五輪自転車のトラック競技が15日からスタートする。最大の注目は前回のアテネ大会で銀メダルを獲得したチームスプリント。アテネの経験者である長塚智宏を筆頭に、若手の渡邉一成と永井清史を加えた3選手が2大会連続のメダルへ挑む。本番を直前に控え、yahoo!動画の「NO KEIRIN, NO LIFE」の番組内で、長塚、渡邉両選手を招いて、スポーツライターの金子達仁氏とともに二宮清純が対談を行った。その一部を紹介する。
(写真:本番へ意気込む長塚(右)と渡邉の両選手)
二宮: 長塚選手は3度目の五輪ですが、4年に1度、この時期に合わせてピークを持ってきている印象があります。今回も第1走で責任が重いポジションです。4年前と比べて調整はいかがですか?
長塚: もう3回目のオリンピックですから変な緊張感はありません。前回メダルをとって代表を離れていたので、その分、ハンデがあるかなと思っていましたが、逆に心身がリフレッシュされた感覚です。以前よりも練習でいいタイムが出る。あとは本番に向かってしっかり準備していくだけです。

二宮: 北京のバンクは既に試走はされたんですか?
長塚: まだです。直前の練習で走れるので、そこで状態を分析しようかなと思っています。
渡邉: 僕は12月に走りました。ホントにきれいで本場のヨーロッパにも負けないバンクでした。世界一走りやすいかもしれません。

二宮: 長塚選手は今、競泳界で話題の水着「レーザーレーサー(LR)」を着用してレースに臨むと伺いましたが。
長塚: 本当はLRを着たいのですが、サイズが合うものがなくて、同じように締め付け感を得られるものをアンダーウェアにします。
これまで僕がほしいと思っていたアンダーウェアは世の中にありませんでした。締め付け感がものすごく強くて、筋肉を収縮させるもの。筋肉は収縮させると力が出やすくなるんです。競泳で水着の騒動が起こった時、「LRは締め付けがすごく強い」と聞いて、「これだ!」と思いましたね。

二宮: “魔法の水着”の効果は競輪でもありますか?
長塚: これがすごいんです。1周でコンマ2くらいタイムが違いました。

二宮: それは驚きました。コンマ2も伸びたらメダルの色が変わりますよ。
渡邉: 僕もそこまで明らかにタイムが違うんだったら試してみたいんですが、直前に変えるのはどうしても怖いので……。

二宮: 前回は銀メダルでしたから、どうしても周囲は金メダルを期待してしまいます。かなりプレッシャーは大きいでしょう。
長塚: やるからにはメダルを目指していますが、世界はそんなに甘くありません。今の自転車の世界はフランス、イギリスが飛び抜けていて、他の国が3位を争っている状況です。まずは、そこに参加したいですね。
 前回、銀メダルのプレッシャーはありますが、それはそれでしょうがない。ただ、自分の力を100%出すためには緊張しないほうが絶対いいでしょう。僕はよくグーグル・マップで地球を眺めているのですが、こんな小さな島国の茨城県取手市出身の人間が緊張しているかどうかなんて、誰も気にしていないですよ(笑)。むしろ紛争や飢餓で命の危険にさらされている人たちに比べれば、オリンピックの試合に出てスポーツで緊張できるなんて幸せ。そう思うと自然と緊張しなくなる。
渡邉: 僕も調子がいい時は、緊張している自分を他の場所から見ている自分がいます。レースを客観的に客席から手にとるように見ているような感覚。北京でも、この状態で走って3走の永井にバトンを渡したいなと思っています。

二宮: 大舞台では経験のある人にも経験のない人にも、それぞれ強みがあります。もちろん経験は大きな武器にしてほしい。でも経験がなくて怖いもの知らずという面も武器になる。いずれにしても、いかにいい方向に考えるか。3名のチーム・ジャパンには歴史に残る名レースを見せてほしいと期待しています。
長塚: やはりメダルをとるためには、第一走者の自分がトップタイムで回ってくることが一番です。スタートダッシュで世界一を狙います。
渡邉: 僕も長塚さんのスピードをしっかり受け継いで、トップ3には入る走りをみせます。プレッシャーや責任は経験のある長塚さんに丸投げするつもりです。とにかく僕は自分の力を最大限発揮して日本チームがメダルをとれるように、今までの人生をかけて走ります。

>>対談の詳しい内容はyahoo!動画の「NO KEIRIN, NO LIFE」の番組内
北京オリンピック 日本代表応援プロジェクト3(対談前編)
北京オリンピック 日本代表応援プロジェクト4(対談後編)
をご覧ください。

(この対談は番組内の内容を再構成したものです)