22日に閉幕した第69回国民体育大会「長崎がんばらんば国体」で愛媛県は天皇杯(男女総合)で21位と、昨年の26位から順位を上げた。その原動力となったのがお家芸のボートだ。成年男子ダブルスカルで武田大作(ダイキ)、越智寛太(筑波大)ペアが優勝。成年女子かじつきクォドルプルで高畠千鶴(伊予銀行)、小原有賀(筑波大)、谷川早紀(早大)、木村光里(筑波大)、山田加奈(明大)で構成された愛媛選抜が53年ぶりに同種目を制した。
(写真:優勝した成年女子のクルーと喜び合う強化部長兼選手の武田(左))
 また少年女子かじつきクォドルプルでは、山口郁加(今治北高)、井ノ口晴翔、工藤かれん(ともに松山東高)、浜田実沙季(宇和島東高)、村越有里(今治西高)による愛媛県のクルーが3位。成年男子シングルスカルの別府晃至(今治造船)、少年女子シングルスカルの広沢稀梨華(宇和島東高)、成年女子ダブルスカルの杉原参智(今治造船)、久門愛菜(立教大)組がいずれも4位に入った。さらに少年男子かじつきクォドルプルが6位、同ダブルスカルとシングルスカルが7位と、愛媛県勢は参加12種目中9種目で入賞を収めた。

 結果、得点は152点と前年からほぼ倍増。競技別順位も5位から2位へ浮上した。
「合同合宿から雰囲気が良く、160点は行ける感触はあったので、ちょっと届かなかったですね。ただ、全体的なレベルが上がったことは確かです。その点では3年後のえひめ国体につながる大会になりました」
 県ボート協会の強化部長でもある武田は、長崎国体をそう総括する。

 武田自身、ダブルスカルでは7年ぶりに国体で勝った。ペアを組んだ越智は20歳。ベテランと若手が融合しての全国制覇だった。
「彼の持ち味はスタートからスピードに乗れるところ。エンジンでいう排気量は僕の方が大きいので、彼のスピードと僕のパワーをうまくミックスできればと思っていました」
 所属が異なるため、一緒にオールを合わせる機会は限られる。そこで武田は9月の全日本選手権後、越智を誘って大会に出場した。

「レースになると漕ぎが変わるので、状況によってどうなるのか、お互いに参考になりました。越智君は後半まで安定して漕げる。その点は国体に向けて安心材料になりました」
 順調に決勝進出を果たし、優勝を争うライバルは東京都代表のクルーだった。NTT東日本に所属し、日本代表メンバーでもある強敵に対し、20歳差のペアは序盤から加速してリードを奪う。

 そのまま東京都に1秒以上の差をつけてのゴール。「こっちは練習期間は実質1週間の即席クルー。あっちは実業団で常に練習している。レース後、2位のクルーには“日本代表がそれじゃ困る”と説教したんですよ」と武田が明かすほどの快勝だった。
(写真:越智(左)は筑波大では全日本選手権のダブルスカルで2年連続4位に入った実力を持つ)

「越智君はまだ若く、上を目指せる選手です。来年以降、さらにクルーとしてブラッシュアップして、えひめ国体に臨みたいですね」
 武田は既に3年後の「愛顔(えがお)つなぐ えひめ国体」を見据えている。自身が出場したダブルスカルのみならず、他の種目でも地元開催をにらんだ陣容で臨んだ。
「少年は毎年、戦力が入れ替わりますが、成年はメンバーが固定できる。ここで安定した成績が残せるよう、2017年まで継続してできる選手や組み合わせを考えました」  

 今回のボート競技は長崎市の形上湾に設けられたコースで実施された。準決勝、決勝が行われた日は波が高く、荒れた水面が幸いしたクルーと災いしたクルーとで明暗が分かれた。ラフコンディションを味方につけたのが、優勝した成年女子かじつきクォドルプルだ。準決勝、決勝とリードを許しながら、いずれも終盤、1位クルーのオールが乱れ、失速したのに乗じて逆転した。

「おそらく静水のコースなら優勝は難しかったでしょう。決勝のレースで最初から思い切りスパートさせたように思い切った作戦が当たった。愛媛のクルーは悪コンディションでも安定した漕ぎをみせていました。それで相手の焦りを誘った部分もあったかもしれません」

 一方で、波が裏目に出たのが成年男子かじつきクォドルプルだ。準決勝で予想外の3位に終わり、入賞を逃した。また少年男子かじつきクォドルプルは夏のインターハイ4位の選手も入ったクルーだったが、波にオールをさらわれて順位を落とした。

「体のコンディション面でも選手によって、バラつきがありました。中途半端な状態で勝てるほど勝負の世界は甘くない。選手個々と連携を密にして、本番へのトレーニングや調整を万全にしていくことが来年以降の課題です」
 武田は好結果にも気を引き締める。国体後の全体ミーティングでは、強化部長として「2017年には全国1位を獲りたい。それを忘れないで競技を続けてほしい」と選手たちにハッパをかけた。

「地元の国体で勝って終わりではない。国体をひとつの通過点として愛媛はもちろん、日本のレベルアップにつなげたい」と武田は考えている。だからこそ、昨年からの大幅な成績向上では満足していない。「選手たちの頑張りは評価したいが、勝負事に絶対はない。より強く、より安定して結果が残せるように目標は高い位置に置きたい」と意気込む。

 実は今回、中学3年の次男・大地もセーリング少年男子シーホッパー級スモールリグで初めて国体に出場した。
「息子もいい経験ができたはずです。競技は違いますが、お互いにもっと上を目指したいですね」
 夢は3年後の親子同時V。40代に突入した第一人者は、まだまだトップで漕ぎ続ける。

<ゴルフ・竹下、成長誓った初国体>
 
 ダイキジュニアゴルフスクールから初の国体選手となった高校1年の竹下桃夏は、個人ではスコア86の126位タイだった。団体でも参加46都道府県中42位と振るわなかった。
「国体は普段の大会では味わえないものがあると聞いていました。ギャラリーが多くてプロの大会みたいで、雰囲気から違ったんです。結果は悪かったですが、得られたものは多かったです」
 竹下は初めての大舞台を冷静に振り返る。
(写真:スクール創設6年目で国体選手となった竹下)

 得られたものとは何か。本人は「自分は何もかも未熟だと気づけたこと」と明かす。今回、台風接近で日程が1日に短縮された。ラウンド当日は台風一過の秋晴れながら、コース上は強風が吹いていた。
「他の選手はそれでも風に負けない強いボールが打てる。体幹が強いので、ショットがぶれないんです。これは衝撃的でした」

 フィジカル面のみならず、ショットやパッティングの精度といったテクニックに、緊迫した場面でも実力を発揮できるメンタル……。全国クラスの選手はすべてにおいて一枚も二枚も上手だった。
「レベルの高い選手はプレーする姿を見ていればわかります。自分のやってきたゴルフは、まずまず出せたと思いますが、そのレベルの低さを思い知りました」

 高校生ゆえに、国体に出るからといって勉強をおろそかにするわけにはいかない。大会前には試験もあり、練習量が不足していた。「状態としては70%。準備が不十分ではできるものもできなくなる」とスクールで指導する江口武志監督は実情を打ち明ける。本人も「勉強も練習も両方計画立てて取り組むことができなかった。その点でも未熟だったと思います」と反省する。

 未熟さを自覚したなら、今後は少しずつ成熟させていくだけだ。初の国体を終えて、竹下は「来年は今年よりも成長して出たい」と自らに誓った。
「ゴルフを始めて7年になりますが、他の選手と比べればコース慣れしていない。アプローチの感覚は持っていても、ちょっと状況が変わると分からなくなる。今回は自分自身できちんとプレーした感じがしませんでした。来年はもっと練習をして、プレーしている手応えを感じながら回りたい」
 その姿には江口監督も「思うようなゴルフをしたいという意欲が一層湧いてきたのでしょう。今後につながる国体になったはずです」と目を細める。

 竹下の同組には地元・長崎の選手もおり、ナイスショットやバーディにギャラリーから大きな拍手が巻き起こった。
「3年後の国体は、こんな雰囲気になるんだろうなと体感できました。愛媛の皆さんにたくさん応援していただける選手になりたい」
 一足飛びにホールインワンを狙うことは難しい。だが、3年後へ一打一打、着実にピンに寄せていく。

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関連リンク>>公益財団法人 大亀スポーツ振興財団

(石田洋之)

(このコーナーでは2017年の「愛顔つなぐ えひめ国体」に向けた愛媛県やダイキのスポーツ活動について、毎月1回レポートします)


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