後期はここまで9勝6敗2分の首位。暑い中、先発投手がよく頑張っています。前期を優勝できたため、後期は試しながら勝つことが目標です。ポジションチェンジやいろんな起用法を試しながら、個人の能力を伸ばし、チーム力を高めていきたいと考えています。
 投手陣では抑えの藤野剛志を先発に回しました。彼は真っすぐに力があり、気迫で抑えるタイプ。前期は抑えを任せましたが、先発でも十分いけるとみていました。現状は気持ちの強さが空回りして力みにつながっている部分も見受けられますが、長いイニングを投げることに慣れて本来のピッチングをみせてほしいものです。

 代わって抑えにしたのが、佐々木勝一です。彼はボール自体はいいものを持っているのですが、気持ちが弱く、それを出し切れていませんでした。「オマエしかいない」と敢えて最後を託すことで一皮むけてほしいと願っています。失敗することがあっても、それをどう生かすかが大事です。抑えでの成長に期待しています。

 夏場を乗り切る上でのキーマンは内藤久文と藤岡雅俊でしょう。内藤は8日の信濃戦で先発し、8回2失点と好投して初勝利をあげました。彼の持ち味は力のあるストレート。決してコントロールはいい方ではありませんが、うまく緩急を使ってバッターを打ち取っていました。球数も100球を超えて、ひとつの自信になったはずです。これからも先発で使い続けたいと思っています。

 藤岡は先発のみならず、リリーフでもフル回転してもらう予定です。ここまでチームトップタイの7勝(2敗1S)をあげ、防御率は1.97。奪三振はリーグ2位の84個で前期優勝の立役者となりました。さらに上を狙うには、この夏場が勝負です。相手に研究され、暑さで体力が消耗する中、いかにストレートのキレを維持し、ツーシームやフォークボールでゴロを打たせるか。登板を重ねる中でシーズンを通じて結果を残す術を身につけてほしいと感じています。

 打線ではトップバッターの森亮太がいい働きをしています。盗塁はリーグ2位の24個。開幕時点の1番バッターだった新人の木下裕揮からポジションを奪いました。1番は打線を引っ張る上で重要な打順。当初は彼の良さが影を潜めていましたが、シーズンが進むにつれて積極的な走塁が光り始めました。チームに勢いをつける役割として、後期も彼が打線のポイントになるでしょう。

 彼が出塁すれば、外国人のジョニー・セリス、4番・キャッチャーの中溝雄也、打率トップ(.362)の大松陽平とクリーンアップにつながります。ジョニーは石川のネルソン・ペレスが阪神に行ったことも刺激になっているのでしょう。打席での集中力があり、体もキレています。コーチの話では昨年までと比べてノックやランニングに取り組む姿勢もいいそうです。

 彼は選球眼はいいものの、145キロ以上の速球にさしこまれるところが課題です。NPBでは145キロを投げるピッチャーはたくさんいます。BCリーグのピッチャーは打ち返せても、レベルの高い相手にどう対処するか。ここを追求して取り組んでもらいたいと思います。

 前期、信濃とのデッドヒートを制した最大の要因は、チームの総合力でした。個々人の力だけをみれば、信濃の方が上だったでしょう。ずば抜けた存在はいなくても、投手が最少失点でしのぎ、打線がつないで得点を重ねた結果、優勝を勝ち取ることができました。

 もちろん、目指すは前後期制覇です。いろいろとテストをする中で、チーム内の競争を促し、完成度を高めたいと考えています。


吉竹春樹(よしたけ・はるき)>:福井ミラクルエレファンツ監督
1961年1月5日、福岡県生まれ。九州産業高校(現九州産業大付属九州産業高)から、79年ドラフト外で阪神に入団。プロ2年目に投手から野手に転向する。86年オフにトレードで西武に移籍。翌87年にはレフトのレギュラーの座をつかみ、オールスターゲーム初出場を果たす。その後は西武黄金時代を支える外野手のひとりとして活躍。96年限りで引退し、翌年、阪神のコーチに就任した。2011年からは二軍監督を務めた。13年に一軍コーチに復帰すると、14年は一軍野手総合コーチとして日本シリーズ進出に導いた。現役時代の通算成績は1128試合、打率.261、34本塁打、189打点。
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