W杯の出場国・地域がそれまでの24から32になったのは、くしくも日本が初出場を果たした1998年のフランス大会からである。それに伴い、アジア枠も2から3.5に増えた。これが日本には幸いした。前回の枠数のままなら“ジョホールバルの歓喜”はなかった。
 02年の日韓大会で韓国がベスト4、日本がベスト16に進出したことが評価され、06年のドイツ大会でアジア枠は4.5に拡大された。10年南アフリカ大会からはオセアニア連盟のオーストラリアがアジア連盟に転籍したが、アジア勢の実力からして4.5枠は、労働組合風に言えば“満額回答”のように感じられた。

 しかし、現行の4.5枠がこのまま維持される保証はどこにもない。というのも出場枠の割り振りを巡るFIFA理事会の紛糾は、なかば恒例行事と化しているからだ。

 たとえば06年ドイツ大会の場合はこうだ。前回の4.5から4への減枠という改正に気色ばんだのは南米連盟の理事たちだった。02年日韓大会の優勝国はブラジル。前回優勝国の出場枠がドイツ大会から消滅するとあっては、実質的には1.5枠減だ。断じて認めるわけにはいかない。

 南米連盟は出場チーム数を36に変更することを提案した。しかし、それは認められず、そこでオセアニアに内定していた1枠の半分を主張した。同時期に行なわれていたコンフェデレーションズカップでオセアニア代表のニュージーランドが3戦全敗、グループリーグで敗退したこともオセアニア連盟には逆風となった。この会議に参加していた小倉純二前FIFA理事は「サッカーの実力はその国や大陸の発言力に、相当な影響を与える」と語ったものである。

 今大会、アジアからは日本、オーストラリア、韓国、イランの4カ国が出場しているが、24日現在(日本時間)、戦績は0勝5敗3分け。勝ち点にすると、わずか3。オーストラリア対オランダ戦、イラン対アルゼンチン戦などスコアの上で格上相手に善戦と呼べる試合はあったが、それ止まりだった。理事会でアジア枠の削減が議題に上がった時、アジア連盟は苦しい立場に立たされかねない。

<この原稿は14年6月25日付『スポーツニッポン』に掲載された内容に加筆・修正したものです>
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