第50回 世界へ発信! 「オリンピック・パラリンピック」の愛称

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 昨年9月に2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定して以降、「パラリンピック」という言葉が多く聞かれるようになりました。テレビのニュースで報道する際も、新聞や雑誌に掲載する際も、「2020年東京オリンピック」ではなく、「2020年東京オリンピック・パラリンピック」となっています。「パラリンピック」という言葉を聞き、文字を目にすることで、「パラリンピック」の認知度は確実に高まりました。しかし、「オリンピック・パラリンピック」というのは、言うのも書くのもどうも長い。そこで提案です。「オリンピック・パラリンピック」を総じて呼べる愛称をつくるというのはいかがでしょうか。
(photo/ Shugo Takemi)
 11月25日に日本財団パラリンピック研究会が発表した「国内外一般社会でのパラリンピックに関する認知と関心」の調査結果報告によれば、日本では「パラリンピックを知っている人」は、98.2%にのぼります。つまり、国民のほぼ全員が知っているのです。「パラリンピック」を連呼し、知ってもらうことに注力した時代は終わったと言っても過言ではありません。そうであるならば、例えば「オリンピック」を「五輪」としたように、「オリンピック・パラリンピック」の愛称をつくり、誰でも簡単に言ったり書いたりすることができれば、と思いついたのです。

 そこで、フェイスブックにそのことを書き込んでみました。すると、すぐに多くの人から反応がありました。実際、どんな言葉が提案されたかというと、パラリンピック単独の愛称として「パ輪」「人輪」「羽輪」「和輪」「心輪」「三心」「三進」「パラリン」など、またオリンピックとパラリンピックを合わせてひとつにした愛称としては「八心」「八輪」「心輪」「平輪」などが挙げられました。なんとなく意味がわかるものと説明が必要なものとあります。

 しかし愛称というのは、はじめは「なんだか変な呼び方だな」と思っても、どんどん声に出していくことで、いつの間にか自然な言葉となり、次第に馴染み、さらには愛着を感じるようになるものです。「五輪」もそうだったのではないでしょうか。「五輪」は、スポーツ評論家の故・川本信正さんが読売新聞運動部記者時代に「オリンピック」を称したことから広がりました。当時、オリンピックを「五輪」と書き、「ごりん」と呼ぶことに、違和感を持った人もいたのではないかと思うのです。しかし、今や何の抵抗もなく受け入れられています。言葉とは、人々が使って育てていくものです。ですから、「オリンピック・パラリンピック」の新しい愛称をつくり、言い続けることで、親しみが出てくるように、働きかけていけばいいのです。

 そこで、私自身も愛称を考えてみました。誰でも簡単に言ったり書いたりすることができ、そして説明することなくその文字を見たり音を聞いたりするだけで、「オリンピック・パラリンピック」だとわかる言葉……「オリパラ」です。「そのままではないか」という声が聞こえそうですが、「そのまま」にした理由があります。まず「・」でさえぎらないことで、本当に「オリンピック」と「パラリンピック」がひとつになっているイメージを持たせています。

 さらに大きな理由は、「Oly-Para」とすれば、世界共通の「オリンピック」と「パラリンピック」をひとつにした愛称になることです。また、前述したように、国民の98.2%が「パラリンピック」を知っている、つまり「そのまま」でも通じる社会になってきているということも理由のひとつです。今はもう、「オリパラ」と言えば、自然と「オリンピック・パラリンピック」が脳裡に浮かぶ。その時が来た、と考えたのです。

 さて、皆さんならどんな愛称をつけますか。東京大会で、「オリンピック・パラリンピック」の愛称を世界へと発信し、将来「この名称は2020年の東京大会で初めて使われ、世界へと広がった」と語り継がれる――想像しただけで心が躍ります。そして、それもまたレガシーのひとつとなるはずです。

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>
新潟県出身。障がい者スポーツをスポーツとして捉えるサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。1991年に車いす陸上を観戦したことがきっかけとなり、障がい者スポーツに携わるようになる。現在は国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション活動」を行なっている。その一環として障がい者スポーツ事業を展開。コミュニティサイト「アスリート・ビレッジ」やインターネットライブ中継「モバチュウ」を運営している。2010年3月より障がい者スポーツサイト「挑戦者たち」を開設。障がい者スポーツのスポーツとしての魅力を伝えることを目指している。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ〜パラリンピックを目指すアスリートたち〜』(廣済堂出版)がある。
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