高齢化と人口減少は、この国が抱える最重要問題である。東京への一極集中が加速する中、とりわけ地方への影響は深刻だ。2040年には全国約1800市町村のうち、523の自治体で人口が1万人を割り、消滅の危機に見舞われるとの説もある。
 この衝撃のデータを発表した日本創成会議の増田寛也座長(元総務相)は毎日新聞のインタビューに<地方から若者が東京に出て働かなければならない状況をなくす必要がある。東京一極集中を見直し、地域に雇用の場を作る。それができれば、東京に出た人が地方に戻り、東京から移り住む人も出てくる>(6月20日付朝刊)と答えている。

 第2次安倍晋三改造内閣は「元気で豊かな地方の創生」を最大の政治課題に掲げ、スタートを切った。「従来とは異次元の大胆な政策」を実行するのだという。言うは易し、行うは難しだ。

 その手始めとして設置したのが「まち・ひと・しごと創生本部」である。本部長の首相が議長を兼ねる「創生会議」のメンバーを見て、思わずヒザを打った。増田とともに、池田弘、清水志摩子、冨山和彦、樋口美雄らの名前があったからだ。おそらく偶然だろうが、これだけスポーツに理解のあるメンバーが集まることは珍しい。

 池田については説明の必要もあるまい。地域密着というJリーグの理念を最も理解し、実践したアルビレックス新潟の会長である。今ではアルビレックスを名乗るチームは野球、バスケットボール、スキー・スノーボードを含め、サッカー以外に7つもある。「親がいて家族がいて、仲間がいる。そして、その中心にスポーツがある」との持論は、そのまま地方創生のコンセプトにも合致する。

 さいたま市内で結婚式場を営む清水は、「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」を支援するなど、地域スポーツ振興に力を入れてきた。亡父はアントン・ヘーシンクを指導した道上伯で、本人も欧州柔道に詳しい。

 さらには企業再生のプロで国内外のスポーツにも造詣が深い冨山、労働経済学が専門でプロ野球に関する著書も有する樋口と、スポーツ畑から見ると、最適の人材が揃った。

 日本創成会議は人口減少対策のひとつとして「若者に魅力ある地域拠点都市を中核とした新たな集積構造の構築」を掲げているが、スポーツはその貴重な触媒となり得る。「創生会議」での活発な議論、速やかな実行に期待したい。

<この原稿は14年9月17日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
◎バックナンバーはこちらから