16日、全階級金メダル独占が期待される女子レスリングが開幕した。先頭を切ってメダルに挑んだのは48キロ級の伊調千春と55キロ級の吉田沙保里。伊調は惜しくも銀メダルに終わったが、吉田は圧倒的な強さで決勝を制し、見事金メダルを獲得した。
 連覇を目指す吉田は18歳、地元中国の新鋭と対戦した。最初のピリオドは相手がタックルに入ったところを力で場外に押し出し1ポイントを奪うと、そのままリードを保ち、先取する。そして第2ピリオドでは、相手が出たところを片足タックルで相手を倒し、そのままフォールドへ。吉田らしい大技を見せての完勝となった。
 表彰式ではうっすらと涙を浮かべながらも、満面の笑顔を見せた吉田。半年前、連勝がストップした悔しさを五輪の舞台で見事に晴らした。

■吉田沙保里選手のコメント
「信じられない感じ。オリンピックでの連覇を目指していたが、1月に連勝がストップしたので半年間、本当に苦しかったし、今日も不安で仕方なかったでも、。最後の力を出し切って優勝できてよかった。アテネのときの金メダルとは重みは全然違う。もっといろいろなものが詰まっている。1月に負けたときは、この五輪で借りを返そうと思っていた。伊調千春選手や同じ三重県出身で連覇がかかっていたのに出場できない野口みずきさんの分も金メダルを獲ろうと思っていた。4年後はすぐにくると思うが、ロンドンで金メダルを目指して3連覇を狙いたい」

 一方、アテネの雪辱を果たそうと、決勝に臨んだ伊調千は、開始早々に片足タックルをとられ、場外ポイントで先制されてしまう。さらにタックルでポイントを取られ最初のピリオドを0−4で落とした。後がなくなった伊調千は、第2ピリオドも序盤にタックルにいったところを逆にバックをとられた。そのままアンクルフォールドをとられ、2ポイントを奪われた。窮地に立たされた伊調千はなんとか中に入ってタックルを試みようとするも、最後まで決定的なポイントを奪うことができず、またも決勝で夢が破れた。

 金メダルしか見てこなかった伊調千。試合後は、口を真一文字にして悔しさをにじませていた。しかし、表彰台では歓声にこたえて笑顔となった。そして手にした銀メダルを何度も高々と掲げ、誇らしげな表情を見せた伊調千。その姿からは、満足感がうかがえた。

■伊調千春選手のコメント
「アテネからの4年、本当に馨と一緒に歩んできた道というのは、最高の道だった。その道を歩んでこれたことが、私の誇り。だから、このメダルも金メダルだと思う。今まで頑張ってこれた自分に感謝したい。試合が終わればメダルに色がついて差がついてしまうが、これまで歩んできたレスリング人生は最高だった。今まで応援してくださった方々のおかげで最高の道を歩んでこれたと思う」