13日から東京体育館で行われている卓球全日本選手権は16日、男女ともにシード選手が登場する4回戦が行われた。女子では5度目の全日本制覇を狙う平野早矢香(ミキハウス)や初優勝を狙う福原愛(ANA)が順当勝ち、男子では日本ランキング1位で連覇を目指す水谷隼(明治大学)は苦しみながらも初戦を突破した。また、今大会で引退を表明している松下浩二(グランプリ大阪)も田中雄仁(東京アート)を4−1で下し5回戦に進出した。
(写真:初戦を突破した松下選手)
 松下は92年バルセロナから04年アテネまで4大会連続でオリンピックに出場、アトランタ大会ではダブルスで5位に入賞している。全日本選手権ではシングルス4回、ダブルス7回を誇る日本卓球史上最高のカットマンだ。93年には日本初のプロ卓球プレーヤーとなった。98年からはドイツ・ブンデスリーガの名門「ボルシア・デュッセルドルフ」へ移籍し中心選手として活躍し、99−00シーズンにはヨーロッパチャンピオンの座に就いた。07年にはチーム・マツシタを設立し、水谷や岸川聖也(スヴェンソン)といったオリンピック選手のマネージメントや卓球の普及活動を行っている。

 現役最後の舞台として選んだ全日本選手権の初戦は第1ゲームこそ相手のパワーショットに押され9−11で落としたが、第2ゲームからは得意のバックハンドのカットからペースを掴み11−6でモノにする。41歳という年齢だけに体力面での衰えは隠せないが、世界と戦ったテクニックは今も健在。要所で絶妙なショットを見せ、相手を翻弄した。第2ゲームからは危なげなく4ゲームを連取し初戦を突破した。

 試合後、松下は満員の観客の声援に応え客席に手を振った。「1ゲーム目をとられた時はまずいなと思いましたが、2ゲーム目以降は戦い方がまとまりました。初戦とはいえ、僕にとっては一戦ずつが決勝戦みたいなもの。今日は目の前の試合だけに集中することを考えていました。北海道から沖縄まで、友人がたくさん応援に来てくれたので、その声援に応えられてよかったです。自分が一生懸命やっている姿を後輩たちに見せることが大切だと思っています」。最後の舞台という悲壮感は微塵もなく、落ち着いた口調で自らの試合を振り返った。

「明日3試合ありますが準決勝までいけば水谷君とやることになる。こういう舞台で対戦して、どれだけ成長したのかを感じたいですね」と松下が語れば、「(松下との通算成績)0勝1敗のまま終わるのは嫌なので、準決勝まで進んだら、是非松下さんとやりたいです」と応えた水谷。新旧のエースが対決することになれば、今大会最大の盛り上がりを見せるだろう。

 この日、松下とともに会場を沸かせたのは大ベテランの斎藤清(埼工大職員)だ。1982年に全日本選手権で初優勝を飾り、シングルス歴代最多優勝8回を数える46歳が、3回戦まで勝ち抜き、全日本選手権通算100勝という大記録を樹立した。伸び盛りの若手選手とともにベテラン勢の活躍も目立つ1日となった。

 土曜日はシングルス男子の準々決勝、女子の6回戦まで。ダブルスは男女の決勝が予定されている。日曜日には男子シングルス準決勝と決勝、女子は準々決勝から決勝が行われる。