シアトル・マリナーズのイチローは日本時間16日、ホームのロサンゼルス・エンゼルス戦で2安打をマークして、日米通算安打を3085本とし、張本勲氏(元東映など)が持つ日本プロ野球最多安打記録に並んだ。胃潰瘍により開幕に出遅れたイチローはこの日が今季初出場。第2打席でセンター前ヒットを放つと、第5打席でライトへ満塁弾を叩き込んで、記録に花を添えた。
 WBCの決勝打といい、この日のグランドスラムといい、やはりこのバッターは何かを持っている。記録まであと2本と迫っていた今季、WBCのストレスからか胃を患い、初めて故障者リストに入った。ただでさえ4月は唯一月間打率が3割(.292)を切っており、エンジンのかかりが悪い。病み上がりの安打製造機が、復帰初戦でどんなパフォーマンスを見せるか注目を集めた一戦だった。

 いつものように「1番・ライト」でスタメン入りした第1打席、イチローは初球から打ちにいった。外角のボールをうまく流したものの、ショートライナー。ただ、当たりは良かった。迎えた第2打席、早速スコアボードにHのランプをともす。カウント1−1から高めに甘くなったカーブにバットを合わせると、打球はセンターの前へ。塁に出たイチローはすかさず盗塁も決め、初戦から持ち味を披露する。

 そして、大記録に並ぶ時がきた。第3、第4打席と凡退した後の第5打席、7回1死満塁の場面だった。フルカウントからの6球目、低めのカーブをうまくすくいあげる。打球は高々と舞い上がり、スタンドイン。イチローは打球を確認しながら、ゆっくりとダイヤモンドを一周。ベンチに戻るとホッとしたような表情をみせた。

 5連勝中のマリナーズは、リードオフマンの復帰で打線が爆発。11−3と大勝して6連勝をおさめた。「僕が戻ってきて負けたらシャレにならんなと思っていた。勝てたことが一番良かった」。イチローも試合後、笑顔をみせた。

 イチローにとって、今季はさまざまな記録がかかる1年となる。まずはメジャーリーグでの2000本安打。この日の2安打で残りは193本となった。今季中にクリアすれば、史上最速ペースでの達成となる。そして、前人未到の9年連続シーズン200安打。こちらは残り198本だ。開幕から8試合の欠場は痛いが、WBC同様、逆境をもハッピーエンドを際立たせる演出と思える部分が、この役者にはある。

「壁を乗り越えた気がする」
 WBCの決勝の一打をそう振り返って幕を開けたイチローの今シーズン。本当に目が離せない。

○イチロー、喜びの声
 張本さんにシアトルまで来ていただいて、記録に並べたことは気持ちよかった。僕にとっては今日が開幕。かなり緊張した状態だった。
 とにかくH(=ヒットの表示)がつけばいいと思っていた。それがないと次は始まらない。ヒットが出ないと苦しくなるので早めに出たことは良かった。(満塁弾は)バットに当てるのに必死だった。
(9年連続シーズン200安打について)現時点で考えるのはナンセンス。ただ、そういうものを生み出せるシーズンにしたい。

<松坂、故障者リスト入り>

 ボストン・レッドソックスの松坂大輔が現地時間15日付で、15日間の故障者リスト(DL)に入ることが決まった。右肩に軽い張りがあるため。松坂は今季初登板となった10日のレイズ戦で3本塁打を浴び、6回途中4失点で降板。15日のオークランド・アスレチックス戦では、メジャー移籍後最短となる1回5失点でKOされていた。

 3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシックでは3戦3勝でMVPに輝いた松坂だが、現地ではシーズンへの悪影響を心配する声が出ていた。松坂は特に異常を訴えていないものの、2試合連続で結果を残せなかったことは事実。周囲の不安が現実となった形だ。松坂のDL入りは昨年5月以来2度目。レッドソックスは同日時点で3勝6敗と開幕ダッシュに失敗しているだけに早期復帰が待たれる。