6月の競泳ジャパンオープンに続き、先月の競泳パンパシフィック選手権(オーストラリア)でも、山本化学工業の「ゼロポジション水着」を着用して練習を重ねてきた選手たちが活躍をみせた。男子100メートルと200メートル平泳ぎでは、小関也朱篤(ミキハウス)が2冠を達成。男子800メートルリレーでは松田丈志(セガサミー)が日本チームのアンカーを務め、マイケル・フェルプス、ライアン・ロクテら擁する米国と互角の戦いを演じて銀メダルを獲得した。

「トップの選手が、ずっとトレーニング用に使っていただいているのが、ゼロポジション水着の効果を物語る何よりの証拠です。新しく開発した“両面親水”の素材を使用した競技用水着とともに、これからも多くの選手に活用してもらいたいですね」
 そう山本富造社長が語る山本化学工業では、アスリートを支える新アイテムを開発中だ。体幹強化を目的としたウエスト着圧ベルトである。

「ゼロポジション水着を共同で分析してきたびわこ成蹊スポーツ大の若吉浩二教授の研究により、ウエストに圧力をかけて絞り込むと、体の軸がしっかりして、より体幹の筋肉を使って活動するようになることが判明しました。この成果を利用して体幹強化をサポートするものがつくれないかと考えたんです」
 山本社長によると、開発に乗り出したのは2年ほど前から。試行錯誤の末、びわこ成蹊スポーツ大の学生を対象としたテストを経て、この10月にはいよいよ製品化できる見通しだ。

 着圧ベルトは2つの異なるパーツからなる。腹部を覆うストレッチ性のあるベース部分と、背中からおへそに向かって絞り込むバンド部分だ。使用する際は、腹巻き状になっているベース部分を胴体につけ、背中の左右に装着されたバントを肋骨の下に沿わせて前へ引っ張り、おへその前で止め合わせる。これによって後ろから前へウエストを絞り込む。
 
「学生にテストをしたところ、体幹の筋肉を使って動くため、同じ歩行でも歩幅が広がり、カロリー消費量がアップするとの効果が出ました。実際に装着してみての評判も上々で、“つけた方が動きやすい。いつになったら買えますか?”との声もありました。実験段階から、こんなに好評だったのは初めてです」

 山本社長も学生時代から続けている少林寺拳法の練習で装着したところ、「体に中心ができて、さばきに左右のブレがなくなった」と効果を実感した。
「体幹強化は今や、どの競技のアスリートにも必要不可欠になっています。このベルトを巻いてトレーニングすることで、効率的に体幹が鍛えられるようになるはずです」

 山本化学工業では、トップアスリートのみならず、普段、体幹を意識的には使えていない一般の人々にも、この着圧ベルトは役立つとみている。
「カロリー消費量がアップしますから、運動効果が高まり、メタボ対策にもなるでしょう。またウエストを絞ることで、腰まわりの引き締めにもつながります」
 体幹強化、健康増進、そして美容――。さまざまな用途で着用可能な万能ベルトになりそうだ。

 着圧をかけることで体の機能を高める山本化学工業の製品といえば、「メディカルバイオラバー」があげられる。赤外線の放射で筋肉を温めるだけでなく、着圧を与えて血液の循環を促す。当初は高齢者の血流改善を目的とし、厚生労働省から医療機器製造販売の許可を得たが、アスリートにも血液の流れを良くして乳酸をエネルギーに移行させ、疲労回復を助けるツールとして活用されてきた。

 山本社長は「最近は健康増進の機運が高まり、中高年層がジムに通ったり、運動を始めるケースが増えています。でも、血流が悪くて足がむくんだ状態では疲れやすく、体にも負担がかかるメディカルバイオラバーで血流を促しながら運動することで、疲労の軽減やむくみの解消にもつながります。筋肉を温めて軟らかい状態にもなりますから動きやすく、運動効果も高まるでしょう」と、一般向けの利用法を提案する。
 
 医療だけでなく、トレーニング面でも応用され始めたメディカルバイオラバーは、このほど全国各地の郵便局に設けられたイベントスペースで展示、販売することが認められた。この8月には早速、大阪市内の郵便局にブースを設置。すると、予想以上の反響があった。

「僕たちは郵便局は高齢者の利用が多いという先入観がありました。でも、実際には30〜50代の主婦層も多い。足首やふくらはぎ、太ももに装着したメディカルバイオラバーのサンプルを見て、最初は美容グッズだと思われるようですね。“これを着けると足が細くなりますか?”と質問をしてくる女性が目立ったんです」
 山本社長はそう明かす。問い合わせをした女性に聞くと、着圧式のストッキングを履いたり、少しでも足を美しく見せようと苦心しているケースが少なくなかった。

「ただ、着圧ストッキングは足を絞っているだけで、むしろ血流は悪くなる。ストッキングをつけなければ、元のむくんだ足に戻ってしまうでしょう。我々のメディカルバイオラバーは血流を促し、むくみをとる方向に働きますから、健康的で美しい足にすることができると思っています」
 山本社長はブースでの反応を踏まえ、メディカルバイオラバーを美脚効果の観点からも売り出そうと考えている。「血流改善、むくみ解消、そして美脚。この3点をアピールすることで、もっと幅広い層に使っていただけるはず」と今後の広がりに期待は高まる。

 9月22日(月)には1日の来局者が5000人を超える大阪中央郵便局内で展示、販売の実施が決まった。ブースでは試着はもちろん、商品紹介のパンフレットも自由に持ち帰れる。このパンフレットには10月20日(月)にマイドームおおさかで開かれる健康セミナーの招待券も添付される。セミナーでは、大阪大学の大山良徳名誉教授(医学博士)が足の筋肉を衰えさせず、アクティブな生活を末永く送る上での、簡単な体操やアドバイスを伝授する予定だ。

「郵便局は全国で24,000もあります。単に商品を販売するだけでなく、郵便局にやってきた方々の健康増進に寄与する取り組みをしていきたい」と山本社長は意気込む。大阪を手始めとして、今後は全国に張り巡らされた郵便局のネットワークを駆使し、局内でのブース設置と、健康イベントを各地でセット展開する構想もある。

 人々をもっと健康的に、そして美しく――。山本化学工業が、また新たな段階へ足を伸ばそうとしている。

 山本化学工業株式会社