63年ぶりの大決戦となったリーガ・エスパニョーラは、開幕前はノーマークに近かったAマドリードの優勝で幕を閉じた。ハルがつかみかけた伝統のFAカップは土壇場でアーセナルの手許へと渡り、ハンブルクは値千金のアウェーゴールによって、2部に落ちたことがないというチームの歴史を辛くも守った。
 まだCL決勝のマドリード対決が残されてはいるものの、いよいよW杯である。

 いつものようにブックメーカーをのぞいてみる。一番人気はブラジル。当然だろうが、わたしならば真っ先に外す。というのも、コンフェデ杯がW杯の前年にプレ大会として開催されるようになってからというもの、コンフェデ杯の勝者がW杯を手にしたことは一度もない。それどころか、決勝に進出したことさえない。コンフェデとは比較にならないほどの重圧がのしかかる中、誰がリーダーになるのかという懸念も残る。

 2番人気はアルゼンチン。わたしはこれも外す。確かに強いし、メッシの意気込みも相当なものがあるだろう。だが、開催地はブラジル。アルゼンチンに対して強烈なライバル心をむき出しにする国である。他の多くの国にとってブラジルは中立地だが、アルゼンチンにだけは完全アウェーとなる。それでも勝てるか。わたしは、ノーと見る。

 3番人気はドイツ。ここがわたしにとっての本命だ。ここ数大会、彼らを悩ませてきた“スペイン・コンプレックス”は、バイエルンがグアルディオラ監督を迎えたことによって完全に消え去った。ホームではない、ということ以外、わたしには彼らにとってのネガティブな要素が見つけられない。

 前回覇者のスペインは4番人気。中核を担ってきたシャビ、イニエスタに明らかな陰りが出てきている。経験は彼らを支えるだろうが、連覇を達成するにはいろいろなものが足りない。コンフェデで勝ったチームはW杯で勝てないというジンクスは先ほど紹介したが、実は、準優勝チームも好成績を残せていない。そして、スペインは昨年の大会の準優勝国だった。

 そして我らが日本。ブックメーカーのオッズは151倍で、アジア勢の中では一番高い評価を受けたものの、扱いとしてはほぼアウトサイダーである。そこまでは前回大会までと変わらない。ただ、今回の日本は、史上初めて、結果ではなく内容でも世界を驚かせる可能性を秘めたチームになった。多分に願望が入り込んでいることは承知しているが、ドイツ対日本、それがわたしの予想する決勝のカードである。

<この原稿は14年5月22日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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