競泳のジャパンオープンが6月6日、東京辰巳国際水泳場で開幕し、男女10種目の決勝などが行われた。北京五輪代表選手たちにとって調整レースという位置づけだが、男子100メートル平泳ぎ決勝でアテネ五輪金メダルの北島康介(日本コカ・コーラ)が自身の記録を3年ぶりに更新する59秒44の日本記録を出したほか、女子100メートル背泳ぎの中村礼子(東京SC)、女子200メートル自由形の上田春佳(東京SC)、男子200メートルバタフライの松田丈志(ミズノ)、同200メートル自由形の奥村幸大(イトマン)の代表5選手が日本新記録を樹立した。
 日本新を出した5選手はいずれも、注目を集めているスピード社製の水着「レーザーレーサー(LR)」を着用していた。
 今大会では日本水泳連盟と契約しているミズノ、デサント、アシックスの改良水着に加え、世界新記録が相次いでいるスピード社のLRを試すことが可能となり、それぞれの選手が希望する水着を着用しレースに臨んでいる。
 5月に肩を痛め、不調が伝えられていた日本のエース北島は、午前に行われた男子100メートル平泳ぎ予選ではミズノの改良水着で泳ぎ、1分0秒67の好タイムでトップ通過。決勝では、スピード社の水着で臨み、自身が持つ日本記録を3年ぶりに更新する59秒44を出した。
 かねてから水着問題について多く語りたがらなかった北島は、「泳ぐのは僕らだ」というロゴの入ったTシャツを着て入場。レース後の会見では、注目を集めている水着問題について「選手自身よりも水着にばかり注目が集まっていることに、選手もショックを受けている。やはり泳ぐのは選手自身。選手である自分たちに注目してほしいという気持ちを込めて、このTシャツを着た」と語った。その上で、「やはり(契約する)ミズノの水着を着て勝負に出たいという気持ちが強いが、今回、(スピード社の水着を着る)チャンスをもらえて、日本記録を出せた。それに関しては、スピードの水着は素晴らしいと感じている。これだけ記録が良いと、やはり自信になる」と複雑な表情ものぞかせながら、振り返った。
 一方、北島、中村、上田らを指導する東京SCの平井伯昌コーチは、選手たちの記録続出について「正直、びっくりした。世界のレベルが急に上がって、どうやって肩を並べて戦えばいいのかと、僕も悩んだし、同じように悩んだコーチはたくさんいる。これでオリンピックで肩を並べて戦えると思っている」と、スピード社水着の予想を超えた威力に驚きを見せると同時に、北京五輪に向け手ごたえを感じた様子だった。

 男子200メートルバタフライの松田丈志(ミズノ)も、決勝でスピード社水着を着用し、山本貴司がアテネ五輪で銀メダルを獲得した時にマークしたタイムを0秒14縮める1分54秒42の日本新記録を樹立した。予選では、所属するミズノの改良水着を着用。決勝でスピード社水着を着用することについて「葛藤があったし、ギリギリまで迷った」と振り返る。海外でスピード社水着着用により世界記録が連発していることで、「世界のスタンダードになっている水着。日本代表として最善を尽くすために着用を決めた」と胸のうちを語った。世界を見据えているからこその思い切った決断が、好結果へとつながった。

 日本水泳連盟は10日に開かれる常務理事会で、日本水連との契約により、現時点では認めていない日本代表選手のスピード社の水着着用を認めるかを決定する方針だ。
 上野広治五輪競泳監督は「(スピード社水着を着用することに)手応えを感じているが、(契約契約企業に)所属する選手が使用できるかは心配」と語った。上野監督の言葉からも、日本水連がスピード社製水着の着用を容認することはほぼ確実と観られるが、決定を受けてのミズノ、デサント、アシックス3社の対応が注目される。