25日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会のグループC最終節で、日本代表(FIFAランキング46位)はコロンビア代表(同8位)に1−4で敗れ、グループリーグ敗退が決まった。日本は前半17分、PKを与えて先制を許すも、多くのチャンスをつくり、前半終了間際、岡崎慎司のヘディングシュートが決まって同点に追いつく。だが後半、主力を投入したコロンビアに攻め込まれ、10分に勝ち越される。早く追いつきたい日本は反撃を試みたものの、前がかりになったところをカウンターで立て続けに失点し、万事休した。

 岡崎の同点弾もフイに(クイアバ)
日本 1−4 コロンビア
【得点】
[コ] フアン・クアドラード(17分)、ジャクソン・マルティネス(55分、82分)、ハメス・ロドリゲス(90分)
[日] 岡崎慎司(45+2分)

 2敗1分けのグループC最下位、2得点6失点。これが今の日本の実力だという現実を、日本サッカー界は受け止めなければならない。

 日本がグループリーグを突破するには、コロンビアに勝利し、かつ同時刻に行われるコートジボワール対ギリシャ戦でコートジボワールが引き分け以下に終わる必要があった。
 日本はMF香川真司が先発に復帰し、ボランチでMF青山敏弘がスタメンで今大会初出場となった。青山はくさびのパスやロングフィードの精度に定評がある。彼の起用に、アルベルト・ザッケローニ監督の攻撃的なサッカーをするという決意がうかがえた。

 10分、FW大久保嘉人がPA手前で縦パスを受けると、相手のプレスを受けながらも強引にフィニッシュ。シュートはゴール左へ外れたが、日本は今大会で一番といっていいほど、縦すなわちゴールへ向かう意識を強く出していた。

 しかし、その縦への意識が裏目に出た。16分、MF岡崎慎司がピッチ中央でボールを失うと、そこからカウンターを仕掛けられた。スルーパスに反応したFWアドリアン・ラモスがPA内に入ったところで、DF今野泰幸がスライディング。ラモスが倒れると、主審はファールの判定を下した。このPKを、MFフアン・クアドラードにゴール右へ決められ、日本は痛すぎる先制点を奪われた。

 攻めるしかない日本は26分、香川がドリブルで持ち込み、PA手前からミドルシュート。ゴール左下へ飛んだが、GKに弾き出された。33分には、MF本田圭佑がゴール正面からのFKを直接狙ったものの、わずかにゴール右外へ。さらに36分、大久保が右サイドからのクロスをオーバーヘッドキックで合わせたが、ゴール上に外れた。個人技、セットプレー、流れからの崩し……いずれも得点にはつながらなかったが、様々な攻撃のかたちをつくり出す日本らしさが、ここへ来てようやく発揮され始めた。

 すると前半アディショナルタイムに、日本に待望のゴールが生まれた。決めたの岡崎だ。DF内田篤人がカウンターでドリブルでボールを運び、左サイドの本田へ展開。本田は少し中央へカットインしてからニアサイドへのクロスを上げた。ここに、岡崎がダイビングヘッドで合わせ、GKの手を弾いてゴール右へ流し込んだ。

 直後に前半終了となると、多くの日本人サポーターがスマートフォンなどで他会場のギリシャ―コートジボワールの途中経過を確認しだした。前半終了時でギリシャが1−0でリード。他会場がそのままのスコアで進むと、日本はコロンビアを下せば決勝トーナメント進出できた。ギリシャのリードを知ったであろう日本人サポーターは一様に笑顔だった。

 しかし、勝負の世界は残酷である。後半10分、日本は痛恨の勝ち越し弾を奪われたのだ。DFサンディアゴ・アリアスに右サイドから中にドリブルで仕掛けられる。MFハメス・ロドリゲス、PA内左サイドでフリーになっていたFWジャクソン・マルティネスとつながれ、マルティネスにゴール右へ決められた。誰も激しいプレスをかけられず、アリアスにPA手前まで仕掛けられた時点で、勝負ありだった。

 ザッケローニ監督は17分、青山を下げてMF山口蛍、24分に岡崎に代えてFW柿谷曜一朗を投入。なんとか攻撃を活性化させて、同点そして逆転を狙った。
 だが、前がかりになったところを、コロンビアに突かれた。37分、本田がハーフウェイラインでボールを奪われ、ロドリゲスにPA内右へスルーパスを通される。これを受けたマルティネスに鋭い切り返しから左足でゴール左へ流し込まれた。日本のグループリーグ突破の希望が絶望に変わるゴールに、対応した内田、DF吉田麻也はピッチに倒れ込んで天を仰いだ。44分にもカウンターからロドリゲスにゴールを陥れられ、止めをさされた。

 40分にベンチへ下がった香川はベンチ横に座り込み、試合終了後、本田はピッチ上で腰に手を当てて下を向いた。コートジボワール戦では個の力に屈し、ギリシャ戦は強固な組織を破れなかった。そしてコロンビア戦は、個でも組織でも相手に上回られた。個の力を抑え込む組織力がなく、組織を打ち破る個の力もないのが、今の日本だ。世界に勝つには個も組織もさらに高い質を求めなければならない。そして、それらの強化は「4年後に向けて」というかたちではなく、永続的に行われていくべきである。日本はプロリーグができて21年、やっと海外レベルでプレーする選手が増え始めたサッカー後進国。その現実を思い知ったことが、ブラジルで得た収穫ではないだろうか。

アルベルト・ザッケローニ監督
 非常に残念。いい試合はしたが、もう少しできることがあったと思う。先制したかったが、彼らはカウンターが上手で、どうしても決めきれなかった。今日は本当の意味でサッカーをやれたことには満足している。ただ、相手もいいプレーをして運がなかった。

長谷部誠
 自分たちの力不足。それ以上でもそれ以下でもない。応援してくださった方に申し訳ない。このために4年間やってきて結果が出なかったことにキャプテンとして責任を感じている。同じプランを描いて日本のサッカーを未来へ継続していくことが大事。今日は少し自分たちのサッカーを見せられたが、大会を通じては残念な結果になってしまった。

本田圭佑
 無念の一言。それを招いたのは自分自身なので、すべてを受け入れる必要がある。非常に悔しいが、これが現実。優勝とまで言って、この散々な結果ですから、自分たちが未熟すぎた。敗者なんで何を言っても意味がない。今はすべてを受け入れて、今後どうしていくかに時間を充てたい。皆さんに希望や夢をみせたかったが、口だけに終わって残念。非常に申し訳ない。

岡崎慎司
 今は何も考えられない。自分が何もできなくてがっかりしている。これが実力だと思うしかない。勝てば決勝トーナメントに行けていたので勝ちたかった。ボールを前に運ぶことはできたが、ゴールを決めるのが少なすぎた。単純に個人の力がなかったと思う。ただただ、何もできなかった自分が悔しい。

(鈴木友多)

【日本】
GK
川島永嗣
DF
内田篤人
長友佑都
今野泰幸
吉田麻也
MF
青山敏弘
→山口蛍(62分)
長谷部誠
本田圭佑
岡崎慎司
→柿谷曜一朗(79分)
香川真司
→清武弘嗣(85分)
FW
大久保嘉人

【コロンビア】
GK
ダビド・オスピナ
→ファリド・モンドラゴン(85分)
DF
サンディアゴ・アリアス
パブロ・アルメロ
エデル・バランタ
カルロス・バルデス
MF
フアン・クアドラード
→カルロス カルボネロ(HT)
フレディ・グアリン
アレクサンデル・メヒア
フアン・キンテーロ
→ハメス・ロドリゲス(HT)
FW
アドリアン・ラモス
ジャクソン・マルティネス