開幕まであと5日に迫ったWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に臨む日本代表は28日、東京ラウンドの会場である東京ドームで埼玉西武との強化試合を行った。日本は先発の岩隈久志が2ランを打たれ、2番手のダルビッシュ有も1点を失う内容。打線も9安打で2得点に終わり、2−7で敗れた。

 小松、4失点と乱調
埼玉西武      7 = 002010040
日本代表      2 = 000100001
(西)ワズディン−岸−グラマン−長田−谷中−小野寺
(日)岩隈−ダルビッシュ−内海−田中−小松−馬原−山口
本塁打  (西)大崎2ラン
 先発の岩隈久志は1回、2回とライオンズ打線をパーフェクトに抑える立ち上がり。ところが3回、1死から銀仁朗にヒットを打たれると、ボールが先行し始める。「ランナーをちょっと気にしすぎましたね」。2死後、1番の大崎雄太朗には1−3とカウントが苦しくなり、内を突いたストレートが甘くなった。ライトスタンド最前列に飛び込む2ラン。日本はオーストラリア戦に続き、3試合連続で先制を許す。

 4回からマウンドに上がったダルビッシュには球威があり、4回は三者凡退に仕留める。ところが5回、先頭の石井義人にセンター前に運ばれると、1死後、銀仁朗に投じた直球が高めへ。ライト線にうまく流されて2、3塁とピンチを広げてしまう。9番・原拓也の場面で渡辺久信監督がとった作戦はスクイズ。無警戒だった日本の守備陣は簡単に1点を失った。「点はとられましたけど、完全な状態になるまで、あとちょっとのところまできている」。ダルビッシュはそうコメントを残したが、課題を残したまま本番に挑むことになった。

 さらに不安を残したのは、中継ぎ役の小松聖の乱調だ。WBC仕様に固くなった東京ドームのマウンドに慣れないのか、上体がブレ、制球が定まらない。1死からストレートの四球を与えると、続く1番・大崎には追い込みながらデッドボール。以降はボールが甘くなり、栗原巧、清水崇行、中村剛也、後藤武敏とライオンズの主力打者に連打を浴びた。1回も持たず、予想外の4失点で試合の行方は決まった。

 マウンドについては4番手で相手打線を3人で片付けた田中将大のように、「気にならなかった」という投手もいた一方で、2安打を打たれた山口鉄也にはすっぽ抜けの投球も多く、苦労していた。マウンドへの適応は本番に向けたひとつのポイントになりそうだ。

 打線は初回、先頭の青木宣親がセンター前の打球で2塁を陥れるなど、スキのない攻めをみせる。ところがこのチャンスで中島裕之、イチローがランナーを進められない。好調の4番・稲葉篤紀のレフト前ヒットで2塁から青木がホームを突いたものの、タッチアウトになった。

「自分なりの4番をつくろうと思っています」
 稲葉はこの日も3安打、1四球と全打席で出塁した。それだけに前を打つイチローの状態の悪さが目につく。4打席でしっかりボールをとらえられたのは、3回のセンターフライくらい。他はミスショットが続いた。「昨日より今日、1日1日状態は上がっている」。原監督は心配していないようだったが、残り4日でどこまで本調子に戻るかが、日本の攻撃力を左右しそうだ。日本代表は3月1日、同地で巨人とWBC開幕前の最後の実戦を行う。

 また、このゲームに先立って行われた中国代表と巨人の強化試合は、巨人が9−2で勝利した。中国は巨人の若手投手陣に対し、張振旺の2ランによる2点をあげただけにとどまり、守備も4エラーとほころびが出た。中国は1日は埼玉西武と試合を実施する。

<原監督「日本力で戦う」 〜日本代表会見〜>

 試合前には日本代表が、東京ドーム内で会見を行った。会見は原辰徳監督と、選手を代表してイチロー、ダルビッシュ有の2名が出席し、本番に向けて意気込みを語った。原監督は「日本力を掲げて戦っていきたい」と日本の野球を世界にアピールすることを誓った。

 前回大会に続きリーダー役として期待されているイチローは「ドキドキしている」と心境を吐露。「このドキドキがドッキンドッキンくらいになる」と独特の言い回しで、決戦に向けた緊張感を表現した。前回の大会前は「向こう30年は日本に手を出せないな、という感じで勝ちたい」と発言して、韓国の反発を買った。それを意識したのかどうか「東京ラウンドに出場する4チームがいい関係で、いいライバルであることを望んでいる」と無難なコメントを残した。

(石田洋之)