第112回 西&一岡、好調のワケ

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 3月28日に開幕したプロ野球は、約2カ月が過ぎ、20日からは交流戦がスタートしています。ここまで好調をキープしているのが、パ・リーグではオリックスですね。そしてセ・リーグでは交流戦でやや苦戦していますが、それでも首位をキープしているのが広島です。少し気の早い話ですが、優勝すればオリックスは1996年以来18年ぶり、広島は91年以来23年ぶりと、ともに久々の快挙。それだけに両球団のファンは、秋が待ち遠しくて仕方ないのではないでしょうか。
 確立した自分の“間”

 オリックスも広島も、好調の要因には投手陣の安定感が挙げられます。チーム防御率を見ると、24日現在、オリックスは2.40、広島は3.43と、それぞれリーグでトップです。

 オリックスと言えば、今や日本一のエースと言っても過言ではない金子千尋がいます。しかし今季、その金子を凌ぐ活躍をしているのが西勇輝です。昨季は9勝(8敗)にとどまった西ですが、今季は既に8勝。しかも開幕から無傷の8連勝と、球団新記録をマークしています。

 好投が続いている最大の理由は、粘り強さにあると感じています。これまで西のピッチングは、特にピンチになると「いってまえ!」とばかりに勢いに任せているように見受けられました。しかし今季は1球1球、より丁寧に投げている感じがします。ランナーが出ても、あわてることなく自分の間合いを大事にして投げているのです。テンポが安定しているため、バックの野手にもいいリズムが出てくるのです。

 このテンポの作り方は、チームメイトである金子の影響を受けているのかもしれません。昨季、15勝8敗、防御率2.01という好成績を挙げた金子は、開幕24連勝を達成した田中将大(現ヤンキース)の陰に隠れてしまいましたが、実は沢村賞投手の基準をすべてクリアしていたのです。そんな好投手が目の前にいるわけですから、西としてはこれ以上ない見本となっていることでしょう。いろいろと金子から学んでいるのだと思います。

 それともうひとつ。バッターをうまく打ち取っている要因は、コースではなくボール自体を重要視しているからです。勝負の場面になって、厳しいコースを狙おうとすると、どうしてもコントロールを意識してしまいます。それでは、思い切り投げることができません。10ある力のうち、8や9になってしまう。しかし、西は「このボールで勝負するぞ」と、ボール自体を意識して投げている。だからこそ、10の力で勝負することができているのです。

 しいて注意点を挙げるとすれば、テンポや配球パターンを気にするあまり、固執してほしくないということ。例えば、3球勝負でいける時には、思い切って勝負にいってもいいと思うのです。バリエーションに富んだピッチングをしてもらいたいですね。

 腕を振れているからこその勢い

 一方、今や広島の“勝利の方程式”のひとりである一岡ですが、投げっぷりがいいですよね。見ての通り、今ある力をすべてボールにぶつけています。特に最速150キロ超のストレートには自信をもって投げているなという感じが見受けられます。

 一岡は周知の通り、昨オフにFAで巨人に移籍した大竹寛の人的補償で広島に加入した、プロ3年目の投手です。昨季までの2年間の成績は、一軍でこそ通算13試合の登板にとどまっていますが、ファームでは1年目は7勝1敗14セーブ、防御率0.55。2年目は0勝1敗15セーブ、防御率1.10とリリーバーとして好成績を挙げています。ですから、一岡としては自信を持って一軍のマウンドに上がっているのだと思います。

 一岡の良さは、投手にとって最も大事である「腕を振る」ことができている点です。もちろん、やみくもに振るのではなく、しっかりと身体を使って腕を振ることができている。だからこそ、力強いボールが投げられるのです。

 アドバイスをするとすれば、身体のケアだけはしっかりとやること。今はうまく身体を使っていますので、自分の身体の幅におさまるかたちで右腕を振ることができています。しかし、身体の幅からはみ出し始めると、身体の軸がブレてしまい、フォームのバランスが崩れる。そうすると、身体のどこかに負担がかかり、ケガの原因にもなります。

 ですから、疲労が出てきた時にも、いかにバランスよく投げることができるかが重要です。そのためには、毎日のケアが大事。人間、疲れてくると、休養をとろうとするものですが、私の経験では疲れている時こそ、適度に汗をかくくらいは身体を動かした方がいい。そして、休む時はしっかりと休む。何事にもメリハリが重要なのです。

 1年間、シーズンを通して一軍で投げた経験のない一岡ですが、それを不安に思っても仕方のないこと。若いのですから、それこそ壁にぶつかるまで、余計なことを考える必要はありません。今の勢いのまま思い切りのいいピッチングで、ファンを沸かせてほしいと思います。

佐野 慈紀(さの・しげき) プロフィール
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。
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