24日、WBA世界フェザー級タイトルマッチが後楽園ホールで開催され、同級4位の榎洋之(角海老宝石)はV9王者クリス・ジョン(インドネシア)に挑んだが、判定3−0で敗れた。試合後、榎は「(王者に)なりたい気持ちが足りなかった。応援してくれた人に申し訳ないです」と悔しさをにじませた。
(写真:安定王者と真っ向から打ち合った榎)
 V9王者の壁は厚かった――。

 榎は4月の粟生隆寛(帝拳)戦で引き分けた時、「負けないボクシングでは世界は獲れない」と気づいた。そして、「KOで勝てなければボクシングをやめる」と覚悟を決めて臨んだ世界初挑戦だった。

 序盤から前に出た榎。距離を潰して積極的に右フックを放つ。2ラウンドには、そのフックの連打で王者をぐらつかせ、後楽園ホールに集結したファンを沸かせた。対する王者はキレのある連打で応戦。4ラウンドには軽やかなステップを刻み、上下左右に打ち分ける巧さもみせた。中盤に入ると、王者が試合の主導権を握り、榎の左目はふさがった。

 前に出る榎、連打で応戦するジョン。この構図は試合終了まで続いた。ジャブ、手数、フットワーク、全ての面で勝る王者に対して、榎は唯一分があると思われる“執念”で突進を続ける。しかし、有効打を浴びせても、王者の反撃が連打を許さない。ジョンは完全アウェーのなか、流れを相手に渡さない卓越した試合運びをみせた。さらに、セコンドの指示に頷き、両手をポンッと合わせて気合いを入れなおす冷静さも兼ね備えていた。

“突貫戦法”の挑戦者をさばくのではなく、打ち合ってねじ伏せた王者。ジャッジの判定は117−111、118−110が2者と、ポイント差がついたことも納得の強さだった。

 とはいえ、榎はこれまでの「負けないボクシング」から「勝つボクシング」へと意識の変化を体現してみせた。この初黒星の屈辱を肥やしに、世界戦のリングに再び立ってほしいものだ。

 榎洋之選手のコメント
「王者はそこらへんのボクサーじゃなかった。巧いし、強いし、冷静。ジャブを磨いたつもりだが、王者の方が巧かった。(中盤以降)左目が腫れて見えなかった。でもおもしろかった。あれだけパンチをもらったのは初めてだけど、ヘタクソなりに一生懸命やりました。今後のことはゆっくり休んでから考えたい」

 木内勲トレーナーのコメント
「俺の教え方が悪かった。自分に責任があります。情けないし、榎に申し訳ない。点差ほど実力は離れていないと思うが、王者は思ったよりタフだった」