12日、ボクシングのダブル世界タイトルマッチが行なわれ、神戸・ワールド記念ホールで8度目の防衛戦に臨んだWBC世界バンダム級王者の長谷川穂積(真正)が同級1位のブシ・マリンガ(南アフリカ)に1R2分37秒、TKO勝ちを収め、歴代3位タイとなる8度目の防衛に成功した。一方、東京・後楽園ホールでWBC世界フェザー級王者のオスカー・ラリオス(メキシコ)との再戦に臨んだ同級3位の粟生隆寛(帝拳)が3−0の判定で勝利し、初タイトルを獲得した。これで日本人の現役世界チャンピオンは6名となった。
 開始早々、いきなり長谷川の強烈なパンチがマリンガを襲った。1R、わずか1分22秒が経過したところで長谷川の右ストレートが決まり、挑戦者を勢いよくマットに沈めた。ようやく立ち上がったマリンガにチャンピオンは容赦なく連打の嵐を浴びせ、2度目のダウンを奪う。

 余力を振り絞って再び起き上がったマリンガだったが、逆襲する力はもう残っていなかった。セコンドから「ゴーサインが出た」という長谷川が、休む暇も与えないほどの激しい攻撃でたたみかけると、マリンガの左ヒザがガクッと落ち、そのままゆっくりとマット上に倒れた。2Rで勝負を決めた前回、前々回よりも短い、自身初の1RTKO勝ち。さらに3試合連続KO防衛は26年ぶりの快挙となった。

【長谷川のコメント】
「練習したことが結果に出たと思う。(KOは)狙ってなかったけど、結果的になって嬉しい。出だしは緊張していたので足が動くまで時間がかかるかなと思っていた。ジャブもかたかったので気をつけなければならないと思った。2度目のダウンのときにゴーサインが出たので一気にたたみかけた。練習してきたことをもっと試したかったが、ケガなく終わってよかった。自分の目的は防衛することではなく、強くなること。今度は狙ってKOをとれるくらい強くなりたい」

 一方、「リベンジマッチ」に臨んだ粟生。初めての世界戦となった昨年10月には一度はラリオスからダウンを奪いながらも判定負けし、プロ初黒星を喫した。その雪辱を果たそうと臨んだ今回、完璧な立ち上がりを見せた。カウンターを牽制してか、なかなか出てこないラリオスに対し、1Rから粟生は先手でしかける。冷静に相手のパンチをよけながら、リズムよく攻める粟生。王者の顔やボディは徐々に赤く染まり始める。

 前回、ラリオスのダウンを奪った4R、またも粟生のパンチが炸裂。右ストレートがきれいに入り、ラリオスの足がぐらいついた。しかし、粟生も攻め切ることができず、一気に勝負を決めることができなかった。その後も右に左に粟生は王者にキレのあるパンチを浴びせ続けた。それに対し、ラリオスは接近戦に持ち込み、一発逆転を狙う。だが、粟生のほぼ完璧なディフェンスに退けられ、王者のパンチはむなしく空を斬った。

 9Rの開始早々には粟生のパンチがボディに決まり、ラリオスは再び距離を取り始める。さらに粟生の右に左にストレートの連打が炸裂すると、ラリオスの足が止まった。しかし、ここでも粟生は決め切ることができなかった。

 粟生のスピードに翻弄されながらもラリオスも一歩も引かず、脅威の粘りを見せる。10R終了間際には、ラリオスのカウンターパンチがきれいに入り、粟生の足が初めてぐらいついた。それでも粟生の優勢は変わらず、判定に持ち込まれた結果、最大12ポイント差がつく大差で粟生が勝利。悲願の初タイトルに粟生は号泣し、喜びを爆発させた。

【粟生のコメント】
「あそこまでいったら倒したかった。お客さんもそれを望んでいたと思う。チャンピオンベルトは重いです。めちゃくちゃかっこいい。このベルトは一人じゃ絶対無理。自分に携わってくれた全員にありがとうございます、と言いたい」