唯一の3ケタ(100)を数えた守備は、大きな反省材料です。最終的にはピッチャーを中心に守り勝つ野球で優勝することできましたが、今季はより堅実な守備を目指していきます。
 昨季、開幕当初は正直言って、強さという点では手応えはそれほど感じていませんでした。その中で前期優勝できたのは、ひとえに投手陣がしっかりと投げてくれたからにほかなりません。そのおかげで、後期は選手育成にも注力しながら戦うことができ、それがプレーオフへとつながったと感じています。

 特に新潟アルビレックスBCとのリーグチャンピオンシップは、それが顕著に表れていたと思います。レギュラーシーズンの新潟との対戦成績は、通算2勝6敗。後期だけを見れば、4戦全敗ですから、誰もが新潟が有利だと考えていたことでしょう。しかし、結果はミリオンスターズが無傷の3連勝でリーグチャンピオンの座を奪取しました。勝因は、投手を中心とした守りで、強打の新潟打線を抑え、彼らの野球をさせなかったことだと考えています。

 とはいえ、課題は残りました。昨季、シーズンを通して一番感じたのは、基本練習の重要性です。試合は練習での応用です。そのためには、練習で反復練習することが重要なわけですが、ただ数をこなせばいいというわけではありません。基本がなっていないままではいくら反復しても、結局試合でかたちが崩れてしまいます。ですから、練習では数よりも基本を忠実に行なうことが重要なのです。

 昨季も開幕前は、基本練習を重視していましたが、シーズンに入ると、試合での結果を追いかけるあまり、基本がおろそかになってしまったのです。失策が多かったのも、やはり基本ができていなかったからに他なりません。例えば、守備でのスローイング。試合を重ねるたびに、身体は徐々に疲労が蓄積し、足が動かなくなります。しかし、きちんとした基本のかたちが身体にしみついていれば、足が動かない中でも、きちんとスローイングすることができます。それができなかったということは、まだ基本がなっていないという証。今季はシーズンを通して、基本練習をやり続けていこうと思っています。

 目標見つけた谷口への期待

 さて昨季、成長を見せてくれたのは、石突廣彦(遊学館高−城西大−群馬ダイヤモンドペガサス)です。石突はシーズンでは打率1割台でした。当たれば長打が期待できる打者ですが、低めのボール球を振ってしまったりと、三振が多かったのです。しかし、ストライクゾーンに来た球をしっかりと打てるように、腰の据わったスイングへの修正に取り組んだところ、シーズン終盤から結果を残すようになり、北陸地区チャンピオンシップからのプレーオフでは3割近くの打率を残しました。今季はレギュラーシーズンから活躍してくれることを期待しています。

 一方、今季の飛躍が楽しみなのが、谷口貴之(遊学館高−06BULLS)です。彼はもともと高い素質を持った選手です。特に守備ではチームに大きく貢献してくれました。その谷口が昨季以上にやる気を出しています。その理由は昨季、グランドチャンピオンシップで対戦した徳島インディゴソックスの内野手、東弘明選手がオリックスに育成1位で指名を受けたことにあります。

 東選手と谷口は、非常にプレースタイルが似ているのです。東選手にはまだ劣っている部分があるものの、自分のスタイルでもNPBに行くことができることが示されたことで、谷口に目標ができたのです。今季は走攻守において、本来持っているスピードをいかしたプレーでアピールしてほしいと思っています。

 今季は、連覇はもちろん、それ以上にひとりでも多くの選手をNPBに送り出したいと考えています。これは森慎二監督、そして今季からGMを兼任する木田優夫さんも含めたチームの方針です。特に木田さんは「ここにいるのは、BCリーグで活躍するためではなく、NPBに行くため」という意識を常に持っており、その木田さんが身近にいることで、他の選手も高い意識を持つようになっています。

 もちろんチームの勝利をおろそかに考えているわけではありません。ひとりでも多く、NPBに行けるような選手を育てることができれば、ひいてはそれこそが大きなチーム力になるのです。逆にチーム力ばかりを追っていては、選手個々が小さくまとまってしまいます。それでは本末転倒です。今季はどれだけNPBに輩出することができるか。それがミリオンスターズのチーム力につながるはずです。

山出芳敬(やまで・よしたか)>:石川ミリオンスターズコーチ
1983年4月3日、石川県出身。星陵高校、京都学園大学出身。卒業後は茨城ゴールデンゴールズに所属した。リーグ初年度の2007年、石川に入団。2年間、全試合に出場した。1年目の07年には全72試合に出場し、打率3割1分6厘、打点34、盗塁8(ベスト10)をマーク。チームの優勝に大きく貢献した。08年限りで現役引退し、09年よりコーチに就任した。
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