1日、NPBでは12球団が一斉にキャンプをスタートさせた。4月3日の開幕に向けてベテラン、中堅、若手が開幕スタメン、そして日本一の座を目指し、連日厳しいトレーニングに励んでいる。今季は93人の新人選手が仲間入り。その中にはBCリーグ出身の選手が3人いる。阪神・野原祐也(富山サンダーバーズ)、福岡ソフトバンク・柳川洋平(福井ミラクルエレファンツ)、千葉ロッテ・鈴江彬(信濃グランセローズ)だ。彼らは今、念願のNPB選手としての初キャンプをどのように過ごしているのか。
(写真:トレーニングに励むロッテ・鈴江)
 野原、プレーで目立つ存在に

 ドラフト後の会見で緊張のあまり、尊敬してやまない金本知憲(阪神)に対して引退勧告ともとられかねない発言で話題を呼んだ野原は、新人合同自主トレーニングの最中、本人と初対面を果たした。
「近くで見ると、想像以上に体が大きくて驚きました。オーラとはこういうことをいうのだなと思いましたね」
 と“鉄人アニキ”の存在感の大きさを改めて感じたようだ。

 さらにその4日後には、今度は球界を代表する藤川球児(阪神)と対面。ブルペンでの投球練習の際には打席に立たせてもらった。
「低めにギュンと伸びるストレートがきた。ボールだと思って見逃したのですが、ブルペンキャッチャーの人に確認したら『ストライクだ』と。藤川さんにとっては軽めのピッチングでしたから、スピードはおそらく140ちょっとだったと思います。でも、あんなすごい球、これまで見たことないですね」
 金本、藤川という超一流を肌で感じた野原。この貴重な体験はきっと今後に生きるはずだ。

 さて、野原は富山では“練習の虫”と言われ、オフもG.G.佐藤(埼玉西武)との合同自主トレで厳しいトレーニングを積んできた。それでも球団の新人合同自主トレは「きつかった」という。だが、それで意気消沈したわけではない。体の張りを訴える新人選手が多い中、野原はいたって元気だという。
「確かに周りはみんなすごい。でも、支配下登録される自信はあります!」
 さすがはBCリーグ随一のスラッガーを誇った“富山のおかわりくん”だ。

 育成選手のなかでもひと際目立つ野原は、その名がスポーツ新聞に載ることも少なくない。「でも……」と野原は言う。
「プレーを評価されているわけではない。早く野球で目立てるようになりたい」
 野球を思いっきりやれる環境に大きな喜びを感じながら、野原は今、ひたすら白球を追い続けている。

 柳川は首脳陣に猛アピール

 新人選手でおそらく誰よりも早くブルペン入りをしたのが、柳川だ。球団の新人合同自主トレを翌日に控えた1月8日、柳川は30球を投げた。その後も、連日ブルペン入り。「自分にとっては特別なことではない。いつも通りやっているだけ」と語る柳川だが、その一方では「自分は他の選手よりも、まず名前で負けている」と本音ものぞかせた。

 というのも、昨年12月にインタビューした際に彼はこう語っている。
「年齢的な部分も考えたら、ゆっくりしている時間はない。1月の合同自主トレからアピールしていきたいと思っています」
“支配下登録”ではなく、“開幕1軍入り”を目指す柳川にとっては、1日も無駄にはできない。

 それもそのはずだ。ソフトバンクは球界随一の“投手王国”。柳川と同じB組にでさえ、新垣渚、大隣憲司、三瀬幸司など1軍での実績がある投手、近田怜王や有馬翔など甲子園経験者がズラリと顔を揃える。さすがの柳川もそのレベルの高さに驚いたという。
「(選手のレベルは)想像以上でした。これは思うようにはいかないなと」

 それでもトレーニング自体は順調だ。体も万全で不安な部分はない。だからこそ、「周りをあまり見ないようにしている」という。焦りは禁物。自分のペースを保ち、虎視眈々とレギュラーの座を狙っている。

 鈴江、ファンの多さに感激!

 少し調整が遅れているのが鈴江だ。合同自主トレの前半、インフルエンザにかかり、寮での静養を余儀なくされた。トレーニングを再開すると、今度は右ヒザに違和感を覚えた。3日間、全く体を動かさなかったことが原因だという。
「今はだいぶよくなりました。昨年の今頃はほとんど動くことができなかった。それを考えれば、今年はこれだけ動けているので、いいスタートが切れたと思っています。とにかくヒザの具合が悪化しないように注意してやっています」
 と鈴江。多少、他の選手よりも量は少なめだが、同じメニューをこなしながら調整を続けている。

 そんな鈴江が何より感じたのは指導の丁寧さだ。
「トレーニングの一つ一つに、どのような意味があるかをこと細かに教えてくれるんです。やり方が違うと、正しいやり方だけじゃなくて、どこをどう鍛えているのかということをその場で説明してくれる。すごく為になります」

 練習後には熱心なファンからサイン攻め。瞬く間に彼の前には長い行列ができた。
「ファームのキャンプ、しかも初日からこんなに大勢のファンが来てくれたことに、正直驚いています。やっぱり、違いますね」
 NPB選手になったことを実感する鈴江。その表情や口調は穏やかだが、胸の内では支配下登録への闘志をみなぎらせているに違いない。

(斎藤寿子)