先日、ドイツのキッカー誌に興味深い……というか、かなり衝撃的な記事が掲載されていた。
 テレビ放送権料にまつわる記事である。
 プレミアリーグの放送権料がすさまじい勢いでの高騰を続けていることは、当然のことながらドイツでもよく知られている。だが、記事が明らかにしたのは、ドイツ国内ではダントツの強さと人気を誇り、世界的ビッグクラブとしての名声をほしいままにしているバイエルンの手にする放送権料が、プレミアで最下位のQPRよりはるかに安い、という事実だった。

 バイエルンの5060万ユーロ(約69億円)に対し、QPRは8680万ユーロ(約118億円)。ちなみに、優勝したチェルシーの額は1億3430万ユーロ(約183億円)だった。

 いうまでもないことだが、イギリスとドイツの間には巨大な経済格差など存在せず、また、プレミアとブンデスの間に目のくらむような実力差があるわけでもない。というより、近年の国際舞台での成績を見れば、ブンデスリーガ勢の方がむしろ優勢と言ってもいい。

 にもかかわらず、ブンデスで優勝したバイエルンですら、プレミアから降格したチームより約50億円も少ない額しか手にできていないのである。

 なぜプレミアの放送権料はかくも高騰を続けるのか。理由の一つとして挙げられているのは、東南アジアのプレミア熱である。

 いまのところ、東南アジアからプレミアのスターになる選手は現れていないが、途方もない大金が必要となる胸のスポンサーに名乗りを上げる東南アジアの企業は、枚挙にいとまがない。

 かつての宗主国において最も人気の高いスポーツを自分たちが支えているというカタルシスがあるのか、ファンもまた、本来は縁もゆかりもなかったチームの試合にかじりつくようになった。

 しかも、そんな地域が猛烈な経済発展を遂げつつある。マレーシアなどは東京五輪が行われる年には先進国の仲間入りをする、と宣言しているほどである。

 とはいえ、ブンデスリーガが指をくわえたまま眺めているはずもない。いまのところ、放送権料の差は必ずしも成績に直結してはいないが、だからといって放置をしておけば、一気に力関係でも引き離されてしまう可能性もあるからだ。

 これから先、ブンデスリーガはいかにしてプレミアとの距離を縮めていくのか。彼らのとっていく手段は、今後のJリーグにとっても貴重な資料となるはずである。プレミアとブンデスとの間にある格差は大きいが、いまや、Jと中国との間にはそれ以上の格差が生まれつつあり、それでも、日本は彼らを倒していかなければならないからだ。

 ちなみに、現在のJリーグのクラブが手にしている放送権料は、約2億円だとされている。

<この原稿は15年7月2日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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