「K-1 WORLD GP2009」が28日、横浜アリーナで行われ、ヘビー級王者決定トーナメントで前田慶次郎(チームドラゴン)が優勝し、日本人初となるK-1重量級の世界王者に輝いた。昨年のGPを制したレミー・ボンヤスキー(オランダ/チームボンヤスキー)は総合格闘家のアリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデングローリージム)を判定で破った。38歳のピーター・アーツ(オランダ/チームアーツ)は16歳年下のエロール・ジマーマン(オランダ/ゴールデングローリージム)を延長に入る激闘の末、判定で下した。
(写真:最終3R、ボンヤスキーがオーフレイムからダウンを奪う)
「若い選手が育って新しいK-1になってきた。予想外のことがたくさん起きた」
 大会を振り返って開口一番、谷川貞治イベントプロデューサーが語った言葉だ。その象徴となったのが前田慶次郎。ハリッド・“ディ・ファウスト”がインフルエンザで欠場したため、急遽、巡ってきた出番。初戦は優勝候補メルヴィン・マヌーフだった。「2日前から怖くて逃げ出しそうになった」。しかし、試合ではワンチャンスをモノにした。立ち上がりからプレッシャーをかけて攻め込む相手に対して、カウンターの右フック。これがマヌーフの顔面をとらえ、一撃でリングに沈めた。

 グーカン・サキとの決勝では、パンチで倒しにきたトルコ人に対し、キックで応戦。マヌーフを仕留めたカウンターも交え、途中からは打ち合いに転じる。3Rでは決着がつかなかったものの、明らかにサキの動きは落ちていた。延長もきわどい勝負となったが、ガードを固め、防戦が目立った相手に対し、前田は手数で勝った。判定を制したニューヒーローを谷川プロデューサーは「パンチがうまい」と評価。「優勝の価値を高めるのは本人次第。タイロン・スポーン選手か、(ルスラン・)カラエフ選手か、バダ・ハリ選手か、そういう相手に勝ってもうちょっと評価を上げてほしい」と22歳の今後に期待を寄せた。
(写真:延長R、前田の右がサキの顔面をとらえる)

 またメインイベントではレミー・ボンヤスキーがK-1ファイターとして意地をみせた。相手は総合格闘界から乗り込み、昨年大みそかのDynamite!!でバダ・ハリをKOしたアリスター・オーフレイム。試合内容は完全にオーフレイムのペースだった。立ち上がりがら膝蹴りをみせ、相手の懐に飛び込んで接近戦を挑む相手に対し、ボンヤスキーは守勢に回る厳しい戦い。必殺技のフライング・ハイをみせる場もなく、クリンチから何度もマットに倒される。

 しかし最終ラウンド、形勢は一気に逆転する。頭を下げてきたオーフレイムに対し、ボンヤスキーの打ち下ろしの右が炸裂。K-1の“侵略者”として乗り込んだ男の圧倒的優位が自らの体とともに、崩れ去った。このダウンが決定打となり、軍配はGPを3度制したK-1王者へ。予想外の展開で試合をモノにした。

 試合後、ボンヤスキーは2日前に左ひざを痛めたことを明かし、「このままだとドローになるのは分かっていた。ホッとした」と安堵の表情。「(オーフレイムの)戦績をみれば、半分くらい負けていてトップファイターではない。バダ・ハリに勝ったことでトップファイターに仲間入りしたと思っているでは? 私はこれまで70試合以上も戦って実績を残している」と格の違いを強調していた。
(写真:「K-1の名を背負ってプレッシャーがあった」と話すボンヤスキー)

 一方、敗れたオーフレイムは「(ボンヤスキーは)実際に戦ってみて強かった。彼が真のチャンピオンであることを証明した」と素直に勝者を讃えた。ただ、「あのダウン以外では自分のほうが良かった。内容的にはいいものだった」とも語り、一瞬のスキを突かれた点に悔やんでも悔やみきれない様子だった。

 各試合の結果は以下の通り。

<オープニングマッチ> 
〇坂間豊(バンゲリングベイ)
1R29秒 KO
×立川隆史(アンリミテッドジム)

<オープニングマッチ> 
〇佐藤匠(極真会館)
3R1分19秒 TKO(タオル投入)
×堀啓(HIDE’S KICK)

<オープニングマッチ> 
〇野田貢(シルバーアックス)
3R判定 3−0
×ユ・ヤンレ(韓国/チームフォーマー)

<第1試合> ※K-1ヘビー級王者トーナメント1回戦
〇前田慶次郎(チームドラゴン)
1R2分2秒 KO
×メルヴィン・マヌーフ(オランダ/マイクスジム)

<第2試合> ※K-1ヘビー級王者トーナメント1回戦
〇グーガン・サキ(トルコ/チームレベル)
3R判定 ドロー 延長1R1分58秒 KO
×タイロン・スポーン(スリナム/ブラックレーベルファイトクラブF.F.C.)

<第3試合> 
〇セーム・シュルト(オランダ/正道会館)
3R判定 3−0
×ヘスディ・カラケス(エジプト/パンクレイション/チャクリキ)

<第4試合> 
〇エヴェルトン・テイシェイラ(ブラジル/極真会館)
3R判定 ドロー 延長2R判定 2−1
×ジェロム・レ・バンナ(フランス/Le Banner X tream Team)

<第5試合>
〇グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真会館)
2R48秒 TKO(タオル投入)
×澤屋敷純一(チームドラゴン)

<第6試合> 
〇ピーター・アーツ(オランダ/チームアーツ)
3R判定 ドロー 延長1R判定 3−0
×エロール・ジマーマン(キュラソー島/ゴールデングローリージム)

<第7試合> ※K-1ヘビー級王者トーナメント決勝
〇前田慶次郎
3R判定 ドロー 延長1R判定 2−0
×グーカン・サキ

<第8試合>
〇レミー・ボンヤスキー(オランダ/チームボンヤスキー)
3R判定 3−0
×アリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデングローリージム)