WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2次ラウンド1組は18日、日本代表が韓国代表に1−4で敗れ、19日にキューバと準決勝進出をかけた敗者復活戦にまわることになった。日本は初回、李晋映のタイムリーなどで3点を先行され、8回は押し出しの四球で痛い追加点を奪われた。打線は9日の試合に続き、韓国先発の奉重根を攻略できなかった。

 イチロー、唯一の打点も無安打
日本代表     1 = 000010000
韓国代表     4 = 30000001×
(日)●ダルビッシュ−山口−渡辺−涌井−岩田−田中
(韓)○奉重根−尹錫ミン−金広鉉−S林昌勇
「1番大事なのは先取点」
 前日、原辰徳監督は試合のポイントをこう語っていた。その大事な先取点を日本は奪えなかった。そして敗れた。

 韓国は大事な一戦に向けて動いてきた。打撃不振のトップバッター李鍾旭、主砲の李大浩をスタメンから外した。代わって1番に入ったのは李容圭。北京五輪でチームトップの打率.481をマークした左打者は初回、レフト前ヒットで先陣を切る。さらに次打者の初球で2塁へスチール。韓国リーグで昨季28盗塁をあげた俊足の持ち主がきわどいタイミングながら2塁を奪いとった。

 この果敢なプレーが韓国の選手たちに勇気を与える。続く鄭根宇は二遊間の高く弾んだ打球で1塁へヘッドスライディング。内野安打となり、無死1、3塁とチャンスを広げた。気迫に押されたのか、日本は3番・金賢洙のセカンドゴロで、2塁封殺を狙ってベースに入ったショート片岡易之が送球をこぼすミス。試合を左右する先制点が韓国に入った。なおも韓国は2死満塁から李晋映がストレートをたたきつけて、三遊間をしぶとく突破。3−0。この3点はサムライたちに重くのしかかった。

 積極性の目立った韓国とは対照的に日本のプレーは消極的に映った。先発のダルビッシュ有は初回からボールが先行。自慢の速球で内を突くこともなく、変化球でかわしにいったボールが外れた。2回以降はカットボールなどで内を攻める投球もみせただけに、もったいない配球だった。

 攻撃でも失点直後の2回、小笠原道大が四球を選ぶものの、続く内川聖一がライトフライ、福留孝介が見逃しの三振と走者をまったく進められない。3回も四球で先頭の岩村明憲が出たが、イチローはサードゴロ、片岡はショートゴロダブルプレー。4回も1死1、2塁で内川が併殺打に倒れ、リズムがつかめない。キューバ戦では牽制アウトが2度もあったが、足を使った戦術がボディブローのように効いた。ここでエンドランなどの思い切った作戦をとっていれば、成否はともかく流れは変わったかもしれない。

 悪い流れでたまったフラストレーションは予期せぬところで悪影響を及ぼす。終盤の7回、見逃し三振でバットを放り投げてベンチに引き上げた城島の行為が審判への侮辱ととられ、退場処分に。急遽、石原慶幸がマスクをかぶる。困ったのはグラウンドよりもブルペンだ。ブルペンで球を受ける控え捕手が阿部慎之助ひとりとなったことで、リリーフの投球練習に支障が出てしまった。

 8回の失点は、そんなブルペンの準備の遅れが招いたものとも言えるだろう。この回、涌井秀章が先頭の高永民に四球を与える。送りバントで走者が2塁に進み、4番の金泰均は敬遠で歩かせた。続く李宅根のピッチャーゴロで走者は2、3塁へ。左の李晋映を迎えたところで、日本ベンチはサウスポーの岩田稔をマウンドに送る。しかし、岩田はストライクが入らない。ストレートの四球で、次は右の李机浩。通常なら右投手に交代していい場面だ。
 
 だが、ベンチは動かなかった。結局、制球のおぼつかない岩田はフルカウントから押し出しの四球を許す。致命的な1点が韓国に入り、原監督は右腕の田中将大への交代を告げた。果たして岩田は心身ともに万全の準備をしてマウンドに上がれていたのか。田中を前倒しして登板させることはできなかったのか。安定した投手力で勝ってきた日本だけに、尾を引きそうな継投だった。

 対する韓国は8回、左の小笠原に打順が廻った時点でメキシコ戦でもリリーフを務めた左腕の金広鉉を投入。金は期待に応え、小笠原を高めの直球で空振り三振に切ってとる。9回も稲葉篤紀、福留と左打者が続くのを見越して金を続投。2人に投げ終えたところでクローザーの林昌勇につないだ。良い時は何をやっても好転するものだが、1−0で逃げ切った9日の試合同様、金寅植監督の決断に迷いは感じられなかった。

 いずれにしても日本は後がなくなった。準決勝を争う相手はキューバだ。16日は松坂大輔の好投で快勝したとはいえ、簡単に連勝できる相手ではない。先発投手は岩隈久志とユニエスキ・マヤ。マヤは16日に5番手として登板し、打者5人をパーフェクトに抑えている。制球力の良さが持ち味の右腕だ。

 日本にとってのプラス材料は登板間隔の規定で、投手陣の柱であるノルヘ・ベラとリリーフの要ペドロ・ルイス・ラソが出場できないこと。救援陣の力はやや日本より劣るだけにマウンドから早く引きずり降ろしたい。そのために、1番大事なのは先取点だ。今日と同じ失敗は2度と繰り返すわけにはいかない。

【今後の日程】 ※日時は日本時間
ゲーム5 キューバ日本 19日(木)12:00
ゲーム6 韓国ゲーム5勝者 20日(金)10:00

(石田洋之)