先月開催された第69回国民体育大会「長崎がんばらんば国体」で愛媛県は天皇杯(男女総合)21位だった。昨年の26位から順位を上げ、3年後の「愛顔(えがお)つなぐ、えひめ国体」へ向けた強化が一定の成果をみせた。
「当初の目標としていた限りなく20位に近い順位を達成でき、各競技団体、選手、関係者の努力には敬意を表します」
 県選手団の総監督を務めた愛媛県体育協会の藤原惠専務理事は長崎国体をそう総括する。
(写真:開会式で入場行進する愛媛県選手団)
 競技別では前回紹介したボートが成年男子ダブルスカルで武田大作(ダイキ)、越智寛太(筑波大)ペアが優勝。成年女子かじつきクォドルプルで愛媛選抜が53年ぶりに同種目を制したのをはじめ、9種目で入賞を収めた。152得点を稼ぎ、47都道府県中2位に入った。

 大量得点が見込める団体種目でも、サッカー女子で愛媛FCレディースが決勝に進出。3連覇を果たした宮城県に敗れたものの、準優勝に輝いた。剣道の成年男子も決勝で地元の長崎県に敗れたが、過去最高の2位と健闘をみせた。さらにはバスケットボール成年女子では今治オレンジブロッサムが準決勝まで勝ち上がり、3位となった。なぎなたでも、少年女子演技が3位決定戦を制して入賞を収めている。
(写真:強化指定を受け、一昨年に続いて3位と結果を出した今治オレンジブロッサム)

 個人競技では成年女子100メートルハードルで伊藤愛里(住友電工)がレースを制し、少年男子Aやり投げで森秀(今治明徳高)がインターハイとの2冠を達成した。レスリングでは、リオデジャネイロ五輪を目指して現役復帰した泉武志(県協会)が成年男子グレコローマンスタイル66キロ級で頂点に立った。重量挙げは成年男子53キロ級で権田達也(中大)、ボウリングは少年女子個人で泉宗心音(松山東中)が優勝している。

「長年、課題にしてきた成年の強化が実を結びつつあります。参加得点を除いた競技得点の内訳をみると、成年が368.5点、少年が216点。昨年から成年の点数が少年を上回るようになりました」と藤原専務理事は話す。今年度より県の競技力向上対策本部ではスポーツ専門員制度が設けられ、各競技から12名のトップ選手を採用した。その中から、カヌーの竹中一生が成年男子スプリントカナディアンシングルで6位に入り、フェンシングの森美里が成年女子エペで県代表の一員として7位入賞に貢献した。

 また、えひめ国体を見据えたジュニア層への競技普及、育成の試みも花を開かせつつある。ボウリングで中学3年ながら全国制覇を果たした泉宗は、その象徴だ。小学校時代の体験教室を契機に競技を始め、全国のトップにのぼりつめた。
「ボウリングのみならず、陸上でも中学生がジュニアオリンピックで好成績を収めています。3年後へ有望な選手が育っていると言えるでしょう」
(写真:泉宗は8月の世界ユースボウリング選手権で4人チーム戦優勝など国際舞台でも活躍している)

 ただし――藤原専務理事は、そう前置きして、えひめ国体への危機感を口にする。
「天皇杯を獲得するには競技得点で2000点以上が求められます。584.5点の愛媛は、あと3倍以上も得点を積み重ねなくてはいけません。しかも、4年後に国体を開催する福井県も強化に力を入れ、既に愛媛よりも上位(17位)です。現状は厳しくみていかなくてはなりません」

 県体協が挙げる課題は大きく3つある。ひとつは「競技得点0の競技をなくす」。長崎国体で参加した40競技中、競技での得点がとれなかったものは実に半分近い18を数えた。各競技団体の取り組みにより、愛媛県勢は全種目における予選突破率は41%に達し、2年連続で四国トップとなった。だが、予選は突破できても、全国では歯が立たない。競技得点0が18競技という結果は、これを如実に示している。

 2つ目は「えひめ国体を見据えたチーム編成」だ。今回、サッカー女子や剣道成年男子、バスケットボール成年女子の頑張りが光ったものの、藤原専務理事は「実際には予想より苦戦した競技の方が多く、大会終盤までは順位が上がるかヒヤヒヤしていた」と正直な心境を吐露する。その原因は「選手の確保などの見通しが甘く、ベースとなる戦力が構築されていない」からだと藤原専務理事はみている。

 もちろん、スポーツの世界は何が起こるか分からない。どんなに充実した選手層を誇っていても足元をすくわれることはある。だからこそ、想定を下回っても最低限の成績は残せるだけの準備は整えておかなくてはならない。県体協が、えひめ国体での目標得点を天皇杯獲得ラインの2000点ではなく、「3000点」と高く設定しているのもそのためだ。「予想の7掛けくらいで考えて、ちょうどいい。そのくらいの意識で競技団体には強化プランを立ててほしいですね」と藤原専務理事は切望する。

 そのためにも必須なのが、3つ目の「競技環境の充実」だ。長崎国体後、反省点を洗い出すため、各競技団体の会長が集まった会合でも、現場から最も上がってきた要望がこれだった。

「サッカーの愛媛FCレディースは昨年は3位、今年は準優勝と立派な結果を出してくれましたが、練習場は空いているグラウンドを転々としているのが実情です。これは他の競技も同様。練習施設は主に各自治体が管理しており、協力をお願いしなくてはなりません」
 藤原専務理事は「週1、2回は国体の候補選手やチームが優先的に使えるように配慮してもらう」といった方法で、トレーニング環境を改善したいと考えている。
(写真:愛媛FCレディースは高校やスポーツセンター、公園のグラウンドを借りて練習している)
 
 また成年に関してはトレーニング時間の確保も重大だ。実業団チームの少ない愛媛では、選手の就職先が各企業や団体に分かれているケースが多い。全体練習を行うにあたっては終業時間を合わせるといった各受け入れ先の理解が不可欠になる。

「大会出場の際には職場を休むことを認めてもらったり、条件面を踏まえた上で、今後、本格化する再来年度の採用戦線で選手を雇用してもらえる企業や団体を開拓していく。これが我々の重要な任務になります」
 えひめ国体選手および指導者確保推進班の班長でもある藤原専務理事は、県内を東奔西走する日々だ。

 県の競技力向上対策本部でも、これから個々の競技団体とヒアリングを重ね、成績アップには何をすべきか、具体的な詰めの作業に入る。その上で必要な施策を打つ意向だ。「山登りでいえば、ようやく5合目に来たところでしょう。ここまではハイキング気分でも行けなくはない。実際に大変なのは、ここから頂上を目指す道のりです」と藤原専務理事は一層、気を引き締める。

 来年の「2015紀の国わかやま国体」は県体協では10〜15位を目標に設定している。山の頂まで昇り切るには、もう立ち止まっている時間はない。一歩一歩、天皇杯という御来光を拝むために高みに上がっていく。

---------------------------
★質問、応援メッセージ大募集★
※質問・応援メッセージは、

---------------------------------
関連リンク>>公益財団法人 大亀スポーツ振興財団

(石田洋之)

(このコーナーでは2017年の「愛顔つなぐ えひめ国体」に向けた愛媛県やダイキのスポーツ活動について、毎月1回レポートします)


◎バックナンバーはこちらから