第69回国民体育大会「2014長崎がんばらんば国体」は10月12日に開会式を迎える。開幕に先駆けて水泳とカヌー競技(スラローム、ワイルドウォーター)が既に実施されている。愛媛県勢では競泳の少年女子A200メートル平泳ぎで照喜納志帆(新田高)が5位、成年男子100メートルバタフライで三好悠介(東洋大)が8位と、それぞれ入賞した。
(写真:9月14日まで行われたボート日本選手権の男子シングルスカルで史上最多を更新する14度目の優勝を果たした40歳・武田も出場する)
 2017年の「愛顔つなぐ、えひめ国体」に向けて各競技団体は強化を進めており、四国ブロック予選では着実に成果が出ている。全種目における予選突破率で愛媛県勢は2年連続で四国トップ。突破率も昨年の39%を上回る41%(2位・香川が25%)。柔道、アーチェリー、フェンシング、山岳など15競技で全種別揃って代表選手を送り込む。

 バレーボール少年男子、バスケットボール成年女子、軟式野球成年男子、ソフトテニス成年女子、ラグビー成年男子、ゴルフ少年男子、剣道少年女子などが新たに出場権を獲得。伊予農高を拠点に選手育成をしてきたライフル射撃では昨年よりも出場権獲得種目を増やした。

 一方で昨年は全種別で出場を果たしたサッカーは、予選突破が愛媛FCレディースによる成年女子のみ。ホッケー(昨年は成年女子、少年男女が出場)も少年女子1種別の出場にとどまるなど、苦戦を強いられた競技もあった。お家芸の弓道も成年男子が出場を逃し、ダイキ弓道部で構成された成年女子も予選3位で5年ぶりの突破はならなかった。

「ブロック予選突破率は上昇し、他県にも大きく水をあけることができました。しかしながら、出場を見込んでいた種目で予選敗退したものもあり、選手団の総数(選手・監督)は549人(公開競技除く)。昨年よりも9名減です。予選突破率の高さが、そのまま国体での順位アップにつながるかどうかは現時点では微妙な情勢です。出場する選手たちの頑張りに期待したいですね」

 愛媛県選手団の総監督を務める愛媛県体育協会の藤原惠専務理事は、そう見通しを語る。国体の天皇杯(男女総合)の競技得点は競技人数と成績に応じて与えられる(個人競技は1位=8点、2位=7点……8位=1点。4人による種目で1位だと8点×3=24点となる)。団体種目の出場数は順位に大きく影響する。昨年の「スポーツ祭東京2013」では愛媛県は天皇杯26位だった。今回は「できれば10位台も狙いたかった」のが県体協の本音だが、現実的には「20位に限りなく近づける」ことが目標となりそうだ。

 期待が持てる競技は例年、高得点をたたき出しているボートだ。五輪5大会連続出場の第一人者・武田大作(ダイキ)が県ボート協会の強化部長として、さらなるレベルアップへ陣頭指揮を執り、自身も成年男子ダブルスカルで20歳下の越智寛太(筑波大)とペアを組んで出場する。県勢で狙うは10種目の入賞。前回の得点からほぼ倍増を、と意気込む。

 武田と同じく五輪経験者の陸上男子やり投げの村上幸史(スズキ浜松アスリート倶楽部)は成年男子で国体5連覇をうかがう。レスリングでは成年男子グレコローマンスタイル66キロ級に、リオデジャネイロ五輪を目指して現役復帰した泉武志(県レスリング協会)が参戦。全日本社会人選手権を昨年、今年と連覇中で、優勝への期待がかかる。少年では、先のインターハイで準優勝したフリースタイル84キロ級の山下拓也(八幡浜工高)らに上位進出が見込める。

 入賞すると大量得点となる団体競技でも、前回準優勝したソフトボール成年女子、3位のサッカー成年女子に東京国体同様の快進撃が望まれている。また注目したいのはソフトテニスに出場する青木3兄妹だ。成年男子の青木彰彦、雅彦(ともに愛知学院大)、成年女子の梨香(千里金蘭大)と三つ子で2年連続の国体参加となる。彰彦、雅彦のペアは昨年は準優勝。今年も東海選手権で優勝を収めるなど息はピッタリだ。頂点に立てば、“最強の三つ子”と話題になるかもしれない。

 本番で結果をあげるには選手たちの頑張りのみならず、サポート体制も不可欠だ。県体協では国体期間中、病気やケガといったアクシデントへの対応や、選手の入れ替え手続きなどが迅速に進むよう、3名の職員を現地に常駐させる。全出場選手を対象に心電図検査やドーピング検査などのメディカルチェックも実施し、医師、薬剤師、トレーナーと連携して万全の健康状態で大会を迎えられるように指導を行っている。食事面でも減量が必要な競技を中心に栄養士を派遣し、求めがあれば相談に乗る。

 こうした支援体制の構築は成績向上の目的だけではない。藤原専務理事は「選手や指導者にコンディショニングの大切さを理解し、実践してもらえれば、故障の予防や長く競技を続けることにつながる。それらが県内で定着することが国体後も競技の普及や人口増加をもたらすはず」と語る。競技を行う上での環境整備が、ひいては豊かなスポーツ文化の醸成にも寄与するというわけだ。

 えひめ国体は、いよいよ3年後。県全体で取り組んでいるのが成年の充実である。今年度から県の競技力向上対策本部ではスポーツ専門員制度が設けられ、各競技から12名のトップ選手を採用した。4月時点では、このスポーツ専門員(同時点では11名)も含め、公務員や教職員、各企業などで62名の選手・指導者を受け入れている。

「人材集めや育成、強化など各競技団体が推し進めてきたプランが、えひめ国体に向けて適切なものか、ここを最終的に見極める重要な国体になります」
 藤原専務理事は長崎国体をそう位置づける。
「好成績を出すことはもちろんですが、この体制や戦力で3年後に本当に結果が残せるかどうか。その分析を各競技団体にはお願いしたいと思っています。残り2年や1年になってから慌てて取り組んでも、もう間に合わない。3年前の今回がプランを見直す最後の重要な機会です」

 計画を修正すべきところは修正し、あとは2017年へ邁進する。長崎といえば古くから貿易で栄えた土地柄だけに、愛媛県勢にとっても国体成功への出航の地としたいところだ。

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関連リンク>>公益財団法人 大亀スポーツ振興財団

(石田洋之)

(このコーナーでは2017年の「愛顔つなぐ えひめ国体」に向けた愛媛県やダイキのスポーツ活動について、毎月1回レポートします)


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