二宮: 世界柔道で優勝したことで、初の五輪出場も視野に入ってきました。
宇高: そうですね。でも、今は目先の試合に集中しています。まずは12月のグランドスラム東京で優勝することが目標です。それが終わったら、来年のヨーロッパでの国際大会で勝つこと。最終的には五輪を目指すことになりますが、ひとつひとつの試合で勝っていくことが大事だと考えています。
 松本薫とは五分の成績

二宮: 自分のスタイルが完成されてきた自信もあるのでは?
宇高: 軸は固まってきましたね。あとは引き出しを増やすこと。私のスタイルは相手にもバレてきていますから、それでも技を決められるように磨いていきたいです。もう(五輪代表決定まで)1年半を切っています。これから劇的に何かが変わることはないでしょう。だから、試合にいい状態を持ってこられるように準備することも大切だと思っています。

二宮: 代表でもコマツでも年齢は上で後輩をリードする立場になっています。若い選手と組み合って衰えを感じるようなことはありませんか。
宇高: 体力的に落ちたと感じることはありませんね。ただ、10歳以上離れている若手と同じようにやっているので、先生からは「休みながらやっていいぞ」と気をつかっていただいています(笑)。

二宮: 年齢を重ね、経験を積むことで充実感は増してきていると?
宇高: その通りですね。コマツではキャプテンもやらせてもらって、一層、責任感が出てきました。若い選手のお手本になるよう、まずは自分から率先して取り組むようになりました。周りが見えるようになると、自分のこともよくわかる。おかげで成長でき、好成績にもつながっているのではないかと思っています。

二宮: 五輪の代表枠は1つしかありません。同じ階級にはロンドン五輪金メダリストの松本薫選手もいます。厳しい争いになることが予想されます。
宇高: 若い子なら勢いでいけるのでしょうが、私の場合は経験を生かして、うまさを出していくしかない。松本に関しても、これまで何度も戦ってきているので、そのイメージを大切にして戦っていくことになるでしょう。

二宮: 松本選手との対戦成績は?
宇高: 五分ですね。だから、今回の世界柔道で勝ったことで、やっとスタートラインに立てたと感じています。これまでの私には松本に勝っても、世界で勝てないイメージがあったと思います。国内でいくら優勝しても、「国際舞台は松本」という評価でした。今回の世界柔道で世界でも勝てることをアピールできました。これがマグレではなかったことを今後の大会で証明していかなくてはいけません。

二宮: やはり他人が出ている五輪は見たくないものですか。
宇高: そうですね(苦笑)。あまり見たくないとは思いましたけど……。松本がチャンピオンになって騒がれて、五輪は特別な舞台なんだなと改めて感じましたね。

 東京五輪も視野に⁉

二宮: 新年になったら実質あと1年ですから、ひとつひとつの大会が代表選考に直結していきます。
宇高: 来年の世界柔道(カザフスタン)に出ないことには、五輪は狙えません。だから、12月のグランドスラムと、年明けのヨーロッパでの試合と、4月の全日本選抜体重別が重要な大会になります。金メダルを獲ったことで相手も研究してきて、前のようにはいかなくなってくるでしょう。相手の出方をみて、さらに自分もその上をいけるよう、1試合1試合をしっかり戦っていきたいですね。

二宮: ここから1年が柔道人生で最大の勝負になりますね。
宇高: リオデジャネイロは私の集大成になると思います。おそらく最初で最後の五輪になるので、そこで結果が出れば最高ですね。ただ、あまり最終目標と考えすぎてしまうと良くない。だから「東京五輪も目指している」と言っています(笑)。そうすればリオも通過点になりますから。

二宮: それも一種のメンタルコントロールというわけですね。
宇高: でも、今回の優勝のおかげで、気持ちよくリオまで走っていけそうです。優勝したことで自信もつき、どういう結果になっても全力で五輪に向かっていける。結果が出ないままズルズル続けて、結局ダメだったとなるよりは気分的には全く違うでしょう。

二宮: 愛媛は柔道も盛んな土地ですが、まだ五輪の金メダリストは出ていません。ぜひ、浅見八瑠奈選手(コマツ)や、中矢力選手(ALSOK、ロンドン五輪銀メダリスト)とともに故郷をわかせてほしいものです。
宇高: 確かに世界柔道の優勝はありますが、五輪はないですね。浅見とは同じチームで、よく食事もしますし、ぜひ一緒に世界で戦いたいですね。

二宮: では、最後に愛媛の方へのメッセージを。
宇高: 愛媛は大好きです。いずれは故郷の柔道に貢献する活動ができたら、と考えています。そのためにも選手として実績を積むことが必要です。リオまで、あと2年、地元の方々に勇気と感動を与えられる柔道選手になりたいですね。なかなか試合を見に来てもらうことは難しいでしょうが、テレビなどを通じて愛媛の代表、日本代表として、輝ける姿をお見せしたいと思っています。

(おわり)
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宇高菜絵(うだか・なえ)プロフィール>
 1985年3月6日、愛媛県生まれ。コマツ所属。小学1年から柔道を始める。宇和島東高を経て愛媛女子短期大(現IPU環太平洋大短大)へ。2年時に福岡国際で女子57キロ級初優勝。帝京大に編入する。06年、09年と講道館杯を制覇。10年に全日本選抜体重別で優勝して同年の世界柔道に出場。13年のグランドスラム東京を制すると、14年は4月の体重別で2年ぶり3度目の優勝。3大会ぶりの出場となった8月の世界柔道で初の世界女王となった。身長161センチ、得意は大外刈。

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(構成・写真/石田洋之)




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