来季から指揮を執る5人の新監督の中に、外野手出身者が2人いる。広島の緒方孝市と東京ヤクルトの真中満だ。4年目を迎える北海道日本ハムの栗山英樹を合わせると、外野手出身者は3人になる。
 外野手出身に名監督なし――。球界には、こんな定説がある。その急先鋒が知将の異名をとった野村克也である。かつて、その理由について聞くと「外野手は試合の当事者になりにくい。1球1球プレーを考え、スキを見て相手の嫌がることをする発想に乏しい」と語った。

 何をもって名将とするのか。その定義は定かではないが、仮にリーグ優勝を4回以上、もしくは日本一を2回以上達成した者を“有資格者”としよう。

 調べたところ2リーグ分立以降、先の条件を満たした監督は17人。その内訳はピッチャー出身者が2人(藤田元司、星野仙一)、キャッチャー出身者が3人(森祇晶、野村克也、上田利治)、内野手出身者が11人(川上哲治、水原茂、鶴岡一人、西本幸雄、原辰徳、三原脩、長嶋茂雄、古葉竹識、広岡達朗、王貞治、落合博満)、外野手出身者は秋山幸二ただひとり。

 残念ながら人数を見る限り、外野手出身者は劣勢である。その秋山も正確に言えば内野手からの転向組であり、プロパーの外野手として日本一を達成した者は若松勉しかいない。

 では海の向こうは、どうか。ヤンキースでワールドシリーズを7度制したケーシー・ステンゲルがいるが、MLB通算勝利10傑の中に入っている外野手出身監督はひとりもいない。

 日本に話を戻せば、近年、先の定説が覆りつつある。周知のように今季のパ・リーグのクライマックスシリーズ・ファイナルステージは福岡ソフトバンクを率いた秋山と日本ハム・栗山の外野手出身者監督同士の争いとなった。栗山は2年前、外野手出身者として初めて監督就任1年目でリーグ優勝を達成している。

 緒方と真中には、この流れに乗って欲しい。緒方は5年間、コーチとして前任者の野村謙二郎を支え、チームを2年連続Aクラスに導いた実績がある。真中も昨季、2軍監督としてイースタンリーグ優勝を果たした。ともに生え抜きであり、チームの改善すべき点と継続すべき点を知悉している。これが最大の強みか。

<この原稿は14年11月26日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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