東京ヤクルトスワローズの新入団発表が10日、東京都内で行われ、育成2巡目指名を受けた香川オリーブガイナーズの塚本浩二投手も会見に臨んだ。約500人のファンを前に背番号「113」のユニホームを初披露し、「育成なので、まずは支配下登録になって1軍登板を目指す」と力強く宣言した。塚本は同日、支度金300万円、年俸350万円で正式契約を結んだ。(金額は推定)

(写真:質疑応答でマスコットのつば九郎にちょっかいを出され、苦笑いの塚本)
「平日の昼間なのに、こんなにたくさんの人に来てもらって、すごいところにきてしまったなという印象です」
 それが詰めかけたスワローズファンを前に発した第一声だった。「会の規模も、メディアの数もアイランドリーグとは違う。これがNPBなんだと思いました」。とはいえ、ファンの心はしっかり掴んだ。「プライベートの時間は何をしていますか」との質問に若い選手たちが押しなべて「ゲームをします」「寝ています」と回答する中、塚本の答えは「散歩」。「おじいちゃんじゃん(笑)」。ファンから突っ込まれた。

 プロは何事も注目を集めることが大切だ。神宮球場のマウンドに上がれば、この何十倍もの観客が、そのプレーを注視することになる。「気が引き締まりましたね」。塚本はあらためて自らが足を踏み入れる場所の大きさを噛み締めているようだった。
(写真:ファンをバックに記念撮影する新入団選手たち)

 他のアイランドリーガー同様、決してエリート街道を歩んできたわけではない。神戸大からワイテックに入社し、フォームを現在のアンダースローに変更した。アイランドリーグの門を叩いて3年目、今季は自己最高の14勝3敗1S、防御率1.36の好成績を残し、鳥原公二チーフスカウトに「どうしてもヤクルトに欲しい投手」と言わしめた。「もうすぐ僕は27歳になる。続けていれば夢は叶うことは示せたのでは。だからリーグの選手たちは頑張ってほしい」。晴れの舞台で後輩たちへエールを送った。

「順位は一番下ですから。一番しっかり練習をやらないといけない。まずは同期に負けないようにしたい」
 今季のヤクルトは1巡目の赤川克紀(宮崎商高)から4巡目まではすべて高校生を指名。若くて活きのいい投手がそろっている。彼らになくて塚本にあるもの。それは「経験」だ。「セールスポイントは試合を多くやっていること。その経験を生かしたい」。年末までは地元の大阪には戻らず、香川で自主トレに励む予定だ。

 背番号「113」はヤクルトOBでもある加藤博人コーチの現役時代の番号「13」にあやかった。残念ながら会見に来られなかった両親の代わりに、“保護者”として晴れ姿を見守った加藤コーチは「思ったよりユニホームが似合っていた。ユニホームが似合うことは活躍の第一条件」と愛弟子に期待を寄せた。
(写真:「これじゃ僕が監督みたい(笑)」と喜ぶ加藤コーチと塚本)

 5位に沈んだものの、今季のヤクルトは若手の積極起用が目立った。高田繁監督も「投手は村中(恭平)、由規、野手も川島(慶三)、飯原(誉士)と活きのいい選手が出てきた」とシーズンを振り返る。「力があって、体力の心配がなければどんどん1軍で使いたい。使わないとうまくならないと思っている」。来シーズンも若い燕たちを育てて上位3強に挑む構えだ。

 育成選手とはいえ、投手の頭数はいくらいてもいい。内容と結果さえ伴えば、背番号はすぐにでも2ケタに変わるはずだ。目標とするピッチャーはもちろん千葉ロッテの渡辺俊介。四国からやってきたサブマリンは東京の海で静かに浮上を開始しようとしている。


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