いよいよ27日から143試合のペナントレースがスタートします。スバリ、今季の順位予想を発表しましょう。セ・リーグが1位から広島、阪神、東京ヤクルト、巨人、横浜DeNA、中日の順。パ・リーグはオリックスが優勝。以下、福岡ソフトバンク、千葉ロッテ、北海道日本ハム、埼玉西武、東北楽天です。
 セ・リーグは中日を除けば、1〜5位までは混戦になるとみています。その中で広島が24年ぶりの優勝を手にするのではないでしょうか。今季は地元のみならず、全国の野球ファンから“広島に勝ってほしい”という雰囲気を感じます。そういった空気は間違いなくチームを後押しするはずです。

 戦力的にも黒田博樹が加入し、大瀬良大地が成長を遂げ、先発陣は計算が立ちます。4番のブラッド・エルドレッドの故障が不安材料とはいえ、打線がそれなりに機能して得点をとれば、投手力で勝ち星を伸ばしていくとみています。

 阪神も優勝する戦力は十分にあります。大きな補強はできませんでしたが、昨季はケガや不調で戦列を離れていた時期もあった福留孝介や西岡剛が元気です。課題とされていた先発の5番手、6番手も岩本輝や岩崎優といった若手が出てきています。

 カギを握るのは首脳陣の起用法でしょう。春先、彼らをいかに我慢して使い、先発として一本立ちさせるか。1試合、結果が出ないからといって、すぐに他のピッチャーに代えていては伸びるものも伸びません。その意味ではベンチワークが優勝できるかどうかを左右すると言っても過言ではないと思います。

 2年連続最下位のヤクルトは今季の台風の目です。小川泰弘、石川雅規に、FA移籍の成瀬善久、2年目の杉浦稔大と先発のコマが揃ってきました。成瀬はロッテ時代の良かった頃と比べれば勝てないかもしれませんが、10勝10敗でローテーションを守ってくれるだけでも、このチームにとっては大きな戦力です。

 何より、このチームの隠れた良さはセンターラインの安定にあります。ショートに大引啓次を補強し、センター・雄平、セカンド・山田哲人、キャッチャー・中村悠平とメンバーが固定されました。これは守りの上でプラス材料です。もちろん、打線は強力ですから、投打がうまくかみ合って一気に上位を狙える可能性は低くありません。

 一方、巨人をBクラス予想した理由は、このセンターラインの不安定さにあります。メンバーが固まっているのはショートの坂本勇人くらいでしょう。キャッチャーの小林誠司は、まだレギュラーと呼べる段階ではなく、ベテランの相川亮二がマスクをかぶることが多くなりそうです。阿部慎之助のファーストコンバートも、もし彼が故障や不調の際にどうするのか。新たに助っ人を補強するといっても簡単ではありません。

 肝心のピッチャーも若手の台頭が感じられず、これまでチームを背負ってきた内海哲也や杉内俊哉に頼らざるを得ないでしょう。世代交代の狭間でチーム力が低下し、いくら原辰徳監督がやりくりをしても4連覇は厳しいと思われます。

 横浜DeNAはいいチームになってきたものの、競り合いでの弱さが気になります。三上朋也の離脱で守護神をルーキー・山崎康晃に託す状況では、どこまで勝負できるか未知数です。中日は完全にチームをつくりかえる時期に入りました。谷繁元信兼任監督も今季はベンチで指揮をとる機会が増えそうですね。ただ、勝つことを考えれば監督が試合に出るのが一番でしょう。監督が遠慮せず、思うように采配を振るった方が結果は出る気がします。

 パ・リーグはソフトバンク、オリックスの2強と、その他4チームが3位争いを繰り広げる展開になるとみます。その中で今季はオリックスが制すると判断した材料は、投打のバランスの良さです。絶対的エース金子千尋が開幕には間に合わないものの、これはシーズンをトータルで考えてのもの。他にも西勇輝、ブランドン・ディクソン、ブライアン・バリントンと力のある先発が控えています。

 昨季は抑えの平野佳寿が勤続疲労からか、やや不安定な投球も目立っただけに、今季はセットアッパーの佐藤達也の働きも、より重要になるでしょう。昨季とは異なり、トニ・ブランコ、中島裕之、小谷野栄一らを補強した打線はさらにパワーアップしていますから、ある程度、ピッチャーが踏ん張れば打ち勝つ野球も可能です。

 ソフトバンクはリーグ戦だけに限れば昨季の勝率はオリックスを下回ります。今季は交流戦が少なくなり、リーグ内での戦いが増える分、足元をすくわれる可能性もあります。オープン戦は1位と好調でも、シーズンは長丁場です。指導者1年目の工藤公康新監督が、チーム状態が悪くなった時にどう立て直せるか。戦力は連覇を狙うに十分とはいえ、新体制で2年連続優勝できるほど勝負事は甘くないと感じます。

 3位争いを抜け出すのはロッテと予想しました。このチームは大谷智久、益田直也、松永昴大、カルロス・ロサに抑えの西野勇士とブルペンは盤石です。今季は伊東勤監督が契約最終年。例年以上に勝ちにこだわった選手起用が目立つはずです。基本的に伊東監督は投手交代を我慢するタイプですが、やや不安の残る先発陣を早め早めにスイッチするスタイルになると、むしろ強力リリーフ陣が力を発揮する流れに持ち込めるかもしれません。

 日本ハムは先発の柱が二刀流の大谷翔平という点に苦しさを感じます。確かに大谷は昨季、投げて11勝、打っては10本塁打と投打に素晴らしい働きをみせました。ただ、彼ひとりの力では長いペナントレースを勝ち抜けません。大谷以外で2ケタ勝利を計算できる先発が何人出てくるか。大谷と並ぶ柱を確立できないと上位進出は難しいでしょう。

 西武、楽天は課題が共通しています。ピッチャーのコマと、攻撃の迫力不足。西武は開幕投手を予定していた岸孝之の離脱は痛いです。打線も中村剛也、エルネスト・メヒアと2人の本塁打王がいる割に淡泊な部分が目立ちます。楽天も則本昴大以外の先発陣が読めず、攻撃面でも昨季の得点はリーグ最下位でした。大久保博元新監督は機動力を使って状況を打開しようと試みているものの、オープン戦ではまだ成果が見えてきません。新監督の目指す方向にチームが進むには時間がかかるのではないでしょうか。

 当然、開幕すれば予期せぬ新加入選手のブレイクやアクシデントで、この予想とは異なる状況も生まれてきます。実際、どんなペナントレースになっていくのか。僕の意見を参考にしながら、ファンの皆さんも想像して楽しんでもらえればと思っています。


佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。
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