23日、WBA世界フェザー級タイトルマッチ(24日、後楽園ホール)の調印式と記者会見が都内で行われ、王者クリス・ジョン(インドネシア)、挑戦者の同級4位榎洋之(角海老宝石)が出席した。笑顔で現れたチャンピオンとは対照的に、榎は眼光鋭く、「全力でぶつかるだけです」と闘志をむき出しにした。
(写真:V9王者ジョン(左)と挑戦者榎(右))
 榎は、「日本一の左」とも称されるノーモーションのジャブで勝利を積み重ねてきた右ボクサーファイターだ。日本王座、OPBF東洋太平洋王座と着実にステップアップを果たし、世界挑戦の機会を虎視眈々と狙っていた。
 ジムの同僚である小堀佑介が5月にWBA世界ライト級王座を奪取したことは刺激になった。「激しくなりすぎるから」と封印していた小堀とのスパーで実戦感覚を磨いた。
 悲願の世界初挑戦に榎は、「ボクシングを15年間やってきて、こういう舞台に立てることがすごく楽しみ。偉大なチャンピオンと早く戦いたい」と興奮気味に語った。

 迎え撃つジョンは在位5年、防衛回数「9」を数える安定王者だ。一発はないが、正確なジャブと距離感に優れた華麗なボクシングを展開する。41戦無敗のキャリアは驚異的だ。10度目の防衛戦を前に、「インドネシアのために一生懸命戦う」とリラックスした様子で意気込みを語った。

 両者ともジャブに絶対の自信を持つ。特に、王者は上体が柔らかく、フットワークも軽い。連打の回転力もあり、近距離での迫力も挑戦者を上回る。キャリアを見比べてもジョンの優勢は揺るがない。

 しかし、榎がつけ入る隙はある。ジョンは7月に予定されていたタイトル戦が直前にキャンセルとなり、今回が8カ月ぶりの試合だ。実戦感覚の面で不安は否めない。さらに、会場は敵地・日本。10年間待たされ続けた榎ファンの声援は挑戦者を後押しするはずだ。榎は左の打ち合いに持ち込み、有効打を拾いたい。手堅いスタイルでチャンピオンの焦りを誘えば、戴冠の可能性は広がるだろう。榎が勝てば、日本の現役世界王者は06年12月以来となる史上最多タイの7人となる。

 ともに生年月日は1979年9月14日。しかも98年のプロデビュー以来負けなし。注目の“無敗対決”のゴングは明日、後楽園ホールで打ち鳴らされる。