開幕まであと4日に迫ったWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に臨む日本代表は1日、東京ドームで巨人との強化試合を行った。日本はイチローを1番に置く新オーダーで試合に臨んだが、タイムリーによる得点はわずかに1点のみ。最後は相手のバッテリーミスで延長10回サヨナラ勝ちをおさめたものの、消化不良のまま、本番前のラストゲームを終えた。

 松坂、3回32球で無失点
巨人         1 = 100000000 0
日本代表      2 = 000010000 1× (延長10回)
(巨)高橋尚−バーンサイド−木佐貫−M・中村−歌藤−木村正−オビスポ
(日)杉内−松坂−渡辺−岩田−涌井−藤川−山口
本塁打  (巨)アルフォンゾソロ
(写真:足がつるアクシデントも好投した松坂)
 本番前のラストゲーム、原辰徳監督は大きなテストを行った。「チームとして2wayの作戦が取れることを一度、示しておきたかった」。これまで基本的に変えなかった打順を変更。調子の上がらないイチローをあえて1番に置き、2番に片岡易之、3番に青木宣親で上位打線を組んだ。さらに4番は好調の稲葉篤紀ではなく村田修一を起用。稲葉は5番にまわった。

 しかし、新しい打順は機能しない。巨人先発・高橋尚成に2イニング連続で3者凡退に押さえ込まれた日本は3回、先頭の小笠原道大が初ヒットを放つ。しかし、続く城島健司がセカンドゴロゲッツー。9番スタメンの川崎宗則がセーフティバントを決め、相手のエラーを誘って2塁まで進んだが、イチローは合わせただけのレフトフライに倒れた。

 得点が入ったのは5回。この日6番に入った内川聖一がヒットの後、すかさず盗塁を決め、得点圏に進む。小笠原はショートゴロに打ち取られたものの、8番・城島が三遊間を破るタイムリー。1点を先行された日本は同点に追いついた。

 なおも川崎がセンターへのクリーンヒットで続き、2死1、2塁。大歓声の中、イチローが打席に入る。だが、メジャーリーグ屈指の安打製造機は開店休業状態。ショートへの平凡なゴロでスタンドは大きなため息につつまれた。結局、イチローはこの日も5打席ノーヒット。延長10回の最終打席ではいい当たりがセンターに好捕される不運も重なった。6試合で打率はなんと.130。結果の出ないまま本番を迎えることになった。

 篠塚和典打撃コーチは「オープン戦だって、結果がいい人、悪い人もいるけど、開幕までの間に状態はあげられる。そんな問題じゃないよ」と悲観はしていない。「(本番までの)3日間が一番大事になる」(篠塚コーチ)。もともとスロースターターでエンジンのかかりは遅い。急ピッチで、どこまで状態を高められるか注目だ。

 また新しく3番に入った青木、5番の稲葉はともに4打数無安打と好調のバットが一休み。青木は「3番は全然問題ない。ランナーを置いた時の内容が良くなかった」と反省していた。

 最後は相手投手陣の乱調で勝ちを拾った形だが、接戦を経験できたことは大きかった。9回、10回とも1死1塁のケースで原監督はバントのサイン。実戦の中で1点をもぎとりにいく練習ができた。守りでも城島は「競ったゲームでは投手の持っているいいボールと、捕手の(球種に対する)順番付けがマッチしなくてはいけない。接戦での投手のマウンドさばき、いいボールを見る上で非常にいいゲームだった」と収穫を口にした。

 またサブメンバーの川崎がスタメンで2安打。試合途中からはサードも守った。「準備ができていない試合はひとつもない」。星野ジャパンではケガで本領を発揮できなかった男が、サムライジャパンの貴重な戦力となることを改めて証明した。
(写真:限られた出番ながら打率.333と結果を残している川崎)

 次は3月5日、開幕戦。相手は中国だ。中国代表のレベルを見る限り、日本が負ける要素はひとつもない。ただ、何が起こるかわからないが野球だ。順調すぎた宮崎、大阪、そして課題もみえた東京――サムライジャパンはいよいよ戦いの海へと船を進める。

 なお、このゲームに先立って行われた中国代表と埼玉西武の強化試合は、西武が11−1で大勝した。中国は7安打を放ったが1得点にとどまり、投手陣も朱大衛(西武)、陳ウェイ(横浜)と日本プロ野球に所属する2投手がそろって3失点の内容だった。盗塁も5つ決められた。2日と3日は韓国代表と台湾代表がそれぞれ西武、巨人と1試合ずつ強化試合を実施する。

(石田洋之)