第52回 2015年春、「STANDボランティアアカデミー」スタート!
いよいよ「STANDボランティアアカデミー」がスタートします。まず2月25日を皮切りに、3月4日、同11日の3日間にわけて、全5回のトライアルプログラムを開催いたします。これはボランティアスタッフを養成するということに限ったものではありません。20年東京オリンピック・パラリンピックを見据え、ともに考え、行動し、「盛り上げていこう」「支えていこう」という“スピリット”を広めていくことを理念としたアカデミーです。
(写真:ソチパラリンピックで出会ったボランティアスタッフ。寒い中でも明るい笑顔が印象的だった/photo:Shugo Takemi)
今回、ボランティアアカデミーを設立しようと考えたきっかけは、電話での問い合わせでした。13年9月に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定して以降、事務所には「20年にボランティアをしてみたいのですが、どうしたらなれますか?」「20年までに何か準備しておくことはありますか?」「20年までに何か外国語を勉強しようと思っているのですが……」などという問い合わせをいくつもいただくようになったのです。私はこのことにとても感銘を受けました。「オリンピック・パラリンピックは、こんなふうにして、人々の意欲をかきたて、エネルギーを与えるものなんだ」と、改めてオリンピック・パラリンピックの偉大さ、自国開催の意義を感じたのです。そういうことを感じさせてくれたことに、まずは感謝の気持ちが湧きました。
また、問い合わせをしていただいたことに喜びも感じていました。なぜ問い合わせ先がSTANDだったのかを聞くと、「インターネットで『挑戦者たち』のサイトを見て、“ここなら答えてくれるかもしれない”と思ったので」というような理由が大方を占めていたのです。これは本当に嬉しいことでした。なぜなら、それだけSTANDを信頼していただいているのだと思ったからです。やはり誰でも初めてのところに電話をするというのは、勇気がいるものです。初めて目にしたSTANDという団体に、少しでも疑問を感じれば、電話をするという行動を起こすことはないでしょう。ですからSTANDに電話をしてきていただいたということは、ほんの少しでも信頼をしてくれたという表れであり、これまでSTANDが行なってきた積み重ねが、こうした信頼につながったのかなと感じることができたのです。
STANDでは03年から障がい者スポーツの試合の模様を動画で配信し、10年からは障がい者スポーツ専門サイト「挑戦者たち」を配信してきました。また、全国各地で障がい者スポーツの体験会などのイベントも行なってきました。振り返ると、そのすべてがSTAND側からの発信でした。もちろん、すべてすんなりと受け入れられてきたわけではありません。一方的だと受け取られることもあったでしょう。様々な抵抗や批判もありました。ところが、今回私たちは発信する側ではなく、要望を受けとる側となったのです。この状況に、心から感激したのです。
変わりつつある景色
もうひとつ、問い合わせをいただいたことによって得たものがありました。それは、20年東京オリンピック・パラリンピックに向かって何かをしようという人々が、実際に何を考え、何を欲し、何を望んでいるのかが、生の声でわかるということです。これによって、私たちの役割も次の段階へと進むべき時にきていると感じています。前述した通り、これまでは自らが情報を発信し、呼びかけることを続けてきました。それが逆に人々が私たちに向けてリクエストしていただくということに変わり、私たちはそれに応えるというミッションを帯びたのです。これまでの私たちの社会との関わり方に大きな変化が起きたと受け止めています。
ボランティアアカデミーについては、テレビ番組などでも取り上げていただきました。最も反響が大きかったのはNHKのニュース番組でした。放送後には問い合わせの電話がもう一日中鳴りっぱなしの状態になりました。電話、FAX、メールをあわせて、2日間での問い合わせの件数は150件以上にものぼりました。もちろん、このようなことはSTAND設立以来、一度も経験したことがない、嬉しい意味での非常事態でした。こうしたことからも、私は今、単に“発信すること”だけでなく、 “期待に応えること”という違う景色を観始めていると実感しているのです。
もちろん、もしこれからもっと期待をいただけるとすれば、批判の声も増えるでしょう。それにきちんと耳を傾け、受け止めることが大事だと考えています。以前にもお話しましたが、私が初めて障がい者スポーツの動画を配信した際に言われたのは、「障がい者をさらし者にする気か」という言葉でした。もちろん、当時は怖かったですし、とても悲しい気持ちになりました。しかし、その言葉に背を向けるのではなく、正面から向き合って考え、行動してきました。これからも批判を大切に受け止めていきます。
現在、ボランティアアカデミーの公式サイトでは、トライアルプログラムの参加者を募集しています。応募締切は2月9日、参加費は無料で、定員は50名としています。ぜひ公式サイトをのぞいてみてください。
<伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>
新潟県出身。障がい者スポーツをスポーツとして捉えるサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。1991年に車いす陸上を観戦したことがきっかけとなり、障がい者スポーツに携わるようになる。現在は国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション活動」を行なっている。その一環として障がい者スポーツ事業を展開。コミュニティサイト「アスリート・ビレッジ」やインターネットライブ中継「モバチュウ」を運営している。2010年3月より障がい者スポーツサイト「挑戦者たち」を開設。障がい者スポーツのスポーツとしての魅力を伝えることを目指している。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ〜パラリンピックを目指すアスリートたち〜』(廣済堂出版)がある。
(写真:ソチパラリンピックで出会ったボランティアスタッフ。寒い中でも明るい笑顔が印象的だった/photo:Shugo Takemi)
今回、ボランティアアカデミーを設立しようと考えたきっかけは、電話での問い合わせでした。13年9月に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定して以降、事務所には「20年にボランティアをしてみたいのですが、どうしたらなれますか?」「20年までに何か準備しておくことはありますか?」「20年までに何か外国語を勉強しようと思っているのですが……」などという問い合わせをいくつもいただくようになったのです。私はこのことにとても感銘を受けました。「オリンピック・パラリンピックは、こんなふうにして、人々の意欲をかきたて、エネルギーを与えるものなんだ」と、改めてオリンピック・パラリンピックの偉大さ、自国開催の意義を感じたのです。そういうことを感じさせてくれたことに、まずは感謝の気持ちが湧きました。
また、問い合わせをしていただいたことに喜びも感じていました。なぜ問い合わせ先がSTANDだったのかを聞くと、「インターネットで『挑戦者たち』のサイトを見て、“ここなら答えてくれるかもしれない”と思ったので」というような理由が大方を占めていたのです。これは本当に嬉しいことでした。なぜなら、それだけSTANDを信頼していただいているのだと思ったからです。やはり誰でも初めてのところに電話をするというのは、勇気がいるものです。初めて目にしたSTANDという団体に、少しでも疑問を感じれば、電話をするという行動を起こすことはないでしょう。ですからSTANDに電話をしてきていただいたということは、ほんの少しでも信頼をしてくれたという表れであり、これまでSTANDが行なってきた積み重ねが、こうした信頼につながったのかなと感じることができたのです。
STANDでは03年から障がい者スポーツの試合の模様を動画で配信し、10年からは障がい者スポーツ専門サイト「挑戦者たち」を配信してきました。また、全国各地で障がい者スポーツの体験会などのイベントも行なってきました。振り返ると、そのすべてがSTAND側からの発信でした。もちろん、すべてすんなりと受け入れられてきたわけではありません。一方的だと受け取られることもあったでしょう。様々な抵抗や批判もありました。ところが、今回私たちは発信する側ではなく、要望を受けとる側となったのです。この状況に、心から感激したのです。
変わりつつある景色
もうひとつ、問い合わせをいただいたことによって得たものがありました。それは、20年東京オリンピック・パラリンピックに向かって何かをしようという人々が、実際に何を考え、何を欲し、何を望んでいるのかが、生の声でわかるということです。これによって、私たちの役割も次の段階へと進むべき時にきていると感じています。前述した通り、これまでは自らが情報を発信し、呼びかけることを続けてきました。それが逆に人々が私たちに向けてリクエストしていただくということに変わり、私たちはそれに応えるというミッションを帯びたのです。これまでの私たちの社会との関わり方に大きな変化が起きたと受け止めています。
ボランティアアカデミーについては、テレビ番組などでも取り上げていただきました。最も反響が大きかったのはNHKのニュース番組でした。放送後には問い合わせの電話がもう一日中鳴りっぱなしの状態になりました。電話、FAX、メールをあわせて、2日間での問い合わせの件数は150件以上にものぼりました。もちろん、このようなことはSTAND設立以来、一度も経験したことがない、嬉しい意味での非常事態でした。こうしたことからも、私は今、単に“発信すること”だけでなく、 “期待に応えること”という違う景色を観始めていると実感しているのです。
もちろん、もしこれからもっと期待をいただけるとすれば、批判の声も増えるでしょう。それにきちんと耳を傾け、受け止めることが大事だと考えています。以前にもお話しましたが、私が初めて障がい者スポーツの動画を配信した際に言われたのは、「障がい者をさらし者にする気か」という言葉でした。もちろん、当時は怖かったですし、とても悲しい気持ちになりました。しかし、その言葉に背を向けるのではなく、正面から向き合って考え、行動してきました。これからも批判を大切に受け止めていきます。
現在、ボランティアアカデミーの公式サイトでは、トライアルプログラムの参加者を募集しています。応募締切は2月9日、参加費は無料で、定員は50名としています。ぜひ公式サイトをのぞいてみてください。
<伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>
新潟県出身。障がい者スポーツをスポーツとして捉えるサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。1991年に車いす陸上を観戦したことがきっかけとなり、障がい者スポーツに携わるようになる。現在は国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション活動」を行なっている。その一環として障がい者スポーツ事業を展開。コミュニティサイト「アスリート・ビレッジ」やインターネットライブ中継「モバチュウ」を運営している。2010年3月より障がい者スポーツサイト「挑戦者たち」を開設。障がい者スポーツのスポーツとしての魅力を伝えることを目指している。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ〜パラリンピックを目指すアスリートたち〜』(廣済堂出版)がある。