いまとなってはいささか信じられない気もするが、8カ月前の開幕時、大阪の、いや日本の注目を一身に集めていたのはセレッソだった。柿谷を始めとする若手の成長に加え、フォルランという世界のビッグネームを獲得したことで、近年のJリーグでは珍しい、コアなファン以外からも注目を集める存在になっていた。
 それに比べ、話題面では大きく見劣りしていたのがガンバだった。いや、率直に言えば見劣りしていたのは話題面だけではない。レッズに0−1で敗れた開幕戦の内容は、まったく同じスコアで前年度覇者に敗れた地元ライバルの開幕戦に比べても、相当に寂しいものだった。「これは中位に入れれば上出来」――わたし自身そう思った記憶がある。

 サッカーは、わからない。
 秋風が冷たさを増す季節、残留争いの真っ只中にいるのはセレッソで、優勝争い、それも3冠の可能性を残しているのはガンバである。恥ずかしながら、こんな展開はまったく、まるで、1ミリたりとも予想していなかった。

 先週末のナビスコ杯決勝にも驚かされた。2点のリードを許したチームが試合をひっくり返すことは何度か見たことがあるが、あれほど一方的に押し込まれ、手も足も出ないでいたチームが0−2から逆転するというのは、わたしの記憶の中にはちょっとない。

 開幕時、ガンバの選手たちはJ1の速さ、特に判断の早さに明らかについていけていなかった。いまは違う。彼らは広島の速さに苦しめられても、耐え抜く力と自信を持ったチームになっていた。

 さらに、相手DFが自分たちのストライカーに手を焼いていると察知するや、まずそこを生かし、次に囮にとしても利用するしたたかさを見せた。日本サッカーが最も不得手とする試合中のアドリブを、いまのガンバは使いこなせるようになってきている。

 こうなってくると、22日の首位決戦は面白い。
 広島を相手に、圧倒された序盤を我慢し、2点のリードをひっくり返した自信は、たとえようもなく大きな力となる。たとえどれほど浦和に押し込まれようとも、先制点はおろか、追加点まで許す展開になろうとも、ガンバの選手たちは諦めずに戦うだろう。依然として優位にあるのは浦和だと見るが、その差は、開幕時とは比べものにならないほど小さなものになっている。

 久々に胸躍る大決戦である。

 いまさら言っても詮ないことではあるが、Jリーグが導入しようとしている新たな優勝決定システムは、興奮を味わえるチームを増やす半面、こうした大一番の興奮度を削いでしまう側面も持っている。2位からのCS優勝が、思いの外喜べないものだと知ったばかりの阪神ファンとしては、その点が気になり始めてもいる。

<この原稿は14年11月13日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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