日本代表にとっての14年が終わった。“あがり2試合”を勝利で飾ったことで、ざわつき始めていたアギーレ監督の周囲も、ひとまずは静けさを取り戻すことだろう。
 ただ、振り返ってみると、ブラジル戦の直前に行われたジャマイカ戦も、内容的にはそれほど悪いものではなかった印象がある。決定力不足を嘆く声があったのはわからないでもないが、それは、世界のどこの国でも同じこと。どれほどのスーパーチームであっても、決定力でファンを完全に満足させたことはない。重視すべきは、チャンスを決める能力ではなく、つくる能力だとわたしは思う。
 ジャマイカ戦での日本は、数えきれないほどのチャンスをつくった。ホンジュラス戦も、オーストラリア戦の後半も、チャンスの数で完全に相手を凌駕していた。唯一の例外が、そもそもチャンスをつくろうとする姿勢すら感じられなかったブラジル戦だった。

 もちろん、他の相手に比べればブラジルは強い。なかなかチャンスをつくれないのもわかる。ただ、それにしてもあの試合の日本はお粗末すぎた。中心選手が誰なのかまるでわからないメンバー構成も問題だったが、一発大物食いをかましてやろう、といった気概がまるで感じられないのには心底ガッカリさせられた。

 あれは、なんだったのだろうか。

 ブラジルよりはるかに強かったドイツは、先日、欧州選手権の予選でポーランドに敗れた。W杯で日本が大いにてこずったギリシャは、人口わずか5万人のフェロー諸島に苦杯を喫した。ブラジルが日本より格上であることは事実としても、両者の力関係を考えれば、日本はもっとやれたはずだし、やっていなければいけない試合だった。

 だが、現実は違った。

 理由はもちろん、一つではあるまい。ただ、その中の一つには、試合会場が関係しているのかもしれない。あの試合が行われたのは、シンガポールだった。アギーレ監督の就任以来、最もお粗末で無残だった試合は、唯一、日本以外で行われた試合だった。

 W杯が惨敗に終わった今も、わたしは日本の実力が世界のトップクラスを倒すレベルにまで上がってきたことを確信している。むろん、足りない点が山ほどあるのは事実にせよ、世界のどんな強豪相手でも、喉笛を切り裂くことのできる段階まではきた。

 ただ、親善試合のほとんどを国内で行うことによって、日本の選手たちが武器の力を発揮できる状況は、他国に比べて相当に限定的なものになってしまっている。収穫の少なくなかったオーストラリア戦にしても、厳しい状況での試合を経験し、より多く今後への糧を獲得したのは、おそらく相手の方である。

<この原稿は14年11月20日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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