世間をにぎわせた水着騒動は、日本水泳連盟が世界新を連発したスピード社のレーザーレーサー(LR)の五輪での着用を認めることで一件落着した。競泳代表チームのヘッドコーチを務め、1988年のソウル五輪では男子背泳ぎで鈴木大地選手を金メダルに導いた名伯楽、鈴木陽二コーチに、当HP編集長・二宮清純がニッポン放送「スポーツスピリッツ」内で電話インタビューを行った。本番まで残り50日余り、LRへの対応は? メダル獲得への秘策は? インタビューの一部を紹介しよう。
(写真:男子平泳ぎの北島選手もLRの着用を宣言した)
二宮: 水着問題もようやく決着がつきました。五輪代表のほとんどの選手がスピード社のLRを着用して北京五輪に臨むようです。
鈴木: 記録に直接結びつくのであれば、ぜひLRを使いたい。これは選手・コーチの願いでした。今回、大きくマスコミに取り上げていただいて、結果的に多くのみなさんが水着のオープン化を支持していただいたことはありがたかったですね。やはり我々とメーカーさんの間だけでは解決できないような問題でしたから。みなさんの後押しでスッキリと問題が解決できたのはよかったです。

二宮: ただひとつ心配なのは、日本人選手はヨーロッパ選手に比べLRに対する準備期間が短いこと。この2カ月間でLRを着こなすことができるでしょうか。
鈴木: レース形式で練習したときにLRを着させて、どんどん慣れてもらうしかありませんね。LRは本当に、履かせるのが大変です。足から履いて下から順番にくりあげて着ていく感じですが、教え子の伊藤華英は履くのに20分はかかっています。通常の水着なら3分もいらないくらいです。
 とはいえ、かなり締め付けがキツイので早くから着ておくわけにはいかない。「レースが終わったらすぐ脱ぎたい」。選手たちはそんな感想を漏らしています。レース時間を見ながら、できるだけ直前に着るという流れになるでしょう。

二宮: 通常の水着は例えると乗用車のようなもの。乗りやすさを強調してドライバー席も非常に居心地がよかった。一方、LRはF1みたいに車ありき。ドライバー席は後でつくって、その中に選手を入れ込むというイメージに感じられます。
鈴木: うまい表現ですね。本当にそういう感じです。LRを着ると、選手がものすごくスリムに見えます。

二宮: さて、アテネ五輪で競泳陣は金3つ、銀1つ、銅4つの計8つのメダルを獲得しました。「競泳ニッポン復活」との声もありましたが、北京五輪に向けての手ごたえはいかがでしょうか。
鈴木: 今回もそれ以上の成績を目指したいのはヤマヤマなんですけれど、非常に厳しい戦いになるでしょう。世界のレベルは非常に上がっています。単純にお話すると、アテネ五輪よりも100mで1秒、200mで2秒くらいタイムをアップさせないとメダルには届かない。
 現時点で金メダルがほぼ確実なのは、北島康介くらい。ただし、それも200mだけで100mは予断を許さない。

二宮: 思い出すのは88年ソウル五輪での鈴木大地選手の金メダル。あの時にバサロスタートの距離を決勝で伸ばしました。誰もが予想しなかった賭けに出たことが栄冠につながった。やはり我々には鈴木陽二さんというと勝負師とのイメージがあります。今回もまた、いくつか秘策を練られているのでは?
鈴木: アハハハ。競泳にマジックなんてなかなかないですよ。コツコツやっていくしかありませんね。まずはしっかり鍛えて、作戦が使えるところまで選手の状態を上げること。そして練習の中で、作戦を取り入れて実行に移せるか。これが本番の結果を左右するでしょう。
 水着問題が解決して我々もスッキリしました。競泳ニッポン復活のため、残り2カ月弱、世界と戦える準備を整えたいと思っています。


<詳しいインタビューは6月23日(月)19時よりニッポン放送「スポーツスピリッツ」内で放送されます。どうぞお聞き逃しなく!>