高校通算73本塁打の巨人ドラフト1位・岡本和真(奈良・智弁学園)の背番号が「38」に決定した。
 レジェンド長嶋茂雄の「3」と現監督・原辰徳の「8」を組み合わせた数字だ。


 それを受けて岡本は、こう抱負を語った。
「偉大な方の番号が2つとも入っているのはすごい。将来は4番を打てるような選手になりたい」

 巨人が高校生野手をドラフト1位で指名したのは大田泰示(東海大相模)以来、6年ぶりのことだ。球団は将来的には「4番サード」での活躍を期待しているようだ。

 ミスターと若大将の組み合わせもいいが、38と聞いて真っ先に頭に浮かんだのがV9巨人の5番・末次利光である。

 ONの後の打席というのは、落語で言えば真打ちの後で二ツ目が登場するようなものだ。そのプレッシャーたるや想像を絶するものがあったに違いない。

 以前、本人から、こんな話を聞いた。
「王貞治さん、長嶋さん、どちらの後が嫌だったかというと、それは長嶋さんですね。
 長嶋さんの後というのは、打っても打てなくてもスタンドがザワついているんですよ。空振りをしてヘルメットを飛ばす有名な写真があるでしょう。あれだって、後で聞いたら、全部本人の演出だったっていうんだから。
 そういう中で、まさかタイムをかけるわけにもいかないから、こっちはザワザワしている中で打席に向かう。
 そこで打てればいいんだけど、打てなかった時はスタンドから“アーッ”というため息が聞こえてくる。これはきつかったですね」

 さらには、こんな話も。
「一番、みじめだったのは、僕の前の王さんか長嶋さんがホームランを打ってランナーを一掃した後の打席。スタンドの興奮がおさまっていないんです。
 そこで僕がショートゴロかセカンドゴロを打ったとする。もう何も反応がないんです。お客さんから相手にもされていない。これはつらかったですね」

 13年間の現役生活で通算895安打、107本塁打、456打点。成績面で特筆すべきものはないが、逆転サヨナラ満塁ホームランを放ったり、日本シリーズMVP(1971年)に輝くなど、脇役ながらキラリと光る仕事をやってのける勝負師だった。

 誰か岡本に末次の話を聞かせてやって欲しい。「38」の系譜を知れば、より責任感が増してくるだろう。勝負師の遺伝子を受け継いで欲しい。

<この原稿は2014年11月28日号『週刊漫画ゴラク』に掲載された原稿を一部修正したものです>


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