9月にイタリア・サルデーニャ島で開催されたAIDAフリーダイビング世界選手権、女子日本代表の「人魚ジャパン」(平井美鈴、廣瀬花子、福田朋夏)は銀メダルを獲得した。過去2大会に続く3連覇こそ流したものの、これで2008年から4大会連続の表彰台だ。

 この競技を下支えしているのが山本化学工業のウェットスーツ素材である。保温性にも優れ、長年愛用された「ヤマモト#45」をベースに、近年は「S.C.S.(スーパー・コンポジット・スキン)」を開発。空気中では水をはじき(撥水)、水中では水になじませて(親水)、流水抵抗を限りなくゼロに近づけることに成功し、浮沈の際の抵抗が大幅に軽減された。

 その高機能性は世界から認められ、人魚ジャパンをはじめ、今回、男女ともに総合優勝を収めたロシア代表など、各国の選手たちが山本化学工業の素材を使ったウェットスーツを着用している。
「どのチームからも、体との一体感があり、安心感があるとの評価をいただいています」
 山本富造社長は自慢のウェットスーツ素材を“第2の筋肉”と位置づける。「筋肉のように体と同化しつつ、かつパフォーマンスを上げてくれる」ものというわけだ。

「今回、ロシアの選手が驚異的な記録を残して、日本は銀メダルでしたが、選手たちとはコミュニケーションをとりながら、より表面の抵抗を減らしたり、着心地が良くなるような工夫を施してきました」

 山本化学工業では人魚ジャパンにウェットスーツ素材のみならず、プール競技用の水着も提供し、サポート体制を一層、充実させた。より深く、より長く――。限界に挑む“人魚”たちとともに、今後も究極の素材を追い求めていく。

 世界の医療界では、このところ遺伝子検査、ゲノム診断が大きな注目を集めつつある。唾液や血液を採取して、その人が持つ遺伝子情報を調べて、病気予防や健康管理に役立てるのだ。米国の女優アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査により、遺伝性乳がんを発症するリスクがあることが判明し、健康な乳房を切除したとのニュースが話題にもなった。

「スポーツの世界でも遺伝子情報に基づいて、どんな競技に向いているかを判断したり、トレーニングや食事の内容を決めたりと応用される可能性があるでしょうね」
 山本社長も遺伝子検査の行方に注目しているひとりだ。遺伝子をめぐる研究は日進月歩で、それぞれの遺伝情報をコピーして伝えるメッセンジャー(m)RNAの存在も明らかになってきた。

 遺伝子検査・検診の普及により、人々の健康意識の向上を目指すゲノム・ドクターズ・クラブでは、このmRNAの発現量を調査することで、老化を遅らせるといわれる長寿遺伝子の状態や、ガン発生につながる遺伝子異常を検査する方法を提唱している。同クラブによる「ガンmRNA発現解析検査」では男性8部位、女性11部位のガンのリスクを調べられる。

 山本社長は「こういった検査が医療機関で一般的になれば病院のあり方も変わってくるはず」と見ている。
「これまでは病院は基本的に病気になったり、その疑いがある際に行くところでした。しかし、健常者が病気を未然に防ぐために検査を受ける場所にもなっていくはずです」

 検査により、病気のリスクをあらかじめ知った上で、健康に留意しながら日常生活を送る。こうした傾向が強まれば、人々の関心はより生活習慣の見直しや体質改善に向くはずだ。山本社長は「人口減少社会を迎えると言われる中、病院に健常者も通うようになれば来院者が増える。一方で病気予防ができるので病人は減っていく。病院を経営的には救いつつも、医療費の削減にもつながるのではないでしょうか」と期待を寄せる。

 山本化学工業ではウェットスーツの高機能素材から、「メディカルバイオラバー」といった健康に寄与する製品も開発し、提供中だ。
「バイオラバーは電気も加熱も必要なく、体を内側から温められるのが最大の強みです。免疫力の低下を引き起こす低体温状態の解消にも役立ちます」

 より健やかに、より長生きを――。そんな人々の願いにも応えようと、山本社長は社員とともに、製品やサービスを通じて新たな提案をしたいと考えている。

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