2014年も残すところ、あと10日。スポーツ界でもさまざまな出来事があった。愛媛県出身者では青野令(松山市出身)がソチ五輪のスノーボード・ハーフパイプで2大会連続の出場。ゴルフの米ツアーに本格参戦した松山英樹(松山市出身)はメモリアル・トーナメントで日本人4人目となるツアー優勝を果たした。サッカーW杯ブラジル大会では長友佑都(西条市出身)が前回の南アフリカ大会に続き、代表の主力として戦った。世界柔道選手権では男子73キロ級で中矢力(松山市出身)、女子57キロ級で宇高菜絵(西条市出身)が金メダルを獲得している。県出身者の世界での活躍が目立った2014年の愛媛スポーツとダイキのスポーツ活動を振り返る。
(写真:長崎国体では愛媛県はボートの好成績が目立った)
<えひめ国体へ、来年は10位台前半を>

 10月に開催された第69回国民体育大会「長崎がんばらんば国体」で愛媛県は天皇杯(男女総合)21位だった。昨年の26位から順位を上げ、3年後の「愛顔(えがお)つなぐ、えひめ国体」へ向けた強化が一定の成果をみせた。ボートでは成年男子ダブルスカルで武田大作(ダイキ)、越智寛太(筑波大)ペアが優勝。成年女子かじつきクォドルプルで愛媛選抜が53年ぶりに同種目を制したのをはじめ、参加12種目中9種目で入賞を収めた。

 団体種目でも、サッカー女子で愛媛FCレディースが準優勝。剣道の成年男子も過去最高の2位と健闘をみせた。バスケットボール成年女子では今治オレンジブロッサムが準決勝まで勝ち上がって3位に入り、なぎなたも少年女子演技が3位決定戦を制している。

 個人競技では成年女子100メートルハードルで伊藤愛里(住友電工)が1位に輝き、少年男子Aやり投げで森秀(今治明徳高)がインターハイとの2冠を達成した。レスリングでは、リオデジャネイロ五輪を目指して現役復帰した泉武志(県協会)が成年男子グレコローマンスタイル66キロ級で頂点に立った。重量挙げは成年男子53キロ級で権田達也(中大)、ボウリングは少年女子個人で泉宗心音(松山東中)が優勝している。
(写真:7月に開かれた世界ジュニアにも出場、8位に入った森) 

 国体地元開催に向け、愛媛県体育協会では成年の強化をかねてから重点項目に設定してきた。その課題は徐々に解消されつつある。長崎国体での競技得点の内訳をみると、成年が368.5点、少年が216点。昨年に引き続き、成年の得点が少年を上回った。

 現在、県の国体競技力向上対策本部が主体となり、県内で活動する社会人チームに対する支援を行っている。今回、準優勝したサッカーの愛媛FCレディース、バスケットボールで3位入賞の今治オレンジブロッサムは、いずれも強化指定され、金銭面、環境面でのサポートを受けているチームだ。また、今年度から同本部でスポーツ専門員制度が設けられ、各競技から12名のトップ選手を採用している。その中から、カヌーの竹中一生が成年男子スプリントカナディアンシングルで6位に入り、フェンシングの森美里が成年女子エペで県代表の一員として7位入賞に貢献した。

 えひめ国体までは、残り3年を切った。目標とする天皇杯獲得には乗り越えるべきハードルはいくつもある。半数近くを占める競技得点0の競技をなくすこと、選手、指導者の受け入れによる勝てるチーム編成、競技環境の充実……。競技力向上対策本部では個々の競技団体とヒアリングを重ね、成績アップには何をすべきか、必要な施策を打つ方針だ。

 来年の「2015紀の国わかやま国体」での県体協が定める目標は10〜15位。成績向上に加え、国体を契機に、全国に誇れる「スポーツ立県」を実現させる上でも、“オール愛媛”での取り組みは欠かせない。新しい1年は、その流れを一層加速させる年になる。

<ボート・武田、選手兼任強化部長として活躍>

 国体において、県勢の順位アップに大きく寄与したのが、お家芸のボートだ。9種目入賞、うち2種目で優勝し、得点は152点と前年からほぼ倍増。競技別順位も5位から2位へ浮上した。

 県ボート協会の強化部長を務める武田もダブルスカルでは7年ぶりに国体を制した。ペアを組んだ越智は20歳。20歳年齢が離れたベテランと若手が融合しての勝利だった。
(写真:日本代表メンバーのクルーを序盤からリードし、1秒以上の差をつけた武田(右)、越智ペア)

 強化部長として県勢のレベルアップを担う役割となって2年目、ボート界の第一人者が取り組んできたのが成年の充実だ。県出身の大学生を中心に声をかけ、所属先にも協力を求めるなど選手集めに奔走してきた。結果、高校で結果を残した若手が成年でも引き続き、県の戦力となり、選手層が厚くなってきた。その中から県予選や四国ブロック予選を通じ、いかにベストのクルーを組むか。本番に向けた戦略を練り上げた。

 もちろん、3年後のえひめ国体では競技別で全国1位になることが至上命題だ。「調子が良ければぶっちぎりで勝つし、調子が悪くても僅差で勝つ。どんなことがあっても1番になることを目指してほしい」と武田は選手たちに、より高い次元を求める。

 武田自身は、この12月で41歳を迎えた。だが、国内ではトップの実力を維持し続けている。9月に行われたボート日本選手権の男子シングルスカルでは史上最多を更新する14度目の優勝を果たした。ロンドン五輪以降は国内に活動の軸を移しているが、2年後のリオデジャネイロ五輪へ再び世界に飛び出す可能性もゼロではない。

「もう僕の年齢になると、五輪に出るためにやるのでは意味がない。客観的に見て世界で勝てる能力があるのか。家族の理解も必要になるので、どうするか考えて方向性を決めていきたいと思います」
 ボート界の“レジェンド”は、2015年も選手、そして強化部長と2本のオールをしっかりと漕いでいく。

<ジュニアゴルフ、初の国体選手輩出>

 えひめ国体で優勝可能な選手育成を目的に、09年2月に開校したダイキジュニアゴルフスクールが6年目にして県代表を輩出した。高校1年の竹下桃夏だ。6月、7月に実施された選考会の結果、3位に入り、上位3名に与えられる出場枠を勝ち取った。
(写真:初の国体を「自分は何もかも未熟だと気づけたと振り返る竹下)

 昨年は中学生ながら最終選考会に進んだものの、5位に終わり、代表にはなれなかった。それから1年、心身ともに成長した竹下の姿があった。スクールでの練習のみならず、高校まで日々、30分強の道のりを自転車で通い、自宅に帰ってからはランニングで足腰を鍛えた。体幹強化も試みた。

 メンタル面でも切り替えをうまく行い、目の前の一打により集中できるようになった。フィジカルの強化と、心の揺れを小さくしたことで、ショットが乱れなくなった。これが安定したスコアにつながったのだ。

 しかし、迎えた本番はスコア86の126位タイ。他の2名とともに臨んだ団体でも参加46都道府県中42位と振るわなかった。全国の壁は思った以上に厚かった。

 初の大舞台を経験して、竹下はさらなる進化を誓う。具体的にはコースでのラウンド回数を増やし、どんな状況にも流されず、自分のプレーができるようになりたいと考えている。

 スクールでは、他にも中学3年の岡山史弥が8月に開催された愛媛県小中学生ゴルフ大会で4位に入った。11月の四国ジュニアゴルフ学年別チャンピオン決定戦では、苫居優穂が小学6年の部で3位。将来が期待できる人材が順調に伸びている。

「苫居さんは4年時からスクールに通っていましたが、これまでは目立った成績を残せていなかった。でも、地道にやってきたことが、ベストスコアも出して好結果につながったのでしょう」
 江口武志監督はそう分析する。

 来年は岡山が高校に進学し、少年での国体出場を狙う。男女揃っての国体選手誕生がスクールの大きなテーマだ。加えて、3月の全国小学生ゴルフ春季大会、夏の日本ジュニアゴルフ選手権に四国予選を勝ち抜いて出場することも目標に掲げる。そのために、この冬場は個人の課題克服に時間を充てている。

<弓道、国体逃して再出発>

 ダイキ弓道部は4月から玉木里奈、岡本豊未の2名を新たに加え、6名体制で切磋琢磨しながら5年ぶりの国体四国ブロック予選突破を目指した。実戦経験を重ねて本番での勝負強さを養うべく、5月には大阪・住吉大社全国弓道大会と全日本弓道大会(京都市)に出場。6月には和歌山県での全日本勤労者弓道選手権大会にも参戦した。全日本大会では有段者の部で主将の原田喜美子が3位に入るなど一定の成果も収めてきた。

 満を持して臨んだ8月のブロック予選。原田、山内絵里加、玉木、岡本の4名が県代表に選ばれた。しかし近的で4県中最下位に沈む。遠的こそ2位に入ったものの、総合成績で上位2県に入れず(3位)、またも本大会出場はならなかった。

 国体出場を逃し、主将の原田と小早川貴子は現役を退く決断をした。部員4名での再出発だ。国体予選後、最初の大きな大会となった全日本弓道遠的選手権では北風磨理が4位入賞。11月の全日本実業団弓道大会では近的団体女子の部で準優勝、産業別では3位だった。
(写真:来季に向けて始動した部員の(左から)岡本、玉木、山内、北風)

 この12月には西四国弓道錬成大会で団体制覇。個人でも北風が優勝、山内が3位と結果を出した。来年度からは新入部員を迎える予定で、青野常孝監督の下、2015年こそ“国体出場”という的を射抜く。

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関連リンク>>公益財団法人 大亀スポーツ振興財団

(石田洋之)

(このコーナーでは2017年の「愛顔つなぐ えひめ国体」に向けた愛媛県やダイキのスポーツ活動について、毎月1回レポートします)


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