後期も現状は2勝10敗2分と大きく負け越し、最下位に沈んでいます。前期よりも内容のあるゲームをファンの皆さんにはお見せしたかったのですが、打てず守れずの状態が続いています。14試合中5失点以上しているのが8試合。これではなかなか試合になりません。
 大量失点するのは、つまらない四球が多すぎるから。ストライクが入らなければ、キャッチャーもリードのしようがないでしょう。抑えだったレイモンド・ビラセニョールと先発のダニロ・デヘススを配置転換したり、手を替え、品を替えて試しているものの、どのピッチャーも投げてみないと計算ができません。

 せめて、軸になるピッチャーをつくりたい。そう考えて、後期は新人の平良成を先発で起用しています。しかし、前回登板の徳島戦(7月30日)ではせっかく初回に3点の援護をもらいながら、3回、2死から味方のエラーで出塁を許したところから気落ちしたのか一気に崩れてしまいます。四球を挟んで5本のヒットを集中され、6失点。これも経験とはいえ、平良にとっては、せっかくのチャンスです。何が何でもモノにして抑えてやろうとする姿勢が見られなかったのは残念でした。

 8月に入り、球団は新外国人右腕のピート・パリーセを獲得しました。150キロ近い速球を武器にカージナルスの傘下や、米独立リーグでプレーし、実力は3Aクラスとか。ブルペンでのピッチング練習を見たところ、確かにいいボールを放ります。本人も投げたがっているので、早速、先発でテストすることになりました。実戦でどのくらいのピッチングを見せてくれるか注目したいと思います。

 野手に関しては昨年より練習生として指導してきた安田開平野尚也千葉雄太らを選手登録し、積極的に使うようにしています。1年間、基本練習を頑張ってきた成果が試合でも少しずつ出てきました。

 もちろん、さらに上を目指すには課題はたくさんあります。これは彼らに限りませんが、上達するには日頃から、もっと頭を使って練習に取り組む必要があるでしょう。

 たとえばマシン打撃。気持ち良く自分の好きなコースのストレートだけを打っていても、バッティングのレベルは上がりません。果たして実戦で、そのコースにピッチャーが投げてくれる確率はどのくらいあるでしょうか。相手が投げミスをしない限り、自分の好きなところにボールは来ないはずです。

 そうであれば、打ちにくいコースに対処する練習をマシンでもしておくべきでしょう。たとえばインコースのストレートにタイミングを合わせ、マシンからのボールが内側に逸れても、きっちり打ち返す。その構えの中で真ん中も、外も打ち分ける。ただ、漠然と数をこなすのではなく、実戦を想定したバッティングをしてほしいものです。

 もっと言えば、実際の試合も課題を克服する場ととらえるべきです。高知の選手たちは変化球を苦手にしている選手がほとんど。変化球打ちを身につけるには、実戦でピッチャーのボールを打ってみるしかありません。

 仮に相手ピッチャーがスライダー、フォーク、チェンジアップと3つの変化球を投げるとしましょう。フォークやチェンジアップは決め球ですから、カウントを取りに来る変化球としてはスライダーを投げる確率が高いはずです。ならば、初球からスライダーを待ってみてはどうでしょうか。

 実際にスライダーが来て、打ってみればタイミングの取り方などがつかめます。その感覚を大事にして、普段の練習に臨み、また試合でスライダーを打ってみる。その繰り返しで変化球をとらえられるようになるのです。もし狙いが外れ、スライダーが来ずに三振に倒れたら仕方ありません。そのくらいの割り切りが大切です。

 結果だけを求めてストレートを狙っていては、いつまで経ってもレベルアップは図れません。しかも、打率は2割そこそこなのですから、1打席を変化球打ちの練習に充てても大差ないでしょう。こういった提案を選手たちにはしているのですが、どうしても試合になると目先のヒットを欲張ってしまいます。

 加えて、こういった試みは打席で狙い球を絞る訓練にもなります。アイランドリーグでは何度も同じ相手と対戦しますから、各球団のピッチャーの傾向はすべてチャートで解析できています。これをチェックすれば、どのカウントで、どんな球種が来るのか、ある程度は読めます。

 たとえ明確に球種が絞れなくても、ストレート系か、緩い変化球か。そのいずれかを読んでタイミングを合わせるという方法で、バットに当てられる確率はかなり高まります。少々差し込まれたり、泳がされても、バットに当たればヒットになることだってあるでしょう。

 少しタイミングがずれてもバットに当てるためには、インパクトの瞬間まで、しっかりボールを見ておくことが大切です。これもバッティングの基本中の基本ですが、意外とできていない選手が少なくありません。ボールを最後まで見ずして、顔と体だけ先に打球方向を見ていても思ったようには打てないでしょう。

 備えをしっかりしておけば、打席でも落ち着きが生まれます。狙ってもいない球に、慌てて手を出して凡打してしまうこともなくなるはずです。独立リーグですから、よくよく見れば相手だって弱点はたくさんあります。余裕があれば、「オレに任せろ」と上から見下ろして打席に立てるのではないでしょうか。しかし、今は準備が不十分なため、逆に相手から見下ろされています。

 シーズンは残り約25試合。勝ち負け以上に、今までやってきた基礎教養を継続して覚えこませる機会にしたいと思っています。開幕前、「1年終わるまでキャンプが続く」と書きましたが、本当に試合以前の段階で、個人の意識と能力を高める作業で今季は終始しそうです。

 1年間、繰り返し巻き返しやってきたことが来季、どう芽を出すのか。当然、見込みがない選手に関しては、引導を渡さなくてはなりません。残り試合はその見極めの時間とも言えます。この成績ですから、どの選手も相当な危機感を持たないと来季もユニホームを着ることはできないでしょう。

 現在、首位打者(打率.346)の河田直人、盗塁トップタイの村上祐基のように個人タイトルが狙える選手もいます。チームとしてはふがいない状態ですが、個々の成長を少しでも感じていただけるよう、引き続き指導にあたるつもりです。


弘田澄男(ひろた・すみお)プロフィール>:高知ファイティングドッグス監督
 1949年5月13日、高知県出身。高知高、四国銀行を経て72年にドラフト3位でロッテに入団。163センチと小柄ながら俊足巧打の外野手として活躍し、73年にはサイクル安打をマーク。74年には日本シリーズMVPを獲得。75年にはリーグトップの148安打を放つ。84年に阪神に移籍すると、翌年のリーグ優勝、日本一に貢献した。88年限りで引退後は阪神、横浜、巨人で外野守備走塁コーチなどを歴任。06年にはWBC日本代表の外野守備走塁コーチを務め、初優勝に尽力した。12年に高知の球団アドバイザー兼総合コーチとなり、14年より監督に就任する。現役時代の通算成績は1592試合、1506安打、打率.276、76本塁打、487打点、294盗塁。ベストナイン2回、ダイヤモンドグラブ賞5回。

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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