12日、プロボクシングのトリプル世界タイトルマッチ(15日、パシフィコ横浜)の調印式・記者会見が都内ホテルで行なわれ、WBA世界ミニマム級チャンピオンの新井田豊(横浜光)ら6選手が出席し、試合への意気込みを語った。15日のパシフィコ横浜のリングは、新井田の8度目の防衛戦、西岡利晃(帝拳)の4年半ぶりの世界挑戦、WBA世界スーパーフライ級王座を懸けた名城信男(六島)対河野公平(ワタナベ)の日本人対決と見どころの多い1日となりそうだ。
(写真:WBA世界ミニマム級王者新井田(左)と挑戦者ゴンサレス(右))
 トリプル世界戦のメーンは現役日本人王者最多、8度目の防衛を目指す新井田が同級1位のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)の挑戦を受ける。王者新井田の最大の武器はキャリアの豊富さだ。世界戦を10度も経験している点は21歳の若い挑戦者にとって脅威だろう。10月に30歳になる新井田が「20代の集大成」と意気込むリングは、安定王者としての真価が問われる一戦になる。「ありえないぐらいのスピードで圧倒したい」の言葉通り、最強挑戦者を撃破できるか。

 新井田に挑むゴンサレスは「ニカラグアの倒し屋」の異名を持つ。KO率9割(20勝18KO)という軽量級では別格の戦績が、ハードパンチャーぶりを物語る。しかし、そんなゴンサレスも世界タイトルマッチは初挑戦。敵地の大舞台で自慢の剛腕ぶりを発揮できるかが試合の行方を左右しそうだ。「勝つために日本に来た。最終的には自分の手が上がっているだろう」とゴンサレスはV7王者新井田のベルト奪取に自信をみせた。

 同じく見逃せないのがWBC世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦で激突する同級2位西岡対同級3位ナパーポン・ギャティサックチョークチャイ(タイ)の一戦だ。西岡は前回の世界挑戦から4年半を経て、5度目のチャンスに挑む。前挑戦は減量に苦しめられたが、今回は1階級上げて万全の体調を維持している。タイトルマッチが決定してから「勝利以外ありえない」と繰り返してきた西岡。天才と呼ばれた32歳のベテランサウスポーが“獲って当然”とばかりに世界王座を狙う。
(写真:“ウィラポン2世”ナパーポン(左)と5度目世界戦に挑む西岡(右))

 対するナパーポンは「ウィラポン2世」と呼ばれる好戦的なボクサーファイターだ。ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)とは西岡を世界戦で4度退けた選手で、14度の防衛に成功した名王者である。現在は現役を引退してナパーポンのトレーナーについたこともあり、西岡の攻略法を愛弟子に伝授したようだ。また、今回はナパーポンにとっても4年10カ月ぶりと久々の世界挑戦であり、西岡同様にチャンピオンベルトへの渇望は凄まじいものがあるだろう。ナパーポンは西岡の“勝利宣言”を受けて、「彼はがっかりするだろう」と発言し、師匠に続く“西岡越え”の意を強くした。

 3つ目の世界戦は日本人対決だ。WBA世界スーパーフライ級王座決定戦に、同級1位名城と同級3位河野が臨む。名城は2007年5月にアレクサンデル・ムニョス(ベネズエラ)に敗れて失った同タイトル返り咲きを狙う。7月には内藤大助(宮田)、坂田健史(協栄)、清水智信(金子)、久高寛之(仲里ATSUMIジム)の4選手と立て続けにスパーをこなし、世界レベルの攻防を体に染み込ませた。「キツイ試合になることは覚悟している。どんな状況になっても対応できるように準備してきた」とチャンピオン経験者らしく冷静に河野戦への決意を語った。
(写真:激しい打ち合いが期待される河野(左)と名城(右))

 世界初挑戦となる河野のボクシングは単純明快だ。圧倒的な手数とスタミナを武器に前に出続ける突貫戦法。しかも河野にはダウンした経験がない。エネルギッシュな前進と打たれ強さを併せ持った上昇中のファイターである。世界戦を3日後に控えた河野は「勝って人生を変えたい」と世界王者に対する強い憧れを口にした。