28日、都内で北京オリンピック男子マラソン金メダリスト、サムエル・ワンジル(Team SAM)と明治製菓ザバスとの所属契約発表会見が行われた。多くの取材陣が詰めかけた会場でワンジルは「ザバスを飲んで、世界記録を目指したい。応援よろしくお願いします」と流暢な日本語で挨拶し、さらなる飛躍を誓った。
(写真右:笑顔で撮影に応じるワンジル選手)
 ワンジルはケニア・ニャフルル出身の22歳。2002年に仙台育英高校に入学し、全国高校駅伝に1年生から出場。3年連続で区間賞に輝いている。06年にはハーフマラソン世界記録を樹立。翌07年には自身の持つハーフマラソン世界記録をさらに20秒更新する58分33秒を記録している。同年12月の福岡国際マラソンで初めてフルマラソンに挑戦し、2時間6分39秒で初優勝。08年2月のロンドンマラソンでは世界歴代5位の記録で2位に入る。これらの実績でマラソンケニア代表として北京オリンピックに出場し、猛暑の中で行われたレースで五輪新記録となる2時間6分32秒で金メダルを獲得する。現在はケニアと日本に拠点を置き、トレーニングを続けている。

 以前から愛飲していたというザバスと所属契約を結んだ経緯を、ワンジルをサポートしているTeam SAM渕脇勝志コーチは「社会人2年目の06年は故障がちのシーズンでした。その時に二人で相談した結果、次のステージに上がるためには体の中から変えていかなければいけないという結論に達しました。07年春に明治製菓に栄養指導をお願いし、有意義な時間を過ごさせてもらいました。食事や栄養管理に重点を置いた甲斐もあって、故障もなく1年を過ごすことができました。オリンピックでの結果も、ザバスの指導があったからこそ。今後も様々な面でサポートをお願いすることになると思います」と話した。

 ワンジルとザバスの所属契約は今月1日から2012年ロンドン五輪までとなっている(1年毎の契約更新)。その間、ザバスはワンジルに対し総合的な栄養サポートを行い、ワンジルはザバスの広告活動に参加する。ワンジルがレースに臨む際には、ザバスのロゴが入ったユニフォームを着用することになる。

 ワンジルの今後だが、年内はレースに出場せず市民マラソンのゲストとしてファンランなどに参加する予定だ。調整が順調にいけば、09年2月と3月に行われる海外でのハーフマラソンをはさみ、4月にロンドンマラソンに出場する。国内では夏の札幌ハーフマラソンに参加予定で、その後、来年の最大目標となるベルリンマラソンが控えている。世界屈指の高速レースが展開するフラットなコースでは、女子マラソン日本記録も誕生している(05年、野口みずき)。男子でも世界歴代3位までがこのレースで生まれているだけに、ワンジルもベルリンに照準を合わせ、世界新記録を狙いたいとしている。

 現在の世界記録はハイレ・ゲブラシラシエ(エチオピア)の持つ2時間3分59秒。しかしワンジルは「まず2時間3分台を狙いたい。個人的には2時間2分台までタイムを縮めることは可能だと思う」と強気のコメントをした。

 日本での拠点を福岡に置いているワンジルはうなぎが大好物だという。辛い練習の後にはうなぎが食べたくなることもあるそうだ。日本育ちのケニア人王者は、うなぎと同様にザバスという力強いパワーの源を味方をつけ、世界記録樹立とオリンピック連覇という大きな2つの目標に向けて動き出した。