プロボクシングのWBC世界フライ級タイトルマッチが23日、東京・両国国技館で行われ、チャンピオンの内藤大助(宮田)が挑戦者で同級13位の山口真吾(渡嘉敷)を11RTKOで下し、4度目の防衛に成功した。これにより、34歳3カ月の内藤は自身のもつ国内最年長防衛記録を更新した。
(写真:11R、内藤の左が山口の顔面をとらえる)
 前試合の反省からか、1Rから積極的に攻めた内藤は、4ラウンドごとに公開された採点でも完全にリードを奪い、有利に試合を進めた。

 一方、3度目のタイトル挑戦となった山口も、全く下がることなく自ら激しい打ち合いを挑む。ボディーを中心に重いパンチを繰り出し、チャンピオンにひけをとらない“殴り合い”を演じた。

 勝負が決まったのは11R。内藤の連打に山口がダウン。すぐさま立ち上がり、再びチャンピオンに突進していくも、レフリーに止められ、3度目の挑戦も失敗に終わった。

 4度目の防衛に成功し、チャンピオンベルトを再び腰に巻きつけた内藤は、次のように語った。
「相変わらず、オレはダメ。勝ったからいいけど、反省点はいっぱいあります。山口選手には試合をさせてもらえなかった。戦っている途中もお客さんの声が聞こえて、勇気をもらった。皆さんの応援があるから練習も頑張れる。ありがとうございます。とりあえずゆっくり休みます」

<内藤、勝って反省「守りに入った」>

「才能のせいにしちゃいけないが、オレはここまでの選手なのか」
「スパーリングチャンピオンって言葉があるけど、それはオレだ」
 打ち合いを制してベルトを守った内藤だが、その言葉には勝利の喜びは感じられなかった。
(写真:勝ったものの納得がいかない表情の内藤)

 前回の清水智信(金子)戦では立ち上がりからポイントでリードを許し、苦戦した。「前半で(ポイントを)とらせるのは良くない」。1Rから積極的に出て、右のフックを山口の顔面に入れた。「1、2Rを見て、山口選手はあまり動けていないと感じた。3Rからはもっと打ち合っていいと指示した」(野木丈司トレーナー)。距離を縮めたことで、挑戦者のボディブローをくらう場面もあったものの、内藤も的確にパンチを当て主導権を渡さなかった。4Rを終えてのスコアは3−0(39−37、39−37、40−36)。チャンピオン優勢で試合は進んだ。

 中盤も相手を上回るリーチを生かして、手数で圧倒。7Rには山口の足が止まり始めた。だが、そこから決着までに時間がかかった。「後半は見栄えが悪かった。出るべきかポイントアウトすべきか迷っていた」。8Rを終えてのスコアも3−0(78−74、79−74、79−73)。後がない挑戦者の捨て身の攻めに前へ出られなかった。「後半バテない練習をしてきたのにアップアップした」。パンチをもらって、何度もひざが折れかけながら耐えた山口の粘りも光った。

 ようやく挑戦者をマットに沈めたのは11R。左のフックが決まり、ぐらついたところに振り下ろした右ストレートでダウンを奪った。「もっといい攻めができるはず。センスがない。スパーリングでできたような攻めができれば、もっと早くKOできた」。前回の反省も踏まえ、今回は「有利だと言われている通りの試合をする」ことがテーマだった。結果だけをみればポイントも終始、リードしての圧勝。だが、格下とも言える相手に対して一気に勝負をつけられなかった点に王者は納得がいかない様子だった。

 次の防衛戦は来春の予定。WBCの指示で同級1位選手との試合となる。試合を見守った宮田博行会長は「今の内藤は強い」と次戦にも自信をみせた。野木トレーナーも「肉体的には36歳まで伸びる。38歳までは(ピークを)維持できる」と太鼓判を押す。「自分の理想としてはがっちり勝つこと」。勝って、なお反省。これができるところが、34歳の王者の強さを支えている。