MLB2008シーズンのラストを締めくくるワールドシリーズが23日からスタートする。アメリカンリーグを制したのは、前年地区最下位から一転、悲願の初優勝を果たしたタンパベイ・レイズ。ナショナルリーグを制したのは28年ぶりの世界一を目指すフィラデルフィア・フィリーズ。創設11年目の新興球団と、100年を超える歴史を持つ伝統球団の激突を占ってみたい。
 なんといっても両軍の特徴は、その強力打線だ。レイズは主砲エバン・ロンゴリアがポストシーズン6本塁打、2番のB.Jアップトンが同7本塁打と絶好調。リーグチャンピオンシップでは7試合で16本塁打が飛び出し、従来の記録を塗り替えた。レギュラーシーズンのチーム打率はリーグワースト2位と決して芳しいものではなかったが、大舞台の中で若い選手たちが一皮向けた感がある。

 その打線をトップバッターとして牽引するのが移籍2年目の岩村明憲だ。ポストシーズンは打率.277ながら、出塁率は.358と高い。またレギュラーシーズンでの併殺打はわずかに2つ。チャンスで何とかしようとする姿勢が伺える。ボール球に手を出さず、チームバッティングに徹する岩村は、レイズの各バッターの手本となっている。

 対するフィリーズはレギュラーシーズン214本塁打(リーグ1位)の破壊力が魅力。3番チェイス・アットリー、4番ライアン・ハワード、5番パット・バレルとシーズン30本塁打以上の強打者が並んだ打線は脅威だ。ディビジョン・シリーズではハワードが波に乗れなかったものの、リーグチャンピオンシップでは復調。直近のチャンピオンシップでの打率はクリーンアップ全員が3割を超えている。

 15年ぶりのリーグ制覇とあって、チームにワールドシリーズ経験者は少ない。その中で自身3度目のシリーズを迎えるのが田口壮だ。カージナルス時代は2度、シリーズに出場し、世界一にも輝いた。このポストシーズンでは、まだヒットが1本も出ていないが、大舞台を知っている強みがある。出番さえあれば、いぶし銀の働きを見せてくれるに違いない。

 投手陣をみると、フィリーズは今季16勝をあげた45歳のジェイミー・モイヤー、14勝をマークしたコール・ハメルズの両左腕が軸。リードを奪えば、最後は絶対的守護神のブラッド・リッジが控える。初戦の先発はポストシーズン3勝と好調のハメルズが濃厚だ。

 一方、レイズは初戦の先発が予想される左腕のスコット・カズミアー、14勝をあげたジェームス・シールズ、リーグチャンピオンシップ第7戦で好投したマット・ガーザなど先発のコマは豊富だ。しかし、ブルペンに絶対的な存在がいない。ジョー・マドン監督の継投策がポイントとなるだろう。

 レギュラシーズンのチーム防御率はレイズ3.82、フィリーズ3.89と両リーグでもトップクラス。しかし、1年間の激闘で投手陣の疲労はピークに達している。互いの打線に勢いがあるだけに、ひとたび火がつけば、両軍の激しい打撃戦がみられそうだ。 

 過去の交流戦での対戦成績は創設以来、弱小球団だったレイズが意外なことに10勝5敗とリード。ただ、ここ2年、両チームの対戦はない。このところワールドシリーズは4年間で3回が4勝0敗、1回が4勝1敗と一方的な展開が続いている。どちらが栄冠を手にするにせよ、新鮮な顔合わせが1試合でも長く見られるシリーズを期待したい。