昨季のプロ野球の公式戦平均試合時間は3時間17分(9回)で、東日本大震災に見舞われ、電力不足が懸念された2011年と比較すると、11分も長い。


 NPBの熊崎勝彦コミッショナーは、キャンプ視察先の宮崎で「3時間以内が目標」と言い、こう続けた。
「どんなスポーツでもきびきびした試合が望まれるのは間違いない。6時に始まり、9時までに終わるのが理想。(野球の試合は)7、8、9回がおもしろいが、それを見ずに帰らなければならないファンもいる。9時までに終われば、地上波の枠にも収まる。ファンの支えなくして野球というスポーツは成り立たない。ファン目線での改革を進めたい」

 かつて“8時半の男”と呼ばれたピッチャーがいた。元巨人の宮田征典である。V9がスタートした1965年には69試合に登板し、20勝5敗を記録した。
 69試合のうち、先発したのは、わずか2試合。あとは全てリリーフだった。まだセーブに関する制度がない時代だ。今の基準を適用すると、22セーブが加わる。今では考えられない、とんでもない記録である。

 さて、彼はなぜ“8時半の男”と呼ばれたのか。当時の平均試合時間は、だいたい2時間強。夜の7時に始まって、9時頃には終わっていた。
 宮田が登板するのは、試合の終盤。その頃、後楽園球場の時計は8時半を指していた。

「プロ野球史上最高の試合」と呼ばれる59年6月25日、後楽園球場で行われた史上初の天覧試合、巨人対阪神戦も試合時間は2時間10分である。
 長嶋茂雄のサヨナラホームランが飛び出したこの試合、スコアはシーソーゲームの末の5対4。2時間もあれば、野球は十分楽しめるのである。

 巨人の若きエース菅野智之は「今季の目標は球数を減らし、地上波の放送時間の尺に収めること」と語っていた。

 人間の集中力は「3時間が限度」とも言われる。きびきびとしたテンポとリズムのいい試合を望みたい。

<この原稿は2015年3月2日号『週刊大衆』に掲載されたものです>


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