来年以降、Jリーグが実質的な外国資本の企業参入を認める方針だという。手本としているのは、外資の導入をきっかけに爆発的な飛躍を見せたイングランド・プレミアリーグである。「これで日本にもメガ・クラブの誕生か?」と期待する人も少なくないだろう。
 わたし自身、外資の導入は以前から訴え続けてきたことでもあり、実現すれば大いに評価したいと思っている。19年のラグビーW杯、20年の五輪開催が控えたこの時期であれば、日本市場の重要性に目をつける外国企業にとっても見逃せないニュースとなるだろう。

 ただ、その前にやることがあるのではないか。

 Jリーグが発足した93年当時、英国経済は依然として泥沼状態から抜け出せずにいた。とかく日本人が重視したがるGDPでいうならば、日本の4分の1にも満たない規模でしかなかった。つまり、プレミアリーグが外資を導入したのは、自国の経済圏だけでは高騰するチームの運営費を賄いきれないから、という側面が間違いなくあった。

 21世紀に入ると、英国経済はついに暗黒時代を脱し、右肩上がりの成長期に突入した。日本に遠く及ばなかったGDPも、今年度は6割近いところまであがってきた。

 とはいえ、まだ6割なのである。

 発足当時のJリーグが、地域密着をうたい、企業名を徹底して排除する方針をとったのは、あの時代には絶対に必要なことだった。ただ、新しいものを生み出すために打ち出された哲学は、時間の経過とともに、改革を拒む悪しき原理主義の色合いを濃くしていった。

 昨年、わたしが関わっているFC琉球は、Jリーグからの指導という名の命令によって、長くチームを支えてきてくれたオーナーを失った。オーナーの出資額が大きすぎる、もっと他からの資金を調達するようにとしか言っていなかったJリーグ側が、突如として「そもそもオーナーは認めない。その影響力を排除しない限り、J3には参入させない」と言い出したからである。FC琉球側に抗う術はなく、J3参入の代償として経営の背骨をへし折られたチームは、いま、深刻な経営危機に陥りつつある。

 FC琉球に携わるようになってわかったのは、サッカーにお金を出してもいいと考えている企業は、想像していたよりもはるかにある、ただし、Jリーグ側がしがみつくルールが、そうした企業の参入を阻んでいる、ということである。ブラック企業も真っ青な金額でプレーしているJ2、J3の選手たちの人生を考えれば、本末転倒というしかない。

 外資解禁、大いに結構。だが、その前にまず、英国を依然大きく上回っている日本経済のポテンシャルを引き出すのが先である。

<この原稿は14年12月11日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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