WBC世界フライ級タイトルマッチ(23日、両国国技館)の調印式と記者会見が22日、都内で行われ、チャンピオンの内藤大助(宮田)と挑戦者の同級13位・山口真吾(渡嘉敷)が出席した。4度目の防衛と日本人最年長防衛記録の更新がかかる内藤は「ファンを裏切るような練習はしていない」と順調な調整ぶりをアピール。「ファンあってのプロボクシング。ファンの方が喜ぶような、いい殴り合いをしたい」と意気込みを語った。
(写真:制限体重ピッタリで計量をパスし、笑顔の内藤)
 今回の防衛戦は当初、亀田興毅(亀田)と対戦するプランもあったが、両者の交渉が決裂。代わりに山口との試合が組まれた。30戦23勝(9KO)と経験豊富な相手とはいえ、本来はライトフライ級の選手だ。内藤有利の声は強い。

「有利と言われているから、その通りの試合をしよう」
 これが内藤陣営のテーマだ。前回の清水智信(金子)戦も圧倒的優位が伝えられながら、9Rまでポイントでリードを許す苦戦を強いられた。「向こうがうまかったのもあったが、誤算もあった。有利と言われてプレッシャーに負けた」。10回に逆転KOで防衛を果たしたが、「いい勉強になった」と振り返る。

 今回は過酷なトレーニングを積む一方で、しっかりと休養もとり、追い込み過ぎないように工夫した。挑戦者対策については「相手次第。どんなことがあっても対応してやるぞという気持ち。考え方はまとまっている」と王者らしい余裕もみせた。「緊張はしている。でも楽しもう、思う存分楽しもうと思っている」。自分に言い聞かせるように楽しむというフレーズを何度も繰り返した。同じ徹は2度と踏まない決意だ。

 対する山口は3度目の世界挑戦となる。今年3月のWBA世界フライ級タイトルマッチ、坂田健史戦以来。1回にダウンを奪ったものの、以後は決定打が出せず、判定負けを喫した。「(内藤選手は坂田選手より)かみ合うと思っている。相手もやりやすいかもしれないが、自分としてはやりやすいと思っている」。本人曰く「今までにない」という最高のコンディションでベルトを狙う。

 持ち味はスピードと回転だ。陣営の渡嘉敷勝男会長は「目の離せない試合、7Rまでに終わる試合になる」と、短時間で決めにいくことを示唆した。「(チャンピオンは)見ていてスキがある。ガードが下がることがあるので、そこにうまくカウンターを当てられれば」。山口の口からも具体的な攻略法が飛び出した。渡嘉敷会長は「(内藤選手は)大好きなキャラクターで申し訳ないが、大事なベルトをとらなきゃいけない」と教え子の“4度目の正直”に大きな期待を寄せた。

 リーチでは王者が10センチ上回り、身長差も7センチある。勝負のポイントは挑戦者が語った一言に集約されるだろう。「体格は向こうが大きいが、小回りがきくのはこっち」。2008年のボクシング界を牽引してきた王者は、2009年もスターとして輝き続けるのか。クリスマスの鐘ならぬゴングは23日夜に打ち鳴らされる。