ゼニのとれるショートである。プレーを見ているだけでワクワクする。それが福岡ソフトバンクの今宮健太だ。
 強肩、俊足、しかも守備範囲が広い。バッターからすれば、彼の周辺は“アリ地獄”のように感じられるのではないか。


 とりわけ6月8日、甲子園でのファインプレーはスゴかった。阪神・上本博紀がすくい上げたレフト前に落ちそうな打球を空中でグラブに当て、こぼれるところを逆シングルで捕球したのだ。無理な体勢だったため、今宮は受け身もとれず、顔面から地面に落ちた。
 まるでアクロバット・ショーを見ているようだった。こうした華のあるプレーが今宮の最大の持ち味である。

 この今宮が一目置いているセカンドがいる。広島の菊池涼介だ。
「一歩目の速さが(他の選手とは)違いますね。打球に追いつけるか、追いつけないか。捕れるのか、捕れないのか。それは一歩目で決まるんです。
 菊池さんは打球に対する反応の速さがピカイチ。それに無駄な動きがない。だから無理だと思われるような打球にも追いつけるのでしょう」

 昨季、菊池は、それまで中日・荒木雅博が保持していたセ・リーグにおける二塁手のシーズン最多補殺記録を塗り替え、シーズン終了時には528にまで伸ばした。今季は、それをさらに更新し、535とした。この数は菊池の驚異的な守備範囲の広さを物語っている。

 今宮、菊池ともに身長171センチと小柄ながら、体の芯が強く、サイズの面でのハンディキャップを感じさせない。
 通常、小柄な選手は自らの役割を過剰に意識して、プレーのスケールが小さくなるものだが、ふたりとも野性味たっぷりで、“いぶし銀”というイメージからは遠い。

 今秋、開催される日米野球。メジャーリーグにおける日本人内野手の成功例は多くないだけに、ふたりにはメジャーリーガーたちから観光気分を抜き取るようなプレーを期待したい。

<この原稿は2014年11月3日号『週刊大衆』に掲載されたものです>


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